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祝・JR東日本「高輪ゲートウェイシティ」まちびらき 鉄道ファン目線のサイドストーリー(東京都港区)

鉄道チャンネル

今回先行開業した「ザ・リンクピラー1サウス」(左)と「同ノース」(右)。夕景は高輪ゲートウェイ駅を挟んだ両翼のように見えます。JR東日本は2026年春までのグランドオープンを予定します(写真:高輪ゲートウェイシティオフィシャル)

テレビは2024年3月25日の夕方ニュース、新聞は翌26日朝刊で一斉に大きく取り上げられました。3月27日にまちびらきを迎えたJR東日本の「TAKANAWA GATEWAY CITY(高輪ゲートウェイシティ)」。

敷地面積約7万4000平方メートル、4棟の高層ビルと6階建て文化創造棟全体の延べ床面積約84万5000平方メートル、総事業費約6000億円。見出しを拾い読みすれば、「最先端のまちに」、「人とロボットが共存する複合都市」、「〝国内最大級〟まちびらき」のフレーズが踊ります。

確かに、2025年の鉄道界を見渡した時に最大級のニュースなのは間違いありません。しかし一方で、「鉄道会社発のニュースでも、鉄道のニュースなの?」の疑問が頭をもたげます。

本コラムはゲートウェイシティを訪れる際の副読本にしていただければと、鉄道ファン目線の注目点をサイドストーリー風にまとめました。

(JR東日本の新しいまちづくりの考え方は2024年11月の筆者コラムで詳述しています)

【参考】来年3月開業、JR東日本の「高輪ゲートウェイシティ」を深読みすれば(東京都港区)【コラム】(※2024年11月掲載)
https://tetsudo-ch.com/12986367.html

高輪築堤生みの親は大隈重信

ルーツは1930年開設の田町電車区。東京都内最大規模の国鉄車両基地でした。JR東日本は地域再開発に当たり、東海道線、山手線、京浜東北線の線路を東側に寄せて、用地を生み出しました。玄関口の新駅「高輪ゲートウェイ」は2020年3月、田町~品川間に開業しています。

一帯で話題になったのが「高輪築堤」。JR東日本の最初の発表は2020年12月です。「品川開発プロジェクト(当時のプロジェクト名です)計画エリアで、明治初期に鉄道敷設のため東京湾上に建設された構造物『高輪築堤』の一部が出土した」が内容です。

高輪築堤は家並みが建て混んでいた田町・品川界わいで、鉄道局が地上への線路敷設を断念。海面を埋め立てた築堤上に敷設した遺構とされます。

海面埋め立てを唱えたのは誰か。今回、鉄道史を見返したところ、早稲田大学の創設者・大隈重信ということが判明しました。

当時は大蔵省民部大輔(たいゆう。現在の財務次官です)。大隈は反対を押し切って鉄道用地を取得すれば、世間の反発を招くと考えました。一帯には兵部省(軍事防衛を担当していた行政機関)用地があり、兵部省は鉄道局の用地測量さえ拒絶したそうです。

こうして田町以南、海上に鉄道が建設されることになりました。しかし、結果オーライ。海上を直線状に走る鉄道はスピードアップが可能になりました。

今風にいえば〝海上を進む映える鉄道〟は、明治の昔も同じ。「東京品川海辺蒸気車鉄道の風景」が残されました(錦絵は2024年11月の筆者コラムに掲載しています)。

高輪の過去から未来までを映写

ここから高輪ゲートウェイに話を飛ばし、鉄道ファン向けビュースポット。地下2階の「未来体験シアター」です。来場者を囲むように広がる半円形のスクリーンに、高輪の過去・現在・未来が映し出されます。

ジェイアール東日本企画(jeki)が制作した、AR(拡張現実)ライク映像は7分間。明治の陸蒸気に始まり、高輪ゲートウェイ駅を走る歴代の山手線電車が登場します。

通常は撮影禁止ですが、許可をいただいて名シーン3景を撮影しました。見学会では多くのマスコミがスルーでしたが、鉄道ファンの皆さんはぜひ足を運んでみてください。

山手線3景。開業時に新橋~横浜間を走った1号機関車。イギリスから輸入された5形式10両のSLの一つ。AR映像では回転する動輪がリアルに迫ります(未来体験シアターで許可を得て筆者撮影)
山手線3景。山手線といえばこの車両という方がいまだに多い103系電車。試作車は1963年に登場。現在まで続くウグイス色の基調色はこの車両で始まりました(未来体験シアターで筆者撮影)
山手線3景。国鉄末期の1985年にデビューした205系電車。E231系への置き換えで2005年に同線から引退しました(未来体験シアターで筆者撮影)

まちびらき版の映像は2025年6月28日まで。当日整理券方式で、無料鑑賞できます。BGMは3人組のオルタナロックバンド「羊文学」。音楽ファンの方も要注目(要注耳〈?〉)かもしれません。

ARではもう一つ、「高輪リンクスケープ」のプログラムも。指定スポットでQRコードを読み込めば、「築堤と機関車」、「タイムトリップ江戸・明治」、「未来のモビリティ」といった高輪の名シーンがリアルな動画で、スマホ画面に登場します。

ゲートウェイ駅から車両を見下ろす

鉄道ファン目線でもう1つ、高輪ゲートウェイ駅は車両基地に隣接します。出番を待つ車両群を上部から観察できます。

鉄道車両基地の多くは駅間。車両観察には最寄駅からの移動が必要になります。その点、高輪ゲートウェイ駅は目の前が基地。上野東京ラインを走るE231・E233系などが眺められます。

夕ラッシュに向けしばし休息のE231系・E233系(東海道、宇都宮、高崎線用。手前)とE501系(常磐線用。奥)(新設の高輪ゲートウェイ駅南改札から筆者撮影)

車両基地に隣接する駅で筆者が知るのは、いずれも千葉県内の総武線幕張本郷駅と京葉線幕張豊砂駅。高輪ゲートウェイも含めた3駅の共通点は? 車両基地が先にあって、そこに新駅が後から開業したという点です。

空飛ぶクルマは2028年度就航!?

さらに未来の鉄道といえるのか、いえないのか。ゲートウェイシティ1階には空飛ぶクルマの3分の1サイズ模型が展示されます。

運航開始は2028年度予定。見学会で活用方法を質問したのは自動車系メディア。航続距離400キロ程度で、JR東日本は外国人VIPを意識したプレミアムツアーなどを考えるそう。「空飛ぶタクシー」にも挑戦したいとのことです。
空飛ぶクルマ開発に取り組むのは、アメリカ・カリフォルニア州のシリコンバレーに本社を置くASKA(アスカ)。アメリカの会社ですが、会長は日本人女性で2018年創業のスタートアップ(ベンチャー)企業です。

スタートアップつながりで、もう一題。高輪ゲートウェイ駅前広場には、無人モビリティが走り回ります。開発したのは大阪市北区に本社を置くゲキダンイイノという会社。筆者は最初、ゲートウェイシティのシアターに出演する劇団と思ったのですが、その正体は自動走行モビリティを開発するスタートアップ企業でした。

昨秋の筆者コラムで触れた通り、高輪ゲートウェイは自然に人が集まるターミナル駅ではありません。なるべく多くのパートナー企業や研究機関を集めて、人の交流をつくり出すというJR東日本の戦略が見て取れます。

まちびらきコラムは以上。ショップやオフィスはスルーしましたが、飲食店なども話題満載です。機会があれば、ぜひ訪れてみてください。

新設の南改札の改札機1基はスケルトン構造です(筆者撮影)

記事:上里夏生

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