【6月病に注意!?】親子でできる梅雨どきのストレスケア〔専門家監修〕
梅雨どきは湿度が上がって不快指数が増すうえ、日照量の低下や低気圧の影響もあるため、大人だけではなく子どもにも、心身の不調が出やすくなる時期です。近年では、4月の新生活から続くストレスが蓄積したうえに、梅雨のうっとうしさが重なり、6月頃に不調が現れることを、「6月病」と呼ぶこともあるようです。新学期からがんばってきた小学生にも、少し疲れが出て来て、「学校をお休みしたい」と言い出す子もいるかもしれません。
そんな梅雨どきの子どものストレスを解消し、この時期を元気に乗り切る方法を、臨床心理士の高井祐子先生にお聞きしました。食事・運動・睡眠といった毎日の生活習慣の見直しに加えて、簡単なストレスケアの方法や、行きしぶりへの対処法もご紹介します。
6月に気分が落ち込むのはなぜ?
「5月病」はよく知られていますが、「6月病」と呼ばれるものもあることをご存じでしょうか? 6月は、4月に始まった新生活から2か月が経過し、疲労やストレスが蓄積する時期です。また、6月には祝日がありません。そのため、息抜きするタイミングをもてないまま、頑張り続けなければならないという状況も。
加えて、梅雨どきのぐずついた天気や湿度の高さは、大人子ども問わず、ストレスや体調不良の原因になりがちです。そのため、梅雨どきにはいつもよりさらに、体や心の状況が悪化することもあるのです。
梅雨どきのストレスの主な原因
天気が悪い
思うように外へ出られず、ストレスが発散できない。
湿度が高い
湿度が上がると不快指数も高くなり、ついイライラしてしまう。
日照時間が減る
「幸せホルモン」とも呼ばれるセロトニンの分泌が下がり、気分が落ち込みやすくなる。
低気圧の日が多い
低気圧が近づく日が多く、めまい・頭痛がする、気持ちが落ち着かなくなる・沈みがちになるなど、いわゆる「気象病」のような状態になる場合も。子ども大人問わず、症状が出ることがある。
生活習慣を整え、幸せホルモン「セロトニン」を増やす
それまで「心の問題」だと考えられていたことが、実は生活習慣に起因していることもよくあります。特に梅雨どきは、日照量が減ることに加え、気象病などの影響で体にだるさが出ることも多く、生活リズムの乱れが気になる時期です。
「幸せホルモン」とも呼ばれる「セロトニン」は、心を落ち着かせたり睡眠の質を上げたりする働きがあり、安定した気持ちで生活するために欠かせないホルモンです。梅雨の時期は生活リズムの乱れから睡眠不足が生じがちですが、セロトニンの生成と分泌を促すためには、「食事」「運動」「睡眠」の3つの柱を整えることが大切。毎日を心身ともに健康に過ごすため、いつも以上に生活習慣を整えることを意識しましょう。
セロトニンの原料「トリプトファン」は食事からしか摂れない
セロトニンは、脳内で分泌されるホルモンで、アミノ酸(タンパク質)の一種・トリプトファンから作られます。そしてトリプトファンは、人の体内で生成することができず、食事からしか摂取することができません。そのため、卵や乳製品、大豆、肉・魚など、タンパク質を多く含む食材を、意識的に食事に取り入れるようにしましょう。
トリプトファンは、バナナにも多く含まれているので、朝に食欲がない子どもは、バナナ1本だけでも食べていくのがオススメです。また、菓子パンをハムチーズトーストに置きかえるなど、できるところから調整してみましょう。
トリプトファンを摂取できる主な食材
肉魚卵乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルトなど)大豆製品(豆腐、納豆など)バナナカボチャ
セロトニンを活性化させる方法① 朝日を浴びる
セロトニンの分泌は、日光を浴びることで活性化されます。朝起きたら、まずはカーテンを開けて、朝日を浴びましょう。「日光を目で見る」ことが大切です。視神経に光を取り込むことで、体が目覚め、セロトニンが分泌され始めます。
また、セロトニンは体内に蓄積されないので、外出時を含め、できれば毎日15~30分を目安に日光を浴びましょう。
梅雨どきは、晴れ間を見つけてお散歩に行くなど、なるべく外出を心がけましょう。散歩やお買い物など、機会をつくって、親子で出かけてみるとよいでしょう。
セロトニンを活性化させる方法② リズミカルな運動を行う
一定のリズムをくり返し刻むリズミカルな運動でも、セロトニンの分泌が活性化されます。ウォーキングやランニング、サイクリングなどがオススメです。通学時間も含めて、できれば1日20分ほど、リズムよく体を動かしてみましょう。
