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「衝動に勝てない」「ルールを守れない」発達障害息子のスマホ管理。主治医にも相談して決めたわが家のルール

LITALICO発達ナビ

「衝動に勝てない」「ルールを守れない」発達障害の子のスマホ管理。主治医にも相談して決めたわが家のルール

監修:森 しほ

ゆうメンタル・スキンクリニック理事

ついにスマホ購入!やっと手に入れることを決めたきっかけ

タクがスマホを持ったのは中学3年生の卒業間近のお正月でした。周りの子がどんどんスマホを持ち始める中で、うちはかなり遅めのスタート。

理由はシンプルで「依存が怖かったから」です。発達障害のあるタクはのめりこみやすい特性があり、今までのゲームとの付き合い方を思うと「スマホに依存して生活や勉強に悪影響がありそう」だと夫婦で意見が一致していて、与えるのを先延ばししていました。

でも、中3の冬にはついにクラスでスマホを持っていないのがタクだけになってしまって……。このままずっと親が管理し続けるわけにもいかない。いずれ自分でスマホを手に入れて自由に使う日が来るのなら、今のうちに「スマホとの付き合い方」を教えるべきなんじゃないか―そんな気持ちが芽生えてきました。

「持たせない」ことに限界を感じ「どうしたら共存できるか」を意識しました。

好奇心が爆発‼︎執念のセキュリティ突破事件

スマホを持たせると、タクは大喜び!友だちと連絡先を交換して、怒涛のメッセージ交換が始まりました。利用時間は21時までと決めていたのですが「友だちと通話の途中だった!最後におやすみって言いたいからあと5分伸ばして〜!」と毎日のように催促するようになりました。楽しいのは分かるけど、時計を見ながら会話を調整してスマホを使いこなすのはやっぱり子どもには難しいんだなと思いました。

そして細かいアプリの利用時間などを制限する「見守りアプリ」を使おうとしたのですが、これが想像以上にややこしくて……。夫は設定画面とにらめっこしながら何度も失敗し、私は「もう面倒くさいなぁ」と思ってしまうほど。一応、親として最低限のルールは決めていたし、もう高校生になるんだから自律していってほしいという気持ちもあって、細かい制限などはわりと緩めにしていました。

ところが後日スマホを確認すると、タクはセキュリティを自分で解除して、友だちと深夜まで連絡を取り合っていたりゲームアプリをいくつもダウンロードしていたんです。

「どうせ、あとからバレるのに、なんで我慢できないの!?」目の前にある興味や好奇心を前にすると、リスクやルールがすっぽ抜けてしまう、その場の「やってみたい!」という衝動に抗うことは、本人にとっては本当に難しい……これが特性なのだと分かっていましたが、親として頭が痛いことでした。

幸い、夫と私で別々のセキュリティアプリを入れていたため、早めに対処できて大きなトラブルにはならずに済みました。ただそのとき「やっぱり本人任せでは危ないな」と痛感したのは確かです。

“自制心に期待しすぎない”という学び

そんなことがあってから、改めて家庭でのスマホルールを見直すことにしました。そして、小児神経科の主治医の先生にも相談したところ、こんなアドバイスをいただきました。

「特性のある子の場合、自制心に期待するよりも、環境を整えてあげることのほうがずっと大事。親の管理は必須ですよ」この言葉には、本当にハッとさせられました。

正直、それまでは「もうすぐ高校生なんだし、ある程度は自分で責任を持ってほしい」「親がいつまでも管理するのって過保護すぎ?」と迷っていた部分もあったんです。でもタクにとってスマホという刺激の強いツールは、自分だけの力で適切に使いこなすには、まだハードルが高い。大人でも、寝る前にちょっと見るつもりだったSNSを気づけば1時間見てた……なんてこと、ありますよね。それがタクの場合は、さらに「衝動の強さ」や「時間感覚のズレ」も重なってくるので、なおさら難しい。

先生の言葉に背中を押されるような気持ちになって、「親が先回りして失敗を減らすことは、甘やかしじゃない」と安心できました。それからはルールも見直して、
・21時以降はリビングで充電して、使えないようにする
・不必要なアプリはそもそも利用制限をかける
・ルールを破ったらスマホ没収、場合によって解約
など、タクも交えて家庭内のルールを決め、大きな紙に書いてリビングに貼り出しました。

親子で試行錯誤。ルールは「安全に使うための手すり」

スマホは、一歩間違えると生活に大きな影響を与えるツールですが、上手に使えば社会とのつながりや自信につながる「心強い相棒」でもあります。実際スマホを持ってから、タクは友だちとの関係を築くのがスムーズになりました。今では待ち合わせも部活の連絡事項もスマホが重大な役割を担ってます。スマホで人と繋がれることが、本人の自己肯定感にも少しずつ良い影響を与えているように感じます。

