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劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』脚本・櫻井武晴インタビュー②

Febri

TOPICS2025.05.20 │ 12:00

劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック)』脚本・櫻井武晴インタビュー②


『名探偵コナン』の劇場版最新作『名探偵コナン 隻眼の残像』が現在絶賛公開中だ。メインキャラクターとなる長野県警の大和敢助と上原由衣は第13作『漆黒の追跡者』以来15作ぶり、諸伏高明は今回が劇場版初登場と、根強い人気を誇る長野県警にスポットが当たっているのが特徴だ。今回は脚本を担当する櫻井武晴さんをお迎えして、企画の発端からキャラクターの見せ方などの脚本術、本作の見どころや今後の野望まで、幅広い角度で話を聞き、全3回でお届けする。第2回は、本作のもうひとりのキーマンである毛利小五郎の魅力について。

取材・文/岡本大介

※本記事には物語の核心に触れる部分がございますので、ご注意ください。

『名探偵コナン 隻眼の残像(フラッシュバック) 』インタビュー_TOPICS櫻井武晴脚本家

毛利小五郎は懐が広くて、かっこいい

――「長野県警」の3人に加え、今回はさらに毛利小五郎もクローズアップされていますね。
櫻井 これには理由があって、当初のプロットでは今よりもっと公安が前面に出て暗躍する方向性だったんです。公安を取り扱う際はいつもそうなんですけど、「闇」を際立たせるためには「光」が大切で、それはつまり捜査一課のキャラクターや動きをしっかりと見せる必要があるんですね。そうなると、捜査一課と相性のいい小五郎は何かと使い勝手がいいので、「ぜひ出したい」と僕から提案しました。なので、そもそもは「絶対に小五郎を活躍させたい!」というよりは、どちらかといえば必要にかられてという感じでしたね。ただ、打ち合わせを重ねるうちに敢助と由衣のエピソードが広がっていって、逆に「公安の暗躍」の比重が弱まっていったので、それに合わせて小五郎の活躍も増えていきました。

――結果として、いつもとは違うカッコいい小五郎が描かれました。
櫻井 そうですね。露出が増えたからには、彼の魅力をしっかりと描きたいなと思いました。

――櫻井さんは、どんなところが小五郎の魅力だと思いますか?
櫻井 僕は基本的に小五郎はすごくかっこいい男だと思っています。まず、コナンのような得体の知れない子供を預かっているじゃないですか(笑)。いくら阿笠博士の親戚の子だと聞いても、それってなかなかできることじゃないですよね。小五郎にはそういう懐の広さがありますし、大切な人を守るためには己を顧(かえり)みなかったりと、そういうところは際立っていると思います。今回は、小五郎のそんな一面をしっかりと強調するために鮫谷(さめたに)という旧友を登場させました。

――PV映像の小五郎の「遊びじゃねえんだ!」というセリフだけで、真剣さとカッコよさが伝わってきます。
櫻井 小五郎って、基本的にいつもコナンのことを子供として扱っていて、事件には関わらせないような振る舞いをしているんですけど、今回のこのセリフは普段のコメディリリーフ的な雰囲気は一切なくて、100%本気なんですよね。たったそれだけのことで、いつもとは違うカッコ良さが出るのが小五郎の凄いところですよね。

今回の小五郎は「半覚醒」。完全覚醒するとコナンが光らない!?

――何気に小五郎は、スペックも高いですよね。
櫻井 そう思います。柔道は達人レベルだし、射撃もトップクラスなんですよね。いつもはわりと格闘面で優秀さを発揮することが多かったので、今回はあえて射撃の腕前を見せるなど、その辺りはひと工夫しました。

――さらに今回は推理力も発揮しました。
櫻井 小五郎って、推理力がないわけじゃないんですよ。セッカチというか、結論を早く出しすぎるせいで間違うことが多いだけで、状況によってはコナン並みの推理力を発揮するエピソードもあるんです。とくに今回のような、自分に近しい人が巻き込まれた事件の場合はかなりの推理力を発揮することも多いのですが、あまり冴えわたるとコナンの出番を奪いかねないので、「半覚醒」くらいに留めています。そもそも僕が最初に書いた脚本では「眠りの小五郎」のスタイルだったんですよ。でも、青山先生からの提案で変更して、それで今のかたちになっています。おかげで小五郎の主人公感がより増したなと思います。

――コナンがいて、さらに長野県警の3人もいることを考えると悩ましいですよね。
櫻井 そうなんですよね。長野県警の3人もなかなかのキレ者揃いですからね。そのうえで小五郎まで名探偵になってしまうと収拾がつかないんですよ(笑)。この5人の推理力のグラデーションをどうつけるか、どう見せるかはけっこう悩みましたし、大変でした。もちろん、主人公はあくまでコナンですから、そこはしっかりと光を当てつつ、なんとかみんなの持ち味が出るように工夫しましたね。

「大人の警察ドラマ」を描くために現実に即した舞台装置に

――長野県警の3人のキャラクター性もあって、今回の劇場版は重厚な人間ドラマが光るシナリオになっています。
櫻井 第1回のインタビュー記事でも少し話に出ましたけど、もともと「大人の警察ドラマ」が好きなので、長野県警を取り扱うのであれば、そういったものを書きたいという気持ちがありました。あと、これは前提の話ですけど、県警や公安のお話を書く以上、突拍子もない描写はできないということもあるんです。

――どういうことですか?
櫻井 たとえば『黒鉄の魚影』では潜水艦や「パシフィック・ブイ」という架空の海洋施設が登場しますけど、これは黒ずくめの組織が絡む話だからこそできる仕掛けなんですよね。架空の組織の話であれば、ファンタジックな飛び道具を出しても全体としてちゃんと整合性が取れるんです。逆に、県警や捜査一課、公安などは実際に存在する組織ですから、登場する技術や施設も現実に即していることが重要なんですね。今回の劇場版でも、人為的に雪崩(なだれ)を起こす方法は「アバランチコントロール」という実際に存在する技術ですし、天文台のレーザー技術も同様です。もちろん、エンタメ作品なので、厳密にいえばファンタジーの要素も入っていますけど、このくらいの味付けならOKという線引きがあるんです。

――登場する組織によって線引きがあるんですね。
櫻井 とくに明文化されていたり、チームで共有しているわけではないので、これは僕のこだわりと言うべきかもしれませんけど、でもわりと大切にしているポイントです。

<!--後編(③)は5月21日(水)公開予定-->後編(③)は5月21日(水)公開予定作品情報

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©2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

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