大丈夫、何度でも伝えるから。
「私たちの未来は、私たちで作る!」
「サステバ」は、あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、
もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組です。
今回も、リスナーのみなさんからいただいたメッセージからご紹介♪
私の85歳のおばが、今年の夏から特別養護老人ホームに入所しました。
施設主催の夏祭りがあり、数年ぶりにおばに会いに行きました。
車いす姿でニコニコしながら迎えてくれて、私のことがわかるかと話したら「わかるよ~」と言ってくれました。脳梗塞の影響で言葉がたどたどしく、認知症も進行しているようでしたが、小学校低学年の自分がおばの家に遊びに行き、帰りの駅の改札で見えなくなるまで手を振ってくれたおばの姿が思い出され、「ああ来てよかった」と思いました。
そんなおばが「忘れていくことがこわいんだよ。」と言ったので「忘れてもいいよ。何度でも伝えるから。」と返したら、うん、うんと頷いてくれました。
帰りの電車の中で、大事な人の顔や名前、楽しかったこと、自分のことまでを忘れてしまうと考えたら、確かにこわいよな、単純にこわいよなと思ったのです。
「こわいよね。」うん、うんと頷けばよかったと思いました。
正解なんかないのは、わかっているのですが、みなさんならどう思いますか?
小泉:うん、なんか素敵なお手紙ですね。そうですか。でも、「忘れてもいいよ、何度でも伝えるから」って返されたら元気になりそうじゃない?
大石:うん。
小泉:私は正解だった気がしますけど。忘れてしまうことって怖いって思うけど、振り返ってみると、同じ場所に同じ時間に友達といたけどその時の思い出を語ると全然違かったりしませんか?
上村:あります。
小泉:「えっ?私それ知らない」って。自分が思っていた、美化された思い出と、友達が感じた思い出が全然違ったりするから。自分が大事にできればいいんだろうなって思う。もし、おばさまが忘れてしまっても、おばさまと自分の思い出をちゃんと覚えていてお話しできたらいいよね、って思いました。
大石:うん。自分が覚えていることを伝える。
小泉:そうそう。
上村:たしかに、他の人が覚えている限り、その人たちとの関係性は続いていきますし「忘れてもいいよ」という言葉は「あなたを覚えているわたしが、ここにいる」という関係への信頼の表明でもありますよね。
小泉:そう思います。
上村:そして、特に認知症ケアの現場では、失われた過去を取り戻そうとするよりも、今ここでの感情の共有が心の安定をもたらすとも、言われています。「忘れてもいいよ」と言えるのは、過去よりも「今、あなたといること」を大事にしているから、ということでもありますよね。
小泉:そうだよね。私の母も、家で介護していた時にせん妄状態が続いて、初めて聞く名前の人の話をし始めたりして。しかも、どうやらその人がそこにいるようなの。
大石:はい。
小泉:おじとかおばが来た時に「〇〇さんって知ってる?」って聞いたら「いや、私も知らないわ」みたいな感じで。だから、そういうものを推理するのも楽しかったし。もしも、架空の人物として、頭がぼんやりしている中で母が物語を作っているんだとしたらすごいじゃない、って思ったりしたんです。
大石:たしかに。
小泉:だから、面白かったですけどね。どうですか、そういう経験はありますか?
