「やっぱり“おおきに~”とか言うの?」芸妓の世界ならではの言葉遣い2選
札幌で芸妓をしております、「こと代」と申します。 「芸妓」といえば、京都のイメージが強いと思います。
しかし北海道にも開拓期から道内各地に花柳界がございました。
現在は札幌のみになってしまいましたが、「さっぽろ 名妓連」には11名の芸者衆が所属し、毎日お稽古、お座敷などで活動しております。
連載「さっぽろ芸妓日記」では、札幌の花柳界の歴史や 文化などをご紹介していきたいと思います。お付き合いのほど、どうぞ宜しくお願いいたします!
「やっぱり“おおきに~”とか言うの?」
“京都の芸舞妓さん”と聞くと、はんなりとした京ことばをイメージされる方が多いのではないでしょうか?
実際に札幌で芸者をしていても、お客様に「やっぱり“おおきに~”とか言うの?」と聞かれることも多いんです。
残念ながら、札幌は特別な言葉遣いや方言を使うわけではなく、標準語で話しております。
ですが、この世界に入門してから「これはこの世界ならではの独特な言葉遣いだな~」と感じたことがいくつかありますので、今回はそちらをご紹介したいと思います!
①目上の方を『お姐さん、お兄さん』と呼ぶ
これは、どの花柳界でもそうかもしれません。
「姐さん、おはようございます。」
「姐さん、ありがとうございます。」
このように呼ぶことが今は体に染み付いているので、プライベートで「姐さん!!」と呼ぶと周りの方に変な顔をされることもあります。笑
お客様のことも、「お兄さん、兄さん」と呼ぶことが多いですね。
(こちらは厳密な決まりはありませんが)
ちなみに、京都の花柳界では「〇〇さん姉さん」と、お名前の後に“さん”を付けて呼ぶ決まりがあるらしいです。
札幌では“さん”はつけず、例えば「はな恵姐さん」などと呼びます。
ねえさんの表記も「姉さん」ではなく「姐さん」になります。(細かいですよね~)
②『お先です』をよく使う
この世界はなんでもお姐さん優先です。
例えば、皆でお食事をいただくときや、お座敷でお客様からお飲み物を勧められたとき。こういうときは、お姐さんより先に口を付けては絶対にいけません。
お姐さんが召し上がったな、というのを確認してから後輩はいただきます。
でも、そうもいかないときってありますよね。
そういう場合は「ことちゃん、お先にどうぞ」なんて言ってくださるんです。
お許しをいただいた場合は、「姐さん、お先です」と言ってから口をつけます。
他にも、お客様からいただいたお土産を皆で分けるとき、もし先に選ばせていただいたら「姐さん、お先でした」と言いますし、お座敷でお姐さんより先に踊らせていただいたときも言いますね。
以上が、私が「独特だなぁ」と思った札幌花柳界ならではの言葉遣いでした。
さて、夏のイベントのお知らせです!
数年前から参加させていただいております、「すすきの祭り」への出演が今年も決定いたしました!
2025年8月8日(金)午後6時から、特設ステージにてさっぽろ名妓連の芸者衆が踊りの披露をいたします。
今年は揃いの浴衣で涼やかに登場いたします!
詳細は公式ホームページにてチェックをお願いいたします。
ちなみに今年のすすきの祭りのポスターには、去年出演させていただいた、初日に行われる“花魁道中”の写真が使われています。
こちらも華やかで歴史あるイベントですので、是非合わせてお楽しみくださいね!
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連載さっぽろ芸妓日記」
文:さっぽろ名妓連 こと代
編集:Sitakke編集部IKU
<「こと代」プロフィール>
札幌生まれ、札幌育ち。2018年にお披露目して以降、現在も最北の花柳界「さっぽろ 名妓連」で芸妓として活動中。開拓期から続く北海道の花柳界文化をたくさんの方に 知っていただくべく日々奮闘中。飼い猫達と遊ぶことが日々の癒し。
※掲載の内容は記事執筆時(2025年7月)の情報に基づきます