【小児眼科専門医監修】子どもの近視、どうすればいい? 進行を抑える最新の治療とは
文部科学省の学校保健統計調査(令和5年度)によると、裸眼の視力が1.0未満の児童生徒の割合は調査を開始した昭和54年度から一貫して増加傾向にあり、小・中・高等学校では過去最高を更新しました。
子どもの近視について、小児眼科・斜視・眼瞼(がんけん、まぶたのこと)の専門医であるCS眼科クリニックの宇井牧子先生に伺いました。
子どもの近視の進行を抑えるには?
近視はどんな症状?
近くのものにピントが合って、遠くのものがぼやけて見える状態が近視です。子どもの近視の原因の多くが、眼軸長という目の奥行きの長さが伸びすぎることで、ものを見るときにピントが合わなくなって近視が進行します。残念ながら、一度眼軸長が伸びると、もとに戻ることはありません。
近視は眼鏡などで矯正して視力を出せばよいと考えられてきましたが、さまざまな疫学(病気に罹患する法則を研究する学問)によるデータから、近視の程度が高いと、緑内障や網膜剥離など、将来の目の病気のリスクを高める可能性があることがわかってきました。
近年、子どもの近視は世界中で増えており、特にアジアの先進諸国では多い傾向があります。近視の発症の低年齢化も進んでいるので、早期の対策が必要です。お子さんが目を細めてものを見たり、ものに顔を近づけて見たりするなど、気になる様子があれば、気軽に小児眼科に相談しましょう。
どうして近視になるの?
近視になる原因には遺伝や環境がありますが、近年の近視の増加は、環境の影響によるものが大きいと考えられています。
まず、近くでものを見ることが習慣化すると、その状態でピントが合うように眼軸長が伸びるので、近視が進みます。スマートフォンやタブレットを見るときは30cm以上離して、長時間見続けないように心がけましょう。画面の小さなスマートフォンは特に目を近づけて見てしまうので注意が必要です。スマートフォンの画面は、タブレットやテレビにつないで、できるだけ大きな画面に映して、離れて見ることをおすすめします。
また、屋外で自然光を浴びて遊ぶ時間が長いお子さんの方が、近視になるリスクが小さいという調査結果が報告されています。暑い日には熱中症や紫外線などの影響に配慮しつつ、1日2時間を目安に外遊びができるとよいですね。2時間は難しくても、できるだけ多くの時間を屋外で過ごしたほうが、近視を抑えるためにはよいでしょう。
近視になってしまったら?
視力の矯正は視力低下の原因を調べてから
視力検査で視力低下や近視と言われたら、まずは小児眼科で視力低下の原因を調べましょう。目の使いすぎによる一時的な近視状態で治療によって回復することもあれば、思わぬ病気がかくれている場合もあります。
中学生になるまでは眼鏡による矯正をおすすめします。一般的にはコンタクトレンズは中学生以降、お子さんが自分で管理できるようになってからがよいでしょう。コンタクトレンズは角膜(黒目)の部分に直接レンズが接触するものです。不適切な使い方によって、目の乾燥や感染症など、目の障害が起こることもあるので注意が必要です。例えば、スポーツの大会など、限定的にコンタクトレンズを使用する場合も、必ず定期的な診察を受けることが必要です。
また、近視と診断されてからも、屋外で過ごす時間を増やしたり、部屋に自然光を採り入れたり、近いところを見る時間を少なくしたりと、近視の進行を遅らせる工夫を続けるようにしましょう。
近視の進行を抑える治療とは?
近視の進行を抑える治療が広がり、効果を上げています。主に目薬を使った治療や、寝るときに装着するナイトコンタクトレンズを使った治療などが行われています。どちらの治療も、近視の強さや目の状態によって適応となるかどうか詳しい検査が必要になります。自費診療である点や、定期的な受診が必須である点も考慮が必要です。
[目薬による治療]
点眼によって眼軸長の伸びを抑え、近視の進行を緩やかにする治療。1日1回、寝る前に点眼する。近視の進行が完全に止まるものではなく、継続して使用することで、近視の進行を軽減することを目的とした治療。近視傾向が認められたら、できるだけ早く始めることで、効果が上がる。
[ナイトコンタクトレンズによる治療]
寝ている間に、特殊な形の高酸素透過性ハードコンタクトレンズを装着することで、角膜の形を変化させて近視を矯正する治療。補正した視力は一定時間維持されるので、日中は裸眼で過ごせるのが特徴。保護者による消毒やつけ外しの管理が必要。
今回は、子どもの近視について、宇井牧子先生に伺いました。
3歳になると視力検査ができるようになるので、小児眼科で詳しくお子さんの目と視力のチェックをし、定期的に診療を受けることをおすすめします。