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力を結集!核兵器のない未来へ 高校生平和大使の釜高生ら署名活動 「釜石艦砲」記憶つなぐ

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 国際社会に平和な世界の実現を訴える「高校生平和大使」に本年度、釜石市から佐藤凛汰朗さん(釜石高2年)が選ばれた。岩手県内各地で核兵器廃絶を求める「高校生一万人署名活動」を展開中。太平洋戦争で釜石が受けた最初の艦砲射撃から79年の14日には、市内中心市街地で声を上げた。

 「ビリョクだけれど、ムリョクではない。署名活動によるつながり、結びつきが、やがて核兵器廃絶や戦争のない平和な社会を実現する大きな力になると信じる。協力を」

 「釜石艦砲」犠牲者の冥福を祈る黙とうを呼びかける防災行政無線のサイレンが市内に響いた14日午後、イオンタウン釜石前で佐藤さんが訴えた。釜高の生徒有志7人も加わり、大町広場周辺を歩いて署名集め。市民らが足を止め、「戦争はダメ」「若い人たちが頑張っているから応援しないとね」などと応じた。

釜石高生らの呼びかけに市民や買い物客らが応じた


機動力を発揮して地域を歩いて署名を集める生徒ら


活動をアピールする横断幕を掲げて協力を呼びかけた


 署名活動は2001年に長崎の高校生から始まり、岩手では東日本大震災後の12年にスタート。「高校生一万人署名活動実行委員会・岩手」が年間を通して呼びかけを続ける。集められた署名は高校生平和大使によってスイス・ジュネーブの国連欧州本部に届けられている。

 高校生平和大使は、1990年代後半に世界で核実験が相次いだことを受け、98年に長崎で始まった。佐藤さんは第27代大使として、畠山史子さん(一関一高2年)とともに声を出す。岩手からは2011年以降、毎年2人を選出し、今回で14代目。震災の教訓や復興の姿を発信する役割も担う。釜石からは12年に初選出され、佐藤さんは5人目となる。

「戦争のない平和な社会の実現を」と訴える佐藤凛汰朗さん


 7月14日…最初の砲撃の日。佐藤さんが地元で活動するのは2回目だったが、「この日」に強い思い入れがあった。歴史や世界情勢に関心があり、国外で戦闘の犠牲者が後を絶たない状況に「何かできることはないか」と考え続けてきた。そんな時に学校で釜石艦砲という戦禍を学び、捕虜収容所があって外国人捕虜が労働させられていたと知った。家庭で家族の恩人の体験談を聞いたことも。「罪もない多くの命が奪われ、この地が火の海になった日の景色を忘れてはいけない」。戦争の記憶を受け継ぎ、発信する大使に使命を見いだした。

 この日の活動に思う。「釜石にとって14日と8月9日はただの一日ではないと改めて感じてほしい」

道行く人に協力を呼びかける佐藤さん(右から2人目)


 ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルのガザ攻撃など連日の報道も気持ちを揺さぶる。佐藤さんは「戦争が日常化するのは異常だ。日本は経験した人が少なくなっているが、いつ関わってしまうかもしれない」と危惧。そして続ける。「戦争は人の意志で起こる。だから人の手で止められるはず。やり始めた人についていかず、乗っからず、発展させないようにできると思うから、訴え続ける。平和を」とひたむきな姿勢を見せた。

 幼少期に震災が発生し、復興の歩みとともに育った経験も活動の力にする。「生活できるまちに戻そうと頑張った人たちがいたおかげで今がある」。風化を防ぎ、悲しい記憶や犠牲が増えないよう継承し続ける大切さをかみしめる。国連本部ではスピーチを披露する予定もあり、「悲しい歴史を繰り返さないために自分の言葉で思いを訴えたい」と意気込む。

活動を終え充実した表情を見せる釜石高の生徒有志


 活動に参加した他の生徒らも刺激を受けた様子で、「署名する意味を考えてくれていたようで、うれしかった」「地域を知る学びになった。活動を続けたい」などと感想。高校生平和大使派遣委員会・岩手の千葉伸武共同代表が見守り、「署名は数ではなく、何かをやっているという形が重要になる。多くの人に忘れさせない、記憶を継承する活動だ。めげずに呼びかけ続けることが、核廃絶の大きな力になる」と意義を強調した。

 本年度の第27代大使は、17都道府県の23人。各地で署名活動を展開し、8月上旬に長崎での研修を経て、同月中旬に国連欧州本部を訪問する。

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