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「人間と話しているような」AIアバターを開発するD-ID 広告・マーケ担当者が重宝するワケ

TECHBLITZ

大規模言語モデル(LLM)を搭載したAIアバターを開発するD-ID(本社:イスラエル・テレアビブ)。同社のAIアバターは人間が話しているような仕草、声でこちらからの問いかけに答えてくれる。さらに、日本語を含めた多言語に対応していて、アバターも、性別・年齢・肌の色などを複数の選択肢から選べる。Coca-ColaやWarner Bros.など「フォーブス・フォーチュン2000」にランクインする企業を多数顧客に抱え、日本企業では丸紅が投資。そんなD-IDの創業者でCEOのGil Perry氏のインタビューをお届けする。

<font size=5>目次
D-IDのAIアバターが求められるワケ
AIアバターの「商談スキル」は人間以上?
人類史上の「ピポット」とも呼べる時代
日本企業との各種提携にオープン

D-IDのAIアバターが求められるワケ

―D-IDは、どのようなサービスを開発しているのですか。

 D-IDはAIアバターを開発しています。プレゼンターのアバターを選択し、スクリプト(文章)を入力したり、話しかけたりすると、アバターは実際に人間が話しているかのようなリアルさで対話をしてくれます。

 D-IDは120の言語に対応しており、アバターは日本語も話します。顧客数は1万社を超え、Coca-ColaやShell、Warner Bros.など「フォーブス・フォーチュン2000」に入る企業の約4分の1が顧客です。

 日本企業としては、太陽生命やNTTコミュニケーションズがD-IDのアバターを用いた「AIアバターによる生命保険募集」の実証実験を実施しています。

Gil PerryD-IDCo-Founder & CEOTel Aviv UniversityでComputer Scienceを学んだ後、オンラインコミュニケーションソフトウエアを手がけるHousepartyでiOS Developerを務める。2016年11月にD-IDを共同創業、CEOに就任、現職。

 なぜ、D-IDを多くの顧客が利用しているのか考えてみましょう。もちろん、D-IDのアバターのリアルさや操作の簡易さなどは大きな理由です。そのほかにも、アバターの性別・年齢を自在に変えられるなど、プレゼン相手の顧客に対して効果的な動画を作成しやすいのです。

 そして、D-IDはLLMを搭載しており、顧客との自然な会話を実現しています。一方的ではなく、双方向の対話を可能にするのが、D-IDの他社との差別化ポイントでもあります。

 企業にとって、D-IDの主なユースケースは、マーケティングです。業界に関わらず、ビジネスにおいては顧客と対話し、その顧客を営業が獲得していく必要があります。われわれのサービスは、カスタマージャーニーにおける最初のステップのマーケティングに使われているのです。

 当然のことですが、企業のサービスの利用を検討する顧客は、そのサービスにどのような特徴があるかを知りたいでしょう。その際に、間違った情報を流したり、適切な会話ができなかったりすれば、企業は顧客を獲得できない可能性があります。

 先ほども申し上げた通り、D-IDはアバターを自由に変更できますし、LLMを搭載していることから、顧客からの質問に対しても網羅的に、正確に返答できます。カスタマージャーニーの最初の段階で、このような能力を持ったアバターを持っていることは、企業にとっても大変心強いことでしょう。

 人件費を支払うよりも、D-IDを利用した方がコストも10分の1程度まで抑えられますし、アバターは疲れ知らずですから、顧客からの問い合わせにいつでも返信できます。

 さらに、D-IDが多言語に対応していることも大きいです。グローバル化が進む経済環境では、顧客は世界のどこにでも存在します。リアルタイムで翻訳を可能にするD-IDは言語に縛られずに顧客を獲得するチャンスをくれるのです。

image : D-ID

AIアバターの「商談スキル」は人間以上?

―D-IDのデモ動画を見せてもらいましたが、本当に人間が話しているようですね。仕草も自然だし、会話に澱みもない。アクセントも、ロボットっぽさがありません。

 われわれは音声技術に強みを持っています。合成音声をはじめ、「音のクローン」を作る技術も独自で開発しており、人間が話しているように聞こえます。

 人間のように話すデジタルアバターの需要は非常に大きく、今後も拡大していくでしょう。2032年までに市場規模は5200億ドルに達すると予想する専門家もいます。

 デジタルアバターは、もっと広範に使われていくでしょう。例えば、広告での起用です。現在の広告は人間の俳優を連れてきて撮影する必要がありますが、アバターで代用可能ですし、今のように、時間と金銭的コストをかけてABテストをするのではなく、アバターで(人間のモデルを使うよりもはるかに容易く)1000件のバージョンの広告をテストできます。1つの広告に対して、何億ドルも使っている現状を考えると、D-IDは画期的でしょう。すると、効果的な広告を短期間でコストをかけずに作成でき、企業にとっては収益アップにつながります。

 また、顧客対応するアバターはLLMを搭載していることから、顧客の属性や商談の際に話した内容などを全て正確に雇用主に報告することが可能です。商談の際に顧客がうっかり漏らす「本音」は全マーケティング担当者にとって喉から手が出るほど欲しい情報ですから、D-IDは重宝されるでしょう。

image : D-ID

人類史上の「ピポット」とも呼べる時代

―D-IDを創業したきっかけは?

 もともと私は、AIという技術そのものに魅了されていました。私のAIとの出合いは顔認証技術が始まりです。2014年に独力で、顔認証技術から身を守るアルゴリズムを確立したのです。2016年に設立したD-IDという社名も「De-identification」の略で、顔認証技術からプライバシーを守る会社にしたいという想いがあるのです。

 AIは人間の生活をダイレクトに変えてしまう技術であり、それを扱う人々には強い責任感が求められます。実際、イスラエルでもLLMの台頭により、中長期的には約3分の1の人口が職を失う可能性があると言われているほど、大きな変化が予想されているのです。私たちはAIを使って、世界をより良い方向に導きたいと思っているのです。

 2018年には当社のエンジニアから「デジタルヒューマン」の存在を聞き、アバターの開発を進めました。デジタルヒューマンが人間と同じように動いているところを見て、私は世界が急速に変化していることを悟りました。さらに2023年からの生成AIの台頭で、その確信を強めました。そうして、LLMの助けを借りながら人間と同じように対話するアバターが完成したのです。

 実は、D-IDのアバターも、これほど早く人間と対話できるようになるとは思っていませんでした。2018年当時は、向こう10年以内にそうした技術が完成するだろうと予想していましたから。

 ふたを開けてみると、頭脳を持ったデジタルヒューマン(生成AIを搭載したアバター)は2023年に登場したのです。われわれは、人類史上の「ピポット」とも呼べる時代に生きていると思います。

日本企業との各種提携にオープン

―日本市場に進出する考えはありますか。

 すでに日本の大手企業もD-IDを使っています。さらに、丸紅も当社の投資家の1社ですし、日本との関係は非常に深いです。

 日本との出会いのきっかけは、われわれの投資家であるY Combinatorの斡旋で日本を訪れたことがきっかけです。現在もパートナーを積極的に募集していますよ。

―日本の大企業とのパートナーシップを考えた時、どのような形態が理想だと考えていますか。

 投資でも共同研究でも、代理店でもどのような形でもオープンです。日本企業は新たなテクノロジーの導入に前向きですし、日本でD-IDができることは多いと思います。

従業員数なし

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