デビュー50周年【THE ALFEE】坂崎幸之助の魅力!個性豊かな3人のボーカリスト
THE ALFEE最大の武器であるコーラス
THE ALFEEの魅力のひとつといえば、メンバー3人ともリードボーカルを担当できることだろう。メンバー全員がリードボーカルを担当することは他のバンドでも珍しくないが、少し異なるのはシングル曲で全員がリードボーカルを担当している点だ。そして、THE ALFEE最大の武器であるコーラスは、それぞれ違う声色を持ち、お互いの信頼関係が深く築かれている坂崎幸之助・桜井賢・高見沢俊彦の3人だからこそ生まれ、唯一無二の重厚なハーモニーを奏でている。
今回は坂崎のボーカルをピックアップしよう。坂崎の歌声の魅力は、なんといっても器用な歌い分けができるところだ。コーラスでは高音・低音パートどちらも難なく担当できる広音域の持ち主で、時にはアコースティックギターの音色に合う柔らかい歌声になったり、時にはハスキーボイスでロックを歌い上げたりする。
坂崎幸之助がいるからこそTHE ALFEEの曲のパターンが広がっている
一般的に考えられる “THE ALFEEのボーカリスト” といえば、「メリーアン」や「星空のディスタンス」でリードを担当している桜井の印象を持つ人は多く、ハイトーンボイスが際立つ高見沢もボーカリストとしての多くの人に認知されている。残る坂崎はシングル曲でリードを担当している回数が2人に比べて少ないため、“THE ALFEEのボーカリスト” の印象は薄いかもしれない。しかし、THE ALFEEの曲を聴き込めば聴き込むほど坂崎の多彩な歌い方を知ることができ、坂崎がいるからこそTHE ALFEEの曲のパターンが広がっているのではと考えることもできる。その歌い方は、大きく分けて3つあるだろう。
まず1つ目は、普段の話し声から想像がつきやすい、そのままの優しい歌声。坂崎が最も影響を受けてきた音楽ジャンルであるフォークにぴったりの歌声だ。THE ALFEEの前身グループ、高校生時代の桜井と坂崎が在籍していたコンフィデンスの「昼下りの夢」や、1975年のALFIE名義のセカンドシングル「青春の記憶」では、坂崎がリードボーカルを担当した。現在も大事に歌い継がれている1980年のアルバム『讃集詩』収録の「明日なき暴走の果てに」と「Musician」のリードボーカルも坂崎だ。ここぞと言う時のバラード曲は温かみのある坂崎の歌声が似合い、多くのファンを魅了している。
2つ目は、THE ALFEEがハードロック系のサウンドを取り入れた1983年以降に見られる力強い歌い方だ。1986年のアルバム『AGES』収録の「AMERICAN DREAM」は、最初は本当に坂崎が歌っているのか疑ってしまうほど、優しい歌い方から一変する歌い方に加え、ディープ・パープルのイアン・ギランのようなシャウトが聴ける。
その他、1985年のアルバム『FOR YOUR LOVE』収録の「恋の炎」や2001年『GLINT BEAT』に収録された「Punks Life」などは、テレビで見る坂崎からは想像がつかないワイルドな歌いっぷりを披露している。初めてTHE ALFEEのライブを観に行った人は、決まって “いつも真ん中でアコースティックギターを弾きながら歌う姿と、ハンドマイクスタイルで歌う姿のギャップに驚いた” と感想を持つことが多く、そこから坂崎の虜になる人も多い。
先輩ミュージシャンの声と歌い方をコピーする技は逸品
そして3つ目はモノマネ、いや、この場合はコピーと言った方が良いだろうか。この手法を取り入れている曲は少ないが、先輩ミュージシャンの声と歌い方をコピーする技は逸品だ。
THE ALFEEとしては、「星空のディスタンス」のB面に収録されている「DOWNTOWN STREET」では、坂崎が尊敬する忌野清志郎の歌い方をコピーしたり、Bメロでは同一人物とは思えないくらい高い音域での裏声を出したりと坂崎の本領が発揮されている。また、覆面バンドの “BE∀T BOYS” では、ビートルズなどの曲をメドレー形式で歌う “スターズ・オン45” を模倣して、吉田拓郎をマネして歌う「スターズ☆オン23(ショック!! TAKURO 23)」を発表。
このように坂崎は、尊敬する先輩の曲を伝承していくために、ギタープレイだけでなく声もコピーする一つの “芸” を身につけた。なかでも、南こうせつと加藤和彦の “声コピー” の完成度は高く、同時に歌うとどちらが歌っているのか分からなくなるほどだ。
THE ALFEEのために磨いてきた努力の結晶
様々な場面で巧みに声を操り、声の出し方で感情を思いのままに表現する坂崎の歌い方は “とてもマネできない” とメンバーの桜井や高見沢も絶賛するほど。たしかに、私たちは歌を歌うとき、自分が歌える音域の中で発声する。ただ、坂崎の場合は低音域から高音域まで幅広く出せるだけでなく、曲の雰囲気で声の出し方を変えて歌うことができる。まるでカメレオンのように自由自在に曲ごとに歌い方自体を変えることができるのは、おそらく声帯が強く鍛えられているからだろう。
しかし、そこまでのレベルに到達できたのは、天性の才能のみならず並々ならぬ練習量があったからこそ。先輩方のために、そしてTHE ALFEEのために磨いてきた努力の結晶が、今日に続くTHE ALFEEサウンドの世界観の維持に大いに貢献していることは言うまでもない。