<幼稚な義姉「子ナシは嫌!」>理想の夫婦だった義姉が離婚!義母から告げられた真実【まんが】
私はアオイ。夫のダイチ、5歳の娘ユメカと一緒に暮らしています。義母が暮らす家は近所にあり、週末になるとお互いの家を行き来して一緒に過ごすこともよくあります。義母はとても優しくユメカのことも可愛がってくれるので、私としては嬉しい限り。今日は義母がわが家に遊びにくることになっていました。
インターホンが鳴ると、ユメカがパッと顔を輝かせて玄関に走っていきました。「ばぁば早くー、こっちこっち!」ユメカは義母の腕をぐいぐい引っ張ります。「うふふ、こんなに歓迎されると嬉しいわねえ」義母も笑顔です。しかしリビングのソファに座ると、義母は私たちに向かって静かに話しはじめました。
義母の口から飛び出した言葉に、私たちは驚いてしまいました。ミドリさんはダイチのお姉さん、つまり私の義姉です。結婚してからもう10年以上は経っているはずです。
ミドリさん夫婦は2人で仲睦まじく暮らしていた印象があります。それぞれがお互いに尊重しあって自立している印象を持っていて、憧れのご夫婦でもありました。しかしミドリさんは別れて実家に帰ってくるようです。「それでね、ミドリがうちで一緒に住むことになったの」
「姉ちゃんたち……何があったの?」ダイチの質問に、義母はさっと顔を曇らせました。「それがね……ミドリたち、ずっと子どもがいなかったでしょう」「うん。なんとなくだけど、夫婦で『子どもは持たない』って決めているのかと思ってた」ダイチがそう答えると、義母は少し間を置いたあとに言いました。「……実はそうじゃないのよ」「どういうこと?」
「結婚してしばらくして、子どもができにくいことがわかって。それで不妊治療をしていたみたい。でも結局それが原因で揉めて、離婚になったって言ってた」
義母は言葉を濁しましたが、きっとミドリさんにユメカを会わせたくないという意味なのでしょう。顔を合わせることでお互いに傷つくことのないよう配慮してくれていることが伝わりました。
突然聞かされたミドリさんの離婚話に、私もダイチも驚きを隠せません。しかも原因が「不妊治療がうまくいかなかったから」だったとは……。そもそもミドリさん夫婦が子どもを望んでいたということすら、私たちは知らなかったのです。義母からはしばらく家を訪れないでほしいと頼まれましたが、そんな深い事情があるのなら協力したいと思いました。今は精神的に不安定だというミドリさんが、心身ともに元気になってくれることを祈ります。
【義姉の気持ち】望みどおりの人生だったのに……不妊?
私はミドリ。夫のトモヒロと10年前に結婚しました。私たち夫婦は当たり前のように赤ちゃんを望んでいましたが、何年経っても授かることができませんでした。私は初めて「どうしても自分が手に入れられないもの」に出会ってしまったのです。トモヒロは私のことを大切にしてくれ、仕事も順風満帆で、人から見れば申し分ない結婚生活を送っていると思います。けれど私はどうしても納得できません。私はこれまでの人生、望むものは何でも手に入れてきたからです。
私は自分で言うのも恥ずかしいですが、子どもの頃から勉強もスポーツもそつなくこなすタイプでした。憧れの会社の先輩だったトモヒロとお付き合いをすることになったときには、「私って本当に恵まれてる!」「私、なんでも持ってる!」と神様に感謝したほどです。やがて私たちは理想的な結婚式を挙げ、夫婦になりました。
最初のうちは「自然に任せよう」なんて悠長なことを言っていた私たち。しかしまったく兆しが見えないとなると、次第に焦りはじめてきます。結婚から4年ほど経った頃、私は決意を固めました。
あまり気がすすまない様子のトモヒロを説き伏せて、私たちは一緒に病院に行きました。おそらく私はこのとき、心のどこかで「自分に非があるわけがない」と思っていたのです。しかし蓋を開けてみると、どうやら原因は私にあったようです。「なんで私に原因があるのよ!」その日私は帰宅してから、声をあげて泣きました。
幸い経済的な余裕はあったため、私はすぐに不妊治療を開始しました。しかし何年頑張ってみても子どもを授かることはできませんでした。トモヒロは「2人きりの人生もいいじゃない」と言ってくれますが、私はどうしても納得できません。