もちろん、今もトラブルがゼロになったわけではありません。でも、親が一緒に悩んで考えて環境を整えていけば、子どもは少しずつ学んでいけるんだなと思えるようになりました。

特性のある子にとって「ルール=制限」ではなく「安全に使うための手すり」みたいなもの。その感覚を、親子で共有しながら進めていけたらと思っています。わが家にとってスマホはまだまだ「試行錯誤の真っ最中」。でも、だからこそこれからも親子で話し合いながら、少しずつアップデートしていきたいと思います。

執筆/もっつん

(監修:森先生より)
もっつんさん、お子さんとのスマホをめぐる試行錯誤の体験談をありがとうございます。
実際、スマホとの付き合い方に関しては、お子さんからお年寄りまで悩まれる方が非常に多い問題です。スマホは生活から切っても切れない便利なツールであると同時に、気を付けて使わないと「スマホ依存」となってしまうこともあるため、お子さんの利用ルールに迷う保護者の方が少なくありません。
実際、勉強に役に立つようなアプリ、興味関心をのばすようなアプリをスマホに取り入れているお子さんも大勢いらっしゃいます。たとえば趣味の将棋のアプリを使って隙間時間を有効活用したり、CADアプリを入れて設計の学習を深めたり、といった使い方もできますね。
スマホを通じて友だちとのつながりを築いたり、学びを深めるために使うこともあるため、「禁止すればいい」「制限すればいい」とは言えないないのが難しいところです。もっつんさんの、「ルールは制限ではなく、安全に使うための手すり」という考え方は大変素晴らしいですね。親子で一緒にルールをつくり、貼り出して共有すると、お子さんも安心できますし、親子の信頼関係が深まるのではないでしょうか。

さて、発達の偏りのあるお子さんの場合、社会的ルールの理解や優先順位の調整が苦手なことがあります。また、特定の物事への強いこだわりやのめり込みが見られることがあるため、スマホに強い興味をもってしまうこともあり得ます。そのため、友だちとのメッセージ交換やスマホゲームなどに夢中になって、時間管理が難しくなってしまうなど、日常生活に支障をきたすことが少なくありません。
また衝動性から、その場の欲求や好奇心に抗えず、ルールを破ってしまうこともあります。もっつんさんが書いてくださったように、「目の前の興味にリスクがすっぽ抜ける」のは衝動性からくる特徴ですね。ASD(自閉スペクトラム症)とADHD(注意欠如多動症)が併存する場合、ASDの「ルールや予測可能性を好む」傾向と、ADHDの「衝動性や注意力の散漫さ」が混在し、行動のコントロールがより難しくなることがあります。セキュリティを解除して深夜までスマホを使ったエピソードは、ADHD(注意欠如多動症)の衝動性とASD(自閉スペクトラム症)の強い興味が組み合わさった結果かもしれませんね。

スマホはお子さんにとって、とっても刺激の強いツールです。ただし、適切な環境設定とルールで、ポジティブな道具にもなり得ます。もっつんさんが実践している「親子でのルールづくり」や「環境を整える」アプローチが有効です。勉強中や夜はリビングで充電すると決める、といったルールを定め、ルールを破った場合、罰よりも「次はどうすればいいか」を一緒に考えるアプローチが有効です。
また、ツールや設定をうまく使うことも大切ですね。タイマーやリマインダーなど、時間管理を助けるツールを使いましょう。たとえば「ゲームは◯分まで」と決めておいてタイマーをセットするなどです。スマホの通知音や画面の明るさが過剰な刺激になっていないか確認する。必要なら、通知オフやブルーライトカット設定を活用する。視覚的なルール設定が効果的な場合も多く、もっつんさんが実践しているように「ルールを紙に書いて貼る」といった視覚的なリマインダーを使うといいでしょう。
「うちの子はスマホ依存かも?」というお悩みをお持ちの保護者の方は多いものです。スマホへの依存を減らすためには、単に制限したり禁止するよりも、楽しい「代替行動」を用意してみましょう。いわゆる「デジタルデトックス」ですね。家族で会話を楽しむ時間をつくったり、カードゲームやボードゲームをしたり、工作などタクさんが好きな趣味を楽しむ時間にするといいのではないでしょうか。親子でスマホの使い方を振り返る時間を設けるのも手です。「今週のルールは守れた?」「何か困ったことあった?」と話し合い、必要ならルールを調整していきましょう。
これからも、もっつんさんがお子さんの成長のためのサポートをしていけるよう応援しております。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に
公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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