大石:うちは、父が倒れて長く会話ができなくて。7、8年ですかね。その間、勝手な解釈で楽しんでましたけどね。いろいろと相談はするんだけど、話せないじゃないですか。だから、同意してくれたんだ、励ましてくれたんだ、って2人の関係性をポジティブに解釈。実際に本人がどう感じていたのかはわからないですけどね。
小泉:うちは、父は私が27歳の時に他界しているんですけど、癌で術後ちょっとぼんやりしていたみたいで、私が病室にいるとなにかを伝えたいんだけど、喉にチューブとかを入れていて喋れなかったんですよ。
大石:はい。
小泉:それで、紙と書くものを渡したら、まず丸を書いて数字を書いたの。だから、時計だと思って渡したら「違う」って。それで「全国の」って書いたんですよ。これ、テレビのチャンネルだと思って。私の仕事の心配をして「早く帰れ」って。時計だと思っていたものは昔のテレビのチャンネル。
大石:なるほど。
小泉:そんな時にも心配してくれるんだって思ったんです。
大石:言葉を交わさないけれども、伝わるものは深い感じがしますよね。
上村:でも、(メールをくれた方)心がとても美しくて温かい方なんだと思いました。
小泉:そうですよね。帰りの電車の中の時間を想像できたというか。素敵な方だと感じましたよ。
上村:いっぱい会いに行ってほしいですね。
小泉:そうですね。
ふるさと納税を活用した取り組み
「世田谷演劇カルチベート・プロジェクト」
番組後半は「世田谷演劇カルチベート・プロジェクト」を紹介♪
世田谷区による、「ふるさと納税」を活用したクラウドファンディング「せたチャレ!」を通じて寄附を募って、そこで集まった資金で、できるだけ多くの中高生に、生の演劇を観てもらおうという取り組みです。
プロジェクトが生まれるきっかけを作ったのは、きょんさん、小泉今日子さんのひとことでした!
「子どもたちの心をカルチベートする、心を豊かにするような、文化の支援が、日本でも、できたらいいな」
そんな一言に心を動かされて、実際に、プロジェクトを立ち上げたのは、下北沢で子育て支援を続けているグループ「北沢おせっかいクラブ」。
代表理事の斎藤淳子さんにお話を伺っています。
コロナがはじまって「食」の支援はものすごくいろんな補助金だとか、拡充されていったんですね。
そこでちょっと気になったのが…やっぱり、どうしても、体験をする子はいろんな体験ができるんだけど、おうちが大変だと、たとえば部活も親御さんの負担が多い部活は参加しにくかったり。
あとは旅行に行ったり、なにかを観にいったりとか、そういうことで、圧倒的に差があるなと日々の活動で感じていたので。それを感じていた時に、たまたま、おととしのいまぐらいに、下北沢のイベントで小泉さんとお会いして。
お声がけをしてお話をしたときに、今日子さんが「カルチベートチケットっていうものがあって」というお話をしてくださって。
私は、そこではじめて、「カルチベート」って言葉を知ったんですね。そこで具体的に出たのは、チャーリーとチョコレート工場の「ゴールデンチケット」みたいに、「チケットが当たった人には、素敵な封筒で、ご招待って出せるといいわよね」って。
今日子さんが、すごい目がキラキラキラっとお話してくださったのがプロジェクトの始まりです。下北沢っていう街がすごく多様で、いろんな人が交わっている街だなって、思っているんですね。
「この方は、いったい、何のお仕事をされているんだろうな」っていう大人がすごくたくさんいて、子どもたちにとっては、そういう多様な大人がいきいき歩いていることがすごくいいんじゃないかと思っていて。とくに演劇っていうのは唯一無二で、一回の公演が次はおんなじものがないし。今の子たちって、二倍速で観たり、飛ばして観たり、好きなものは何回も観たり。
あとは、一回観たら、「あなた、これ好きでしょ」って 次からどんどん向こうから与えられるのが日常。
演劇という濃密な空間を中高生という感受性が豊かな時期に観るって、大きな機会になるんじゃないかなって。
大人からは、そう思っています。
小泉:斉藤さんに取材に行っていたとは!笑
斉藤さんが具体的に動いてくださって、株式会社asatteと本多劇場グループの本多さんが協力する形で始めたもので。これは世田谷区限定のなんですけど、制作者の人たちにこの話をすると「知らなかった、でもまた世田谷でやる時はうちもやりたいです」って言ってくださったりして。だから、これをきっかけに各団体が独自にやってもいいことだよね、って。
大石:たしかにね。