雨の日の休日などは、階段を「イチ・ニ、イチ・ニ」と言いながら昇るのも◎。軒先やガレージなどで、縄跳びをするのもよいでしょう。
セロトニンは良質な睡眠にも欠かせない
セロトニンは夜になると、「睡眠ホルモン」と呼ばれるメラトニンに変化します。日中に分泌されたセロトニンの量が少ないと、メラトニンの量も減り、睡眠の質が落ちてしまったり、寝付きが悪くなったりすることもあります。
また、メラトニンの分泌は、朝に日光を浴びると止まり、その15時間後に再開されるという周期になっています。ですから、朝はきちんと起きて、太陽の光を感じることが、夜のスムーズな眠りにつながります。
子どもでもできる、ストレスのセルフケア
お子さんの気持ちがなかなか落ち着かないときに行いたい、ストレスケアの方法を紹介します。親子でいっしょにやってみましょう。
不安が強い・緊張度が高いときは……
不安や緊張で、体に力が入ってしまうときに行ってみましょう。気持ちが落ち着き、リラックスできます。
息を「ふーっ」とゆっくり長く吐く肩をぎゅっと上げて、力を抜いてストンと落とす両腕を「バンザーイ」と大きく広げて、伸びをするペットやお気に入りのぬいぐるみをなでる水を飲んだり、あめやガムを口に入れたりする(消化器官が働くことで、副交感神経の働きが優位になり、気持ちが落ち着く)
イライラしがちなときは……
イライラしたり、ストレスを強く感じてしまったりするときに行ってみましょう。モヤモヤを発散できるはずです。
大声で叫ぶ(「わーっ」「あーっ」など、何でもOK)力いっぱい握りしめられるもの(スクイーズなどのおもちゃ)を、ギュッと握る新聞紙やダンボールをビリビリ破る好きな音楽を聞いて、ダンスをしたり、歌ったりする
子どもに「学校に行きたくない」と言われたら?
誰しもストレスがたまりがちな梅雨どきは、お子さんから「今日は学校に行きたくない」と言われることもあるかもしれません。
その場合、嫌がるお子さんを無理に登校させる必要はありません。文部科学省も、不登校に対して「登校だけを目標にしない」という指針を出しています。
保護者のかたは、まずは「そうなんだ」と受け止め、「じゃあ、今日はいったんお休みしてみようか」などと伝えることで、お子さんも安心するはずです。そのうえで「何があったの?」と聞いてみましょう。
ただし、子どもの場合、言語化に少し時間がかかってしまうこともあります。お子さんが理由をうまく口にできない場合は、「何かあったときは、いつもあなたの味方だよ」「いっしょに考えたいから、言いたくなったら言ってね」などと伝えます。「あのとき、実はこういう気持ちだった」と、1か月後に話し始めるお子さんもいるそうです。行きたくない理由がすぐにわからなくても、慌てず気長に待ってみましょう。
丸一日休ませることに抵抗がある場合は、朝が苦手な子どももいるので、「3時間目から行ってみる?」「昼からだったら行けるかな?」などと、段階を踏んでみるのもよいでしょう。「親に送ってもらえるなら行ける」というお子さんもいます。まずはどうしたいのか、お子さんの気持ちを聞いてみましょう。
「梅雨どきだからね」と声をかけてみる
子どもは、なんとなく調子が悪いことを、言語化できていない場合もあります。保護者のかたが、日々お子さんを観察していて、「天気の悪い日に調子が悪いな」と感じるようなら、「梅雨どきだからかもしれないね」「雨が降っているときは、心や体がスッキリしないことがあるよ」などと声をかけ、お子さんの調子の悪さを言葉にしてあげてもよいかもしれません。
子どもが「言いたいことが言える」環境づくりを
お子さんが保護者のかたに、「調子が悪い」「今日はお休みしたい」などと素直に言えることは、とても大切なことです。お子さんが「この家の中なら、言いたいことは何でも言える」と感じられるような環境をつくっていきましょう。
また、何かトラブルがあったときに、矢継ぎ早にあれこれ聞いたり、「ああしたら」「こうしたら」と解決方法を伝えたりするのも少し我慢を。まずはお子さんに「どうしたの?」「何があったの?」と聞き、その上で「あなたはどうしたいの?」と聞き、いっしょに考えていきましょう。保護者のかた自身の思い込みにとらわれず、「大丈夫だよ」「いっしょに考えよう」「1人じゃないからね」といったメッセージを共有していくことで、お子さんとの信頼関係が強まり、家庭におけるお子さんの安心感も増していくはずです。