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介護職員処遇改善支援補助金は実際いくら?いつ支給される?専門家が解説

ささえるラボ

介護職員処遇改善支援補助金は実際いくら?いつ支給される?専門家が解説

介護職員処遇改善支援補助金は実際いくら?いつ支給される?

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関連記事:伊藤 浩一

https://mynavi-kaigo.jp/media/users/14

介護職員処遇改善支援補助金とは

「2024年(令和6年)から介護職賃上げ、月額6000円=介護職員処遇改善支援補助金」
このニュースは、介護職の皆さんをはじめ、介護業界に興味がある皆さんにとって、2023年の年末の大きな関心事項となったかと思います。
2024年(令和6年)2月からの介護職員処遇改善支援補助金とは

・「デフレ完全脱却のための総合経済対策」(令和5年11月2日閣議決定)に基づき、介護職員を対象に、賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を2%程度(月額平均6000円相当)引き上げるための措置を、令和6年2月から前倒しで実施するために必要な経費を令和5年度内に都道府県に交付する
・介護職員以外の他の職種の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める

※出典:厚生労働省令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金

▼介護職員処遇改善支援補助金の記事|ささえるラボ

関連記事:介護職員 平均月給6000円相当引き上げへ、専門家の見解は? | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/1110

しかし、2024年2月となり「あれ、もう2月過ぎてるけど具体的な話が施設長(もしくは管理者)から何もないな・・」と思っている方も多いのではないでしょうか。

また場合によっては、「あの話はどうなっているの?」「なんでいつもニュースになる金額と手元に来る金額は違うの?」
そんな現場の方の声が聞こえてきそうですので、こちらの内容について解説させていただきます。まず、はじめに触れておきたいのはこのような介護職の賃上げに関してのニュースは、今回が初めてではありません。

過去に「8万円アップ」「9000円アップ」など、介護業界をざわつかせたニュースがありました。
しかし、現場からすれば
「確かに上がってると言われればそうだけど、上がった!という実感はない…」
というのが本音ではないでしょうか?

なぜ、〇〇円アップというニュースは、その金額が現場の実感値にまで落とし込まれないのでしょうか? 架空のM介護事業所(A施設長)を事例として考えてみましょう。

なぜ、実際に支給される金額がニュースと異なるのか?

架空のM介護事業所(A施設長)を事例で紹介します

M介護事業所は、介護職員15名、生活相談員1名、栄養士2名、事務職2名、施設長1名(A氏)で小規模ながらも地域に密着した運営をしている評判の良い事業所です。
施設長も熱心で現場を大切にすることから職員より評価を得ていました。

2023年(令和5年)11月
A施設長は「介護職賃上げ、令和6年2月から月額6000円」のニュースを目にします。
「やった!少しでも職員の給料があがればみんなより安定して働いてもらえるぞ!でも、実際はどんな要件なんだろう。」
施設長はその要件に目を通しました。
※要件:厚生労働省令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金

1.事業者ごとに交付される補助金額は、常勤換算する必要がある

要件には
「事業者ごとに交付される補助金額は、介護職員(常勤換算)1人当たり月額平均6000円(給与の約2%)の賃金引上げに相当する額になる」とあります。

ここでポイントは「常勤換算」という言葉です。

「常勤換算」とは事業所で働く人の平均人数です。

A介護事業所は、15人の介護職が勤務していますが、常勤職員は9人、非常勤職員が6名とします。

6名の非常勤の方は、常勤職員の60%の時間で勤務しているとすると、
常勤換算では、6名×60%=3.6名ということになります。

つまり、実際は15人いるのに12.6人のカウント(常勤換算)となります。

15人介護職員がいるのであれば、
6000円×15人分=90000円が月額で補助されそうですが、実際は6000円×12.6人=75600円になってしまう計算です。
75600円を15人で割ると5040円になってしまいます。

出典:https://mynavi-kaigo.jp/media

2.事業所の判断で、介護職以外への支給も可能

これに加え、
「事業所の判断により、介護職員以外の他の職種の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるよう柔軟な運用を認める」という要件もあります。

施設長は考えました。
「M事業所は介護職員だけで運営しているわけではない。生活相談員や栄養士、事務職員にも支給したい。」

そこで、生活相談員1名、栄養士2名、事務職2名の合計5名にも1000円ずつ支給することにしました。
※ここでは、わかりやすい額に仮定しています。

すると75600円-5000円となり、介護職員に支給する原資は70600円となります。単純に70600を15人で割ると4706円となります。

A施設長は思いました「介護職員、月額6000円賃上げといっても実際4706円に減っちゃったなー。みんなから不満がでないといいけど…」いかがでしょうか?
これが、〇〇円賃上げのはずが、実際支給されるまでに金額が減ってしまうロジックです。

今回は、常勤・非常勤関係なく、平等に介護職員数で割った例でしたが、支給対象者は事業所の裁量に任されているので、極端な話、非常勤職員には支給せず、経験年数の長い職員や介護福祉士に割合を多く支給する事業所さんも考えられます。

そういった事業所では6000円より多くの賃上げが図られることもあるでしょう。

つまり、「6000円」はあくまでも平均値的考え方となりますね。

また、この補助金は、介護職員等ベースアップ等支援加算(令和4年10月)に上乗せする形でとありますので、介護職員等ベースアップ等支援加算の算定は必須です。
ご自身の事業所は算定しているのか確認しておくと良いでしょう。

支給方法はどうなるの?支給はいつ?

