新聞を一部 “逆さ読み” してみると、 記憶力がアップ!?
ゲストは、1万人以上の脳を診てきた"脳の名医" 脳神経外科医・石川久先生でした。
新聞を読むという行為が、認知症の予防に効果的?
2016年に行われた日本の大規模高齢者調査によると、新聞を「読んでいない人」は「読んでいる人」に比べて、1.5倍も認知症になりやすいというデータが示されています。石川先生もこれまで多くの患者さんの脳を見てきた中、新聞を読んでいる人の方が、認知症の進行がゆるやかだったり、新聞を読んでいない人と比べて、認知症の発症年齢が高いことに気づいたそう。
Q.なぜ、新聞である必要があるのでしょうか?
新聞には政治・経済・スポーツから料理の作り方まで多種多様な情報がいっぱい。それらの中から、「いる情報」「いらない情報」をふるい分ける時に、脳がフル回転します。また、写真や映像、イラストから得た情報は右脳に直接送られるが、左脳がほとんど使われない。文字を読むことで脳全体をまんべんなく働かせることができます。
Q.新聞を読むことでどんな能力を鍛えることができるのでしょうか?
新聞を読むと、少し前のことを思い出す短期記憶力、集中力、注意力、基礎思考力、意欲など、5つの脳の力と書いて「脳力」を鍛えることができます。また、新聞は“ながら”では読めないので、新聞を読むことは、"老けない脳"を手に入れる最適な脳活であると考えています。
石川先生に新聞を活用した具体的な脳活法
記憶にとどめておきたい記事は、新聞を反対に持って上下逆さに読んでみる!
新聞をいつも読んでいるときのように広げたら逆さに持ち替えて、それを読むだけ!
スー・近藤「普段と比べて読みにくいし、ものすごく神経を使う!」
文字を逆さまにして読むことは、左脳と右脳の両方を活性化させます。言語処理担当の左脳は逆さの文字を理解するために働き、目から入った情報の処理を担当する右脳は、逆さ文字を認識するために働きます。また、普段上から下に読んでいるものを、下から上へ読むと、多くの機能をつかさどる側頭葉という部位に負荷がかかります。こうすることで、脳の記憶に残りやすいというメリットもあります。記憶にとどめておきたい記事こそ、逆さ読みをするというのも有効です。(ただし、長時間行うと脳や目もくたくたになってしまうので、逆さ読みは1日5分程度にとどめてください。)
記事の中に人物名が出てきたときには、顔を思い浮かべる
新聞の文字を読むとまずは言語処理を担当する左脳が働きますが、右脳はあまり活動していません。認知症を遅らせるには、右脳も左脳もバランス良く活性化させることが大切です。記事の中に出てきた人物名から「この人、どんな顔をしていたかな?」と考える時、過去の記憶を引っ張り出して顔を思い出そうとするのですが、ここで右脳が使われて、さらに、想像力も鍛えることができます。一般的な新聞には、少なくとも一紙に数百人の人名が載っていると言われているので、これを活用しない手はありません。
Q.どうしても顔が思い出せない!あるいは、そもそも顔を見たことがない!という場合はどうすれば?
結局思い出せなくても、じっくり考えて過去の記憶を探すだけで、意欲が鍛えられるので大丈夫です。顔を見たことがない場合は、検索などで調べることをオススメします。そこで新たな知識を得た時、脳は大きな喜びを感じて、ますますやる気になります。
新聞のレシピ欄を使った“エア料理”で脳を刺激しよう!
献立を考え、冷蔵庫の食材をうまく活用して、調理、盛り付けなどをするのは、脳をフル回転させる必要があるので、日々、料理をする人はそれだけで脳を上手に使っていると自信を持ってOK。 とはいえ、今日は料理したくないな~とか、時間がないという人も...。そんな時おすすめしたのが新聞のレシピ欄を使った「エア料理」 「魚をひらく」と書いてあれば、魚をさばいている自分をイメージするなどして、盛り付けまで頭の中で描くと、想像力を駆使するので脳の様々な部位に刺激を与えることがでます。
Q:新聞を読むのに最適な時間帯は?
1番お勧めするのは朝。脳が元気で集中力の高い時間に農活として使っていただくと非常に有効です。また、寝る前も記憶に定着しやすい時間帯なので、効果的です。電子版の新聞でも効果はあるとのことで、普段読まないジャンルの記事にも少しずつ挑戦して視野を広げると、新しい知識が入ってきて脳が喜びを感じるとのこと。
集中力低下は改善できる
50代になると「何を話そうとしたか忘れる」という経験をする人が増えますが、これは基本的に集中力の低下が原因だそうです。集中力には「記憶の網」と「記憶の引き出しの潤滑油」という2つの役割があり、集中力が下がると記憶の網の目が広がってしまい、情報が抜け落ちてしまいますが、注意力や集中力は戻すことが可能だそうで、例えば、ガスコンロの火を消す時に逆回しにするなど、普段と違う動作をすることで脳に記憶として残りやすくなるとのこと。脳の健康維持には新聞を活用するだけでなく、ラジオなどを聴く際も、面白いと思った内容をメモしたり、自分なりの意見を口に出したりすることが効果的、ということでした。
■ 脳神経外科医・石川久
国際医療福祉大学三田病院脳神経外科に勤務。手術やMRIの画像診断などを含め、1万人以上の脳を診てきた"脳の名医"としてテレビ出演や医療監修など、様々なメディアで活躍中。『最近、 「あれ」「それ」が増えてきた人のための70歳からの脳が老けない新聞の読み』(アスコム)好評販売中。
(TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』より抜粋)