包丁マイスターに聞く【出刃包丁の研ぎ方】 初心者におすすめしたい砥石とは?
5月11日、包丁の有名ブランド「関孫六」を展開している貝印株式会社が、包丁の「研ぎ」に関するリアルイベントを開催。そのイベントに「包丁マイスター」という包丁のエキスパートがいたため、突撃取材。釣り人なら使うことの多い出刃包丁の研ぎ方について聞いてみた。
「TOGI CAR™」リアルイベント
グローバル刃物メーカーである、貝印株式会社が2024年5月11日(土)、12日(日)の2日間にわたって、包丁の「研ぎ」を伝えるリアルイベントを新宿髙島屋にて開催。本イベントは、包丁研ぎを行うことで切れ味を蘇らせ、良いものを長く使うというサステナブルアクションの啓発活動の一環だという。
このイベントでは、包丁マイスターによる研ぎ講座や包丁クイズをはじめとした、「研ぎ」に親しみを持てるコンテンツが用意されていた。釣った魚を「美味しく、美しく」捌くためには、包丁の手入れが欠かせない。その手入れの仕方を分かりやすく教えてもらおうと突撃取材を敢行した
貝印株式会社とは
貝印株式会社は、釣り人にも馴染み深い包丁のブランド「関孫六」を展開している。その他にも生活に密着した刃物を中心とするカミソリ、グルーミング、ツメキリなどの身だしなみやビューティーケア、調理・製菓、医療用など1万アイテムにもおよぶ商品を展開し、商品の企画開発から生産、販売、物流までの一連を行っているグローバル刃物メーカーである。
包丁マイスター林泰彦さん
イベント会場に到着後、「研ぎ講座」をしていた包丁マイスターの林泰彦さんに話を伺った。林さんは、同社Youtubeチャンネル「貝印の切れ味チャンネル」にもメインで出演されている「研ぎのスペシャリスト」だ。気になる人は「貝印の切れ味チャンネル」をチェックしてみよう。
和包丁の研ぎは包丁と比較すると削る体積が大きい
最初に出刃包丁を良い切れ味にするにはどのような手順で研いでいけばよいかを伺った。
切刃を念入りに研ぐ
林さん
新品の包丁なのか、使い込んだ包丁なのかで話は変わってきます。出刃包丁は片刃なので、右利きの包丁であれば、右側に「切刃」という角度のついた面があります。その切刃面を砥石にペタッと付け、その角度をズラさないように固定して研いでいきます。
林さん
よく「包丁が傷んでいる」という表現をしますが、それは切刃の先端に「小刃」という1mmあるかないかの段刃がついており、そこから先が傷んでいる状態を指すことが多いです。ファーストアプローチでは、「小刃」が無くなるまで研いでいただきたいです。この工程を「研ぎおろし」といい、この工程が大変で、状態にもよりますが、傷んでいる出刃包丁だと上級者でも1時間以上はかかる場合もあります。削る体積が多いこの段階では、「荒砥石」を使っていただいた方が効率良く研げます。
砥石をまんべんなく使う
林さん
砥石を使う際は、同じ部分だけで研ぐのではなく、砥石全体を使っていただきたいです。ただし、砥石の端も部分を使う場合は包丁が砥石から外れてお怪我の元になる可能性もありますので、充分にお気をつけください。同じ部分だけで研いでしまうと、砥石が歪んでしまいます。ただ砥石全体で研いでいても歪みはできてしまうため、歪みを矯正する「面直し砥石」の使用をおススメします。
砥石の番手を上げていく
林さん
「研ぎおろし」を終わらせたら、「中砥石」など使用する砥石の番手を上げていきます。その後はお好みで「仕上げ砥石」などで切刃の表面を綺麗になめらかにしていきます。
裏側を研ぐ
林さん
表側が終わったら、裏側も研ぎます。この工程を「裏押し」と言います。この時やってはいけないのが、「角度を付けること」。早く終わらせたくて角度を付けがちになるのですが、ペッタリとくっつけて研いであげることが大事です。また、この工程では1000番くらいの「中砥石」を使っていただき、研ぎ跡が付いたらOKです。必要以上に研がないようにお気をつけください。
小刃を復活させる
林さん
表裏両方研いだ状態だと、鋭すぎるので耐久性が悪かったり、きちっと先端ができていないので、切れ味がイマイチだったりします。そのため、「小刃」を復活させていきます。小刃を作るために中砥石や仕上げ砥石を使って、包丁を45°くらいの角度を付けて数回だけ研いで小刃を作ると、切れ味の良い耐久性のある丁が完成します。最後に、包丁を研いだ時に出た「バリ」を取るために古新聞でこすってあげると、衛生的にも使いやすくなります。
初心者におすすめしたい砥石
最後に出刃包丁を研ぐ際、初心者におススメしたい砥石について伺った。
林さん
先ほど、出刃包丁を研ぐ時は「荒砥石」を使う機会が多いとお話しました。その「荒砥石」と「中砥石」がセットになった「コンビ砥石」があるので、そちらをおススメしたいです。
林さん
片刃用のシャープナー」も弊社で販売しています。おススメは砥石ですが、砥石で研ぐのが面倒とおっしゃる方は、「片刃用のシャープナー」でも簡易的に研ぐことは可能です。
魚を捌く包丁はこまめに研ごう!
今回のイベントで、想像以上に魚の骨を断つ出刃包丁は痛みやすいことが分かった。こまめな「研ぎ活」をすることで、包丁を長く使うことができ、それが個々人のサスティナブルな取り組みにもつながる。面倒に思う釣り人もいるかもしれないが、時間を見つけてこまめに包丁を研いでみてはいかがだろうか。
<河野/TSURINEWS編集部>