【入江悠監督「室町無頼」】 長尾謙杜さんの棒術アクションが素晴らしい
静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回はジョイランドシネマみしま(三島市)、シネシティザート(静岡市葵区)、TOHOシネマズ浜松(浜松市中央区)などで上映中の入江悠監督「室町無頼」を題材に。直木賞作家垣根涼介さんの「室町無頼」を映画化。「あんのこと」で高い評価を得た入江監督の最新作は人的リソースを大量に投入した、歴史エンタテインメント。豪華な俳優陣はもちろん、膨大なエキストラに驚かされる。 応仁の乱前夜の京は、飢饉と疫病で壊滅的な打撃を受けていた。加茂川の河原には、うずたかく積まれた死体を焼く黒い煙が立ちこめる。絶望的な世相を背景に、農民たちは一揆を起こす。各地の頭目を率いて人々の不満を束ねたのが、野放図な行動で「無頼」と呼ばれる蓮田兵衛(大泉洋さん)。夜陰に乗じて高利貸が住まう二条通目指して奇襲をかける―。 兵衛と、兵衛の幼なじみで悪党の頭領となった骨皮道賢(堤真一さん)のつばぜり合いも見どころだが、なんといっても、兵衛に命を預けた青年・才蔵(長尾謙杜さん)の棒術アクションが素晴らしい。 棒術の師(柄本明さん)が課す修行はどれも過酷を極める。足元が揺らぐ湖上の桟橋の上で水面から突き出た柱の無数のくぎを打ち据え、円形のスペースで全方位から迫り来る刃物という刃物を交わし打ち落とす。最終審査は荒れた寺で臨むリアルファイト。空手の「百人組み手」を思わせる究極の「多勢に無勢」で、才蔵は棒で相手の刀を払い急所を突く。 長尾さんの身体能力が存分に発揮されている。棒を使って柔道の内股のように相手を前方に倒す技術には感心した。 (は) <DATA>※県内の上映館。1月31日時点ジョイランドシネマみしま(三島市)シネプラザサントムーン(清水町)シネマサンシャイン沼津(沼津市)シネマサンシャインららぽーと沼津(同)イオンシネマ富士宮(富士宮市)シネシティザート(静岡市葵区)MOVIX清水(同)静岡東宝会館(同)藤枝シネ・プレーゴ(藤枝市)TOHOシネマズららぽーと磐田(磐田市)TOHOシネマズ浜松(浜松市中央区)TOHOシネマズサンストリート浜北(浜松市浜北区)