横浜市不登校対策 上大岡に新支援拠点 専門的人材を集約へ
横浜市教育委員会が今夏、市内の不登校児童生徒支援のための新拠点を上大岡駅直結の施設に開設する方針であることが分かった。新拠点には専門的な人材を集約し、オンラインなども活用しながら支援を行う。
市教委が来年度の当初予算案に盛り込んだもの。2023年度で年間30日以上欠席している不登校児童生徒は9775人(市立小中)いた。市教委によると不登校児童生徒は増加傾向にあるという。
現在通常の授業に参加できない児童生徒のうち、登校自体はできるケースでは小学校は学校独自の取り組みとして、また中学校は市の校内ハートフル事業として、別室での対応を行っている。一方、登校が難しい場合には校外での支援として、14カ所にあるハートフルスペース、ルームで、必要に応じてカウンセラーなどの相談を受けられる体制がある。
このうちハートフルスペース、ルームの機能を今年の9月頃から上大岡駅直結のゆめおおおかオフィスタワー13階に集約。専門的人材を集め、より充実した支援を行えるようにする。
新拠点に配置されるのは教員経験者、カウンセラー、不登校児童支援コーディネーター(ソーシャルワーカー)など。対面での学習支援、進路相談などに加え、オンラインでの授業配信、ドリル学習やバーチャル空間を利用した情操教育なども行う。再登校は目的の一つだが、卒業後の自立も目標とし、個人の特性に合わせて対応する。
現在ハートフルスペース、ルームの利用者が200人程度であることから、市は年間300人の利用を想定している。
保護者の孤立も課題
不登校児童生徒を抱える保護者の孤立解消も目的の一つ。2月27日の市会予算特別委員会で都筑区選出の市議が「孤立支援が必要ではないか」と質問。下田康晴教育長がオンライン上での対応を念頭に「当事者同士が悩みを相談し合える環境が必要」との見解を示した。新施設の運用が始まれば当事者が集まれ、保護者間のコミュニティーが構築でき「悩みを相談し合える空間」が生まれることが期待される。市教委担当者は「不登校に関する講演会などを開き、情報を伝えることも案の一つ」とした。
バーチャルは研究段階
新拠点での支援について市は予算概要の中で「学びの三層空間(リアル・オンライン・バーチャル)を活用した多彩な支援」と説明している。このうちリアルは対面、オンラインは授業配信などだ。しかし、検討段階なのがバーチャル。市教委担当者はアバターなどを用い、「誰もが学びを保障される環境を作る」とするが、まだ具体的な活用方法は見えていない。子どもたちへのアンケートなどを取りながら、有効な活用についての研究を進めるという。
なお、現在運営中のハートフルスペース、ルームについては2026年度にかけて順次閉鎖され、新施設に一本化される。市北部などは上大岡が遠方になるが「『家の近くには通いたくない』との子もいるため、一概にデメリットとは言えない」とした。また、「民間との協力も模索したい」と話している。
今後、3月25日に市会で予算案が可決されると正式に決定する。