苦手だったけど成熟すればできるようになる?!特定の勉強だけが苦手など限局性学習症(SLD)の特性とは?【心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話】
できないのは努力不足ではなく特性
・知的能力に発達の大きな遅れはない
・特定の分野(読む、書く、計算)だけがうまくできない
・文字の読み間違いや書き間違いが多い
・数値や計算を習得することができない
・数学的な推論ができない
知的能力には発達の遅れなどの問題がないにもかかわらず、「読む」「書く」「計算する」といった特定分野に限って著しい困難を抱えてしまうのが「限局性学習症(SLD)」です。この症状には、読むことに問題が生じる「識字障害」、書くことに問題が生じる「書字表出障害」、計算することに問題が生じる「算数障害」の3種類が存在します。
また、この医学的定義とは別に教育的定義もあり、この3種類に加えて「聞くことが困難」「話すことが困難」「推論することが困難」が加わります。
ひとつだけ問題が生じる場合もあれば、複数の問題が生じる場合もあり、その程度にも個人差があります。また、幼児期は学習の機会が限られるため問題を抱えていることが発覚せず、就学後に学習の機会が増えるにつれてこうした特性が明らかになってきます。
そのため、他の教科は普通にできるのに、計算だけができないといった状況になり、本人の努力不足と捉えられてしまうケースが少なくありません。しかし、前述したように発達障害と本人の努力はまったく関係ありませんので、読む、書く、計算のいずれかが極端に苦手な場合は、この限局性学習症かもしれません。
<ミニコラム> 子どものころは苦手だった科目でも成熟すればできるようになる!
脳神経が成熟する時期が人とは違い、ずれている方がいるようですが、成熟すれば、できるようになることも珍しくありません。ある方は、小学生までは読書が苦手だったそうですが、中学生になったら読書が好きになり、40代を過ぎた今は、同じ世代よりも本を読むとのことです。また、別のある方は、中学生を過ぎたころから数学ができるようになり、税理士になった人もいます。
【出典】『心と行動がよくわかる 図解 発達障害の話』
監修:湯汲英史(ゆくみえいし) 日本文芸社刊
監修者プロフィール
公認心理師・精神保健福祉士・言語聴覚士。早稲田大学第一文学部心理学専攻卒。現在、公益社団法人発達協会常務理事、早稲田大学非常勤講師、練馬区保育園巡回指導員などを務める。 著書に『0歳~6歳 子どもの発達とレジリエンス保育の本―子どもの「立ち直る力」を育てる』(学研プラス)、『子どもが伸びる関わりことば26―発達が気になる子へのことばかけ』(鈴木出版)、『ことばの力を伸ばす考え方・教え方 ―話す前から一・二語文まで― 』(明石書店)など多数。