思うように出ない結果に気持ちは焦るばかり。ついトゲのある言い方をして、トモヒロとはちょっとしたことですぐに口論になり……。次第に家のなかがピリピリとした雰囲気に包まれ、夫婦の思いがズレはじめていきました。赤ちゃんさえできればまた幸せな生活を取り戻すことができるはず。トモヒロもきっといいパパになってくれるはず……。そう思いながら私は、不妊治療がうまくいくことをただ望むことしかできないのでした。
弟夫婦にも子どもが!追い詰められた私
ダイチからの幸せいっぱいのメッセージは、私を絶望の底に叩き落とすには充分でした。私は部屋にこもると声をあげて泣きました。
「なんで最近結婚したばっかりのダイチの方が先に子どもが生まれるのよ!」私の心のなかは嫉妬ややるせなさ、怒りでぐちゃぐちゃになりました。「ミドリ! どうしたの?」いつの間にかトモヒロが帰ってきて、私の部屋のドアをノックしています。しかしドアを開ける気にもなれません。私は応えることもせず、そのまま泣きじゃくりました。翌日、私はトモヒロに宣言しました。「私、仕事を辞めようと思うの」
説得しようとするトモヒロを振り切って、私はすぐに退職の手続きをしました。しかし仕事を辞めたからといって授かるわけでもなく、私の心は少しずつ荒んでいきます。実家に行くとときどき姪っ子のユメカちゃんに会うこともありました。そのたびに私は、「この子がうちに来てくれたらよかったのに」と願ってしまうのでした。
ダイチたちが「うちは経済的にひとりっ子かな」と話しているのを聞き、「なんて贅沢な悩みなの」と心を乱されてしまうことも。ストレスを感じてしまうので実家へ行くのはやめました。母に相談できる機会が少なくなると私はだんだんと追い込まれていき、トモヒロに当たり散らす日も増えました。そして私にとっては運命の日がやってきました。
「俺たち2人でいればいいじゃん。それで充分幸せじゃないか」私はなぜか、トモヒロのこの言葉に大きく反発してしまったのです。「じゃあ今からでも違う人生を選べば?」
いつもとは声の調子が違うトモヒロに、私は思わずハッとします。「しまった」と思いましたが、もはや後の祭り。トモヒロの心は完全に私から離れてしまったのです。焦りとイライラを募らせていた私は仕事を辞めて不妊治療を最優先に考えるまでになっていました。しかし思いどおりの結果が得られず、いつしかパートナーであるトモヒロに当たり散らすのが当たり前になっていました。そして私がついに言ってはいけない言葉を口にしてしまったことで、私たちの夫婦生活は幕を下ろすことになったのです。
すべてを失った私、残ったモノは……?
「そんなことない……私だってトモヒロがいちばん大切だよ?」「どうかな、たぶん違うよ。ミドリが大切なのは自分と子ども。なんなら『子どもを授かる自分』が好きなだけだと思う」突き放すようなトモヒロの言葉が私の心にずっしりと刺さりました。
ぐうの音も出ませんでした。トモヒロも以前から私の不妊治療への姿勢に思うところがあったのでしょう。しかしその気持ちをグッとこらえ、私に付き合ってくれていたのです。今になって気づいても遅すぎるのかもしれませんが……。
それからすぐに私たちの離婚は成立。私は実家に身を寄せることになりました。「私、なんてことをしてしまったんだろう」「トモヒロは魅力的な人だから、きっとすぐに再婚するんだろうな」「もし早めに不妊治療をあきらめてたら、今ごろ2人で幸せに暮らせてたのかな……」ひとりでいると後悔が押し寄せ、そんなことばかり考えてしまいます。
母の呼ぶ声で私はダイニングへ向かいました。母は私の離婚について何も言いません。しかし頻繁に来ていたはずの弟家族がまったく来ないということは、たぶん気を遣って裏でいろいろと手を回してくれているのでしょう。
「ごめんね、私、こんなになっちゃって。孫の顔も見せてあげられなくて、無職になって離婚して、お母さんにまで頼って……」涙があふれて最後まで言えませんでした。「孫の顔なんて……お母さんね、ミドリの顔を見られたらそれでいいのよ。お母さんが大切なのはミドリなんだから」
トモヒロとの話し合いを経て、私たちは離婚することになりました。今となっては「ミドリは目の前の自分を見てくれていなかった」というトモヒロの主張が良くわかります。「なんでも手に入れる理想的な自分」のイメージにとりつかれていた私は、あまりに幼稚な考えしかできていなかったのです。トモヒロの愛情を受け取れなかったせいでなにもかも壊してしまった私。これからしっかりと反省して、母のように「目の前にいる人」に愛情を注げる人間になりたいです。