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【今週は世界緑内障週間】広がり始める眼科の「運転外来」とは!?

TBSラジオ

今週は世界緑内障週間なのですが、緑内障にも関連する眼科の「運転外来」って聞いたことありますか?実は、今、眼科の専門病院や大学病院で広がり始めている新しいものなのです。

自分の見え方を自覚する「運転外来」

「運転外来」とは、どんなものなのか。日本初の運転外来を作った、西葛西・井上眼科病院の副院長、國松志保先生にお話を伺いました。

西葛西・井上眼科病院の副院長 國松志保先生

「視野障害のある方を対象としている外来で、視野障害というのは、見えてる真ん中ではなくて風景が見えなくなっていく病気なんですけれども、多くの方は視力は良かったりとかしますので、とても自覚症状が無いんですね。

ところが視野が狭いせいで左右からの飛び出しに気が付かずに事故が起きたり、信号を見落としたりということが起こりうるので、それを実際のドライビングシミュレーターという空間を使って、本当に危ないかどうか体験していただきたいなあと。

そして、そのリプレイを見ることが出来ますので、リプレイを通じて自分で見えないところがあるということ、ご自身の見え方を知っていただきたいということで、この運転外来を始めました。」

自分の視野を自覚してもらうために始めたのが「運転外来」。

緑内障や網膜色素変性など視野障害を起こす病気というのは、ほんどのものがゆっくり進行するので、視野が狭くなったことにも慣れてしまい気付きにくいし、片目が悪くなっても良い方の目で見てしまうので、こちらもなかなか気が付かず自覚しにくい。

國松先生たちが新潟大学と行った調査では、運転外来を受診した患者さんのうち、64%が運転時に自覚症状はない答え、また、緑内障の後期の患者さんに限っても、58%が自覚症状がないと答えた、いう結果が出ており、自覚するためのツールは必要、ということでした。

(緑内障初期の見え方のイメージ)

(緑内障中期。視野が狭くなって、青い看板が、背景と同化してしまっています。)

(緑内障後期。かなり視野が狭くなっています。この後期の患者さんの58%が自覚症状がないのは驚きです。)

現実を突きつけられました

外来では、視力や視野、認知機能の検査に加え、ドライビングシミュレーターで街中を運転して、対向車やバイク、通行人や信号が見えているか、見えない場所はどこか、運転時の視線の動きなどで診断します。

(緑内障の患者さんの視野で、私もドライビングシミュレーターを体験しました。)

そして、実際の患者さんの診断を見せて頂きました。

先生:ここ見てた時って信号見えますか?見えづらいですかね?

患者さん:今、この赤い四角を見てる時点だと、信号の色は見づらいですね。30(速度標識)の方は見えるんですけど、ちょっと。

先生:やっぱりちょと真ん中のところ、水平線上はだいたい見えてるんだけども、そこよりちょっと上が見えないから、このあたりから見えづらくなりますね。」

61歳の男性でしたが、検査を受けた後にお話を伺いました。

「かかりつけのお医者さんに運転はやめた方がいいよってアドバイス受けまして、セカンドオピニオンじゃないけど、行ってみようというので、今ここにいるって感じです。そうですね、現実を突きつけられた方が、止めるなら止める、続けるなら続けるって、その判断材料にしようっていう考えでした。

(やってみてどう?)これは危ないなと。う~ん、(自分が思うのと)違うとこもあったし、まあ、そうだろうなっていうのと両方ですね。気持ちは良いもんじゃないですね、ハッキリ言って。でも現実は現実です。運転やる、やめる、今日の結果で話し合うってカミさんと話してたんで、帰って話し合います。」

元救急車の運転手さん。夜や西日のときにちょっと見にくいかな、と思っていたそうです。運転外来を受診して、先生に口頭で視野が狭くなってますよ、と言われるのと比べると、現実をしっかり感じられた、と話していました。

受診後の先生のアドバイスは、運転はやめた方がいいですよ、とか、近所だけに、とか、どの部分にどう注意して運転すれば安全か具体的な注意を促すなど、症状によって様々です。

自覚が安全運転につながっています

運転外来を受診した方は、自分の視野が狭くなっていること、見えないところがあることが分かって、その後はどうするのか。國松先生たちは、追跡調査をしています。その結果を伺いました。

西葛西・井上眼科病院の副院長 國松志保先生

「運転を止められた方というのは、100人中27人でした。

あと残りの73人が運転を継続されていたんですけど、この73人の方って、運転外来に来るより前に24%の方が事故を起こしてたんですね。その方たちが73人中2名しか事故を起こしていなくて。

だから、運転外来より前は24%だったのが、運転外来後の5年間で2・7%ということで、しかも、もうホントに軽微な事故ですので、まあこれは、ちょっと最初はなんか信じられなくてホントかな?って思ってたんですけど、結構、数が積み重なってくると、やはり事故が起きてないので、運転外来の効果でみんな注意するようになったので事故を起こさずに運転を続けられてるんだなって思いました。

あとは、(運転を)止められた方も、その後さらに見づらくなってしまったりして、事故起こさずに、あの時止めて良かったですって言っていただくこともありますので、やっぱり納得して止めるっていうのも大事かな、っていう風に考えてます。」

受診の前後で、ずいぶん事故の率が変わったんです。しっかり自覚できたから、十分に注意して運転が続けられているのではないか、ということでした。

驚いたのですが、なかなか眼科にかからない人がとても多く、視力以外の検査はやったことがない、という人がほとんど、というのが現実なのだそう。

國松先生は、特に眼底検査を受けてほしい。緑内障だけでなく、色々な目の病気が分かるので、と。早期発見で治療を始めれば、長く運転も続けられる。

運転外来は、来月には国内4つ目が名古屋に開設されます。うちも作りたいという問い合わせも増えているということでした。

運転外来は地域の安全のために非常に重要になります。自治体も協力して、ぜひ普及させてほしいですね。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)

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