ガメラ生誕60周年!怪獣映画の最高傑作「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」の魅力を探れ
ガメラ誕生60周年!1作目から3作目までの4Kデジタル修復版が劇場公開
日本の怪獣映画界において、東宝が生んだゴジラと並ぶスーパースターといえば、そう、大映のガメラである。北極で生まれた巨大亀の怪獣・ガメラは口から火炎を噴射し、手足を引っ込め “回転ジェット” で空を飛ぶといったユニークな設定が魅力。そして何より少年たちの心をつかんだのは、ガメラが子どもの味方であることだった。
昭和期には8本、平成期には4本のガメラ映画が制作されたが、ガメラ誕生60周年にあたる記念すべき今年(2025年)の12月5日、なんと1作目から3作目までの4Kデジタル修復版が劇場公開されることになった。その修復作業には、平成ガメラ3部作の特技監督であり、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』『新幹線大爆破』などの監督として日本映画界を牽引する樋口真嗣氏が監修にあたっている。これはかなりの見応えが期待できるぞ!
ガメラ映画の方向性を決定づけた「大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス」
第1作目の『大怪獣ガメラ』(1965年 / 監督:湯浅憲明)は、東京の街を蹂躙するガメラの脅威が見どころでありながらも、ガメラと少年との心の交流を描いたジュブナイル色のある作品だった。
一変して第2作の『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年 / 監督:田中重雄)では子どもが一切登場しない大人向けの作り。しかし今回紹介する第3作『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』(1967年 / 監督:湯浅憲明)では、“ガメラは子どもの味方” という設定が復活。以後の作品でもこの設定が定着していることから、本作はガメラ映画の方向性を決定づけた重要な作品といえる。
“ゴジラだ!” という叫びはその出現に恐怖する声であることが多いが、“ガメラだ!” という叫びはその出現に目を輝かせる少年の喜びの声となるのだ。昭和ガメラ映画の、いや、怪獣映画の最高傑作と推す声もある『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』。早速その魅力を綴ってみよう。
ギャオスこそガメラの宿命のライバル
ーー うち続く富士火山帯の異常な活動の影響で、地底に眠っていたギャオスが目を覚ました。ゴジラの宿命のライバルがキングギドラ、ウルトラマンのライバルがバルタン星人だとすれば、このギャオスこそガメラの宿命のライバルで、以降の作品でも度々激闘を重ねることになる。
コウモリをモチーフにした直線的なフォルムでアニメ的な外見のギャオスは、人間をムシャムシャと喰う獰猛な夜行性の怪獣で、口からは何でもスパスパと切断する “超音波メス光線” を発射。名古屋城が、ヘリコプターが、新幹線が、次々と真っ二つにされる。中でも、何とかしてギャオスの姿を写真に収めようとする肝の据わった記者たちが、真っ二つにされた自動車を運転しながらもカメラを構えるユーモラスなシーンは見もの。
ガメラ映画ならではの “空飛ぶ怪獣同士の戦い”
そんなギャオスに立ち向かうガメラ。第1ラウンドの戦いでは、ギャオスに迫られ危機一髪の少年を背中に乗せて救い出すという、まさに怪獣好きにとっては夢のような光景が描かれる。この少年・英一は、以後の場面でも大人たちに混じって “怪獣対策本部” に入り込み、ギャオスの命名者になり、さらには、ギャオス撃滅のヒントを大人たちに与えたり大活躍するのだった。
続く第2ラウンドは『大怪獣空中戦 ガメラ対ギャオス』のタイトル通り、“空飛ぶ怪獣同士の戦い” が描かれる。この戦いも激闘の末に痛み分けとなるのだが、双方ともいったん引き下がって傷を癒し、捲土重来を期するところがカッコいい。特に、ガメラに食いちぎられた片足の指をギャオスが洞窟の中で再生させるシーンがあるのだが、ここでのギャオスの表情が素晴らしい。
おそらく再生中は苦痛が伴うのであろう。徐々に指が生えてくる間、必死に痛みを堪える表情を見せ、再生間もないその指の上に岩が落ちると “イタタタ…” といった表情で目を細める。まさにギャオス一世一代の名演技! そして戦いは、人間たちとガメラが共闘してギャオスを迎え撃つ最終ラウンドに続くわけだが、もちろんその先は観てのお楽しみだ。
大映が絶大なる自信を持って公開した怪獣映画の王道
この映画が公開された1967年には、東宝が『怪獣島の決戦 ゴジラの息子』『キングコングの逆襲』、松竹が『宇宙大怪獣ギララ』、日活が『大巨獣ガッパ』を公開。そしてテレビでは『仮面の忍者赤影』『キャプテンウルトラ』『ウルトラセブン』『ジャイアントロボ』といった番組がスタート。まさに特撮百花繚乱の時代であった。その最中に登場したこの『ガメラ対ギャオス』は、大映が絶大なる自信を持って公開した怪獣映画の王道である。4Kデジタル修復版のクリアな映像でその魅力を隅々まで堪能してほしい。
ところで、ガメラのテーマソングが初めて登場したのも本作。昭和の怪獣少年には「♪強いぞガメラ 強いぞガメラ 強いぞガメラ」の「ガメラマーチ」が印象深いが、この曲が登場するのは第4作目の『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』(1968年)から。本作では「♪北極生まれの 大きなからだ」ではじまる「ガメラの歌」がラストに流れる。軽やかなガメラソングを高らかに歌うひばり児童合唱団の元気な歌声は、子どもの味方・ガメラのテーマにぴったり。そしてその曲のバックに流れる映像では、ちょっとした観客サービスもある。どうぞお楽しみに!