昭和の純喫茶“セピア”の思い出を受け継ぐスペシャルティコーヒー【ガンプコーヒーロースターズ セピア店】人気の自家焙煎カフェ2号店が富山市にオープン
富山県立山町の「GUMP COFFEE ROASTERS(ガンプコーヒーロースターズ)」はスペシャルティコーヒーと手作りスイーツが楽しめる人気のコーヒーショップ。
その2号店が、2025年9月、富山市にオープンしました。
「セピア店」と名付けられた店は、古民家を改装した趣のある本店とはガラリと雰囲気を変えた昭和の純喫茶風。
店主の小倉一臣さんは「かたいお店じゃないので、どのコーヒーがいいか迷ったら気軽に相談してもらえたら。コーヒーの敷居を低くして、カジュアルに楽しんでほしいです」と話してくれました。
昭和の喫茶店の雰囲気そのままに… 至福のコーヒー体験
店の場所は富山市千石町の住宅街。富山地方裁判所からもほど近い場所です。
道路沿いに掲げられたレトロな「セピア」の看板が目印。
ここは、昭和の頃から何十年と愛された喫茶店「セピア」があった場所。
2024年夏に惜しまれつつ閉店したあと、店舗をありのまま引き継ぐ形で、2025年9月6日にオープンしたのが「ガンプコーヒーロースターズ セピア店」です。
インテリアもそこに流れる空気感も… 長年愛された店のまま
店内はカウンター席と深く腰掛けられるソファ席が並ぶ、まさに昭和の喫茶店。インテリアは「セピア」時代のままだそう。
かつては昭和の営業マンたちの憩いの場だったお店ということで、さすがにタバコの臭いが染みついた壁紙や天井は張り替え、古くなった家具は入れ替えたそう。でも、店の造りやレトロなランプシェードなどの丁度品は在りし日の姿をそのまま残しています。
「昔ながらの喫茶店って、店主が高齢になってやめていく人が多い。でも喫茶店って日本独特の文化で、なくなっていくのがもったいないなって思うんです。実際、こういうお店に外国の人が来ると、すごくよろこばれます」(小倉さん)
カウンターの向こうには美しいカップとソーサーのセットが並んでいますが、これも「セピア」からまるごと受け継いだもの。好きなカップを選ぶ…昔ながらの喫茶店あるあるですよね。常連さんにはお決まりのカップがあったりして。
ガンプコーヒーでも特別なコーヒー豆を注文するとカップを選ぶことができるそうです。
店の雰囲気はレトロな昭和のままですが、設備はすべて最新のものに入れ替わっています。
ゆったりと大らかだった当時の空気に想いを馳せながら自家焙煎のスペシャルティコーヒーを楽しむという、ちょっと特別な体験ができるのが何よりの魅力です。
楽しみ方は無限大…自家焙煎のスペシャルティコーヒー
コーヒーの淹れ方は、ハンドドリップかサイフォンかを選ぶことができます。
自家焙煎の豆は10種類。ほとんどは立山店と同じ豆ですが、セピア店でしか味わえないブレンドもあるんだとか。
マシンで抽出する日替わりコーヒーは待たずにすぐ飲むことができます。こちらは「セピア」時代の常連さんからのリクエストで、11枚綴りのコーヒーチケットにも対応しているんだとか。
そのほか、フローズンドリンクやラテ、レモネードなども取り揃えていますが、ほとんどの人がコーヒーを注文するそう。
「立山店ではラテなどのドリンクも人気なんですが、こちらはなんでかコーヒーばっかりですね。若い子もみんなコーヒー。コーヒー屋さんなのでうれしいんですけどね」(小倉さん)
純喫茶という店の雰囲気がそうさせるのでしょうか。
自家焙煎のスペシャルティコーヒーを味わう
ハンドドリップというと、通常は何回かにわけてお湯を注ぐイメージがありますが、ガンプ流は最初に少量のお湯で蒸らした後は、ゆっくりと絶え間なく注ぎ続けてお湯を溜めます。
「このドリッパーの特徴でもあるんですけど、お湯がすぐ下に落ちずに溜まりやすいんです。ハンドドリップとつけ置きの中間のような感じになる。お湯に触れる時間が長い分、豆からしっかり味が出て、やわらかく甘くなるんです」(小倉さん)
豆がお湯に触れる時間が長いと雑味が出て苦くなる…なんて思いがちですが、それは過去の話。
近年は豆の品質自体が上がっているそうで、苦みは出ないんだそうです。
コーヒーをひとくち含むとコクの深い豊かな香りが鼻に抜けていきます。
まろやかな甘みの後にスッキリとした酸味が追いかけてきて、後には軽やかな風味が残る…コーヒーに特別詳しくなくても、格別な味わいだとわかります。
今回選んだのは、中煎りのエルサルバドル。
メニュー表には「みかんを思わせる柑橘系のアロマと日本茶のアフターテイスト。繊細な印象のコーヒー」とあり、確かに柑橘系だし、日本茶だし、繊細だ!!と納得の表現です。
小倉さんによると、深煎りなどもっとコクのある豆はサイフォンがオススメなんだとか。
豆の買い付けのためにアフリカを訪れたこともあるそうで、豆のクオリティにはこだわりが。でも、それを振りかざすことなく、「迷ったならなんでも相談して。カジュアルにコーヒーを楽しんでほしいんです」とのこと。
本格派を求める人も、なんとなくコーヒーが好きだな…という程度の人も、どちらにもオススメできます。
自家製スイーツは立山本店と同じラインナップ
コーヒーに合わせるスイーツも手作り。立山本店で作ったものを提供しています。
昔ながらのクラシックなプリンは思ったよりも大きめサイズで食べごたえ抜群。むっちりとした食感と卵の濃厚な味わいが楽しめます。口当たりの軽いホイップと真っ赤なさくらんぼ…まさに純喫茶のプリン!という感じで、店の雰囲気にもマッチしています。
セピア店だけのメニューも
ほとんどのメニューは立山本店と同じですが、コーヒーの「セピアブレンド」のように、セピアでしか味わえないものもあります。
純喫茶の雰囲気に合わせたクリームソーダもそのひとつ。ホットサンドなどの軽食やアルコールメニュー、そしてサイフォンコーヒーも、実はセピア店限定なんだそう。
立山店の常連さんも、新しいガンプコーヒーとの出会いを楽しめます。
通いたくなる居心地のよさ
「乗り合わせ割」にアロマのサンプル…ユニークなサービスも
駐車場が限られることから、車での訪問はできるだけ乗り合わせするのがオススメです。
乗り合わせて来た人や店まで歩いて来たお客さんには会計時に50円を割り引くユニークな割引も実施しています。
また、立山の本店ではすべてのスペシャルティコーヒーを試飲することができますが、セピア店ではできません。そのかわり、豆の香りを確かめられるようサンプルが置いてあります。
「1日に活力を与える、というのがGUMP COFFEEのコンセプト。1杯のコーヒーが皆さんの活力になったり、楽しみになったりしたらいい。仕事の息抜きはもちろん、ここでお仕事してもらってもいいんですよ(笑)」と小倉さん。
訪れたのは朝から雨が降り続いた秋の入り口のような日。店内は落ち着いた雰囲気で、現役時代に「セピア」の常連だったという80代の男性がカウンターに一人座るだけでした。
「よくセピアの名前を残してくれた…。『純喫茶』というのがいいよね。このカウンターでママといろんな話をしてね」と男性。今は亡きセピアのママとの思い出を、目を細めて語ってくれました。
「僕はママにはなれませんよ」と笑いつつ、いつものアイスコーヒーを出す小倉さん。
ゆったりと時間が流れるようで、不思議と長居したくなる空気感。
往年の喫茶店ファンも、カフェ巡りが好きな若い世代にも長く愛される、そんな憩いの場となるような気がします。
【GUMP COFFEE ROASTERS.セピア店】
住所 富山県富山市千石町6-2-28
営業時間 11:00~21:00
定休日 水曜