さてさて、ニュースの金額通りにいかないロジックはわかったけどこの補助金はいつ私たちの手元にくるの?との現場の声が聞こえてきますね。

結論としては、「2月から6000円アップ」は、実際は「4月に一時金が支給され、4月の基本給若しくは手当でそれぞれの事業所の裁量でのベースアップ」という形となるでしょう。

そのようになる理由を下記で説明します。

支給額の2/3以上は介護職員等の月額賃金の改善に使用すること

要件をよくみてみると
「賃上げ効果の継続に資するよう、補助額の2/3以上は介護職員等の月額賃金の改善に使用することを要件とする。(4月分以降。基本給の引上げに)」とあります。

また、
「賞与や超過勤務手当等の各種手当への影響を考慮しつつ、就業規則(賃金規程)改正に一定の時間を要することを考慮して、令和6年2・3月分は全額一時金による支給を可能とする。」とあります。
※要件:厚生労働省令和6年2月からの介護職員処遇改善支援補助金補助金の支給方法は、下記3パターンが考えられます。

①月額の基本給に上乗せ
②毎月支払われる手当
③一時金(賞与=ボーナスのようなもの)として支給

皆さんは、就職する事業所の求人広告を見る時どこに注目されますか?
恐らく、他の職種や他の介護事業所と比較するのは基本給ではないでしょうか。

本来、処遇改善加算を基本給に上乗せしていれば、求人広告でも見栄えが良くなるのですが、実際は手当や一時金で支給しているパターンが多いです。
なぜなら、基本給に上乗せした場合、賞与を支給する事業所であれば、賞与は基本給×〇ヶ月となりますのでその額にも影響してしまうため、影響範囲が広くなり対応が複雑になってしまいます。

また、経営者が警戒している点があります。
それは、「処遇改善加算はあくまでも加算であり、絶対ではない」という点です。
もちろん可能性は低いですが、万が一処遇改善加算が減額若しくは終了となった場合、基本給を下げることはできませんので処遇改善加算の増額分は事業所の持ち出しで補填しなければなりません。
そのため基本給に上乗せしないケースが多いのです。

そもそもこの介護職員処遇改善支援補助金は、他業界に比べ介護職員の処遇が上がっていないために人材流出が生じてしまったことを踏まえ、閣議決定された取組です。
そのため、基本給が上がらず、求人を見て就職したい方が増えないという点や人材定着に繋がらない点という点を考慮する必要があります。

上記理由から、厚労省は「補助額の2/3以上は介護職員等の月額賃金の改善に使用することを要件とする。」という文言を入れているということです。

基本給の変更は4月でないと難しいため、4月に一時金で支給する

A施設長は上記要件を見て、こう思います。
「月額賃金改善への使用が要件とのこと…。理由はわかるんだけど、うちの昇給は4月の年度初めだし、2月からの年度途中なんで難しいよな…。
あっ、でも令和6年2・3月分は、全額一時金による支給を可能とする。と書いてある!では、とりあえず、2・3月分はまとめて4月に一時金で支給することとして4月からどうするか考えよう。」

ということで、恐らく多くの事業所では同じような状況と予想しています。
そのため、皆さんのお手元には4月に一時金として支給されるケースが多くなるでしょう。

まとめです。
介護職員処遇改善支援補助金の「2月から6000円アップ」は、
実際は「4月に一時金が支給され、4月の基本給若しくは手当でそれぞれの事業所の裁量でのベースアップ」という支給となるということです。

過去の取り組みも含め、こちらもまた漠然とした感じになりそうですね。

●6月以降は、処遇改善加算が改定される

A施設長は思いました。
「なんだかまたみんなに説明しにくいなー…。ちゃんと要件通りにはやっているんだけど…。あれ、でも要件に「介護職員処遇改善支援補助金の対象期間は、令和6年2月~5月分の賃金引上げ分(以降も、別途賃上げ効果が継続される取組みを行う)」て書いてある。6月以降はどうなるんだろう…」

ということで、6月以降は2024年度の介護報酬改定があります。
介護報酬の改定率は+1.59%で、内訳としては 介護職員の処遇改善分として+0.98%、その他改定率として+0.61%となります。
介護職員以外の賃上げに関してはその他改定率の部分で、賃上げ税制を活用しつつ処遇改善を実現できる水準とのことです。
※要件:厚生労働省介護報酬改定について

処遇改善加算の変更に関しては、下記記事で解説しますのでご活用ください。

関連記事:【2024年介護報酬改定】処遇改善加算の1本化!算定要件の変更点は?|介護職員等処遇改善加算 | ささえるラボ

https://mynavi-kaigo.jp/media/articles/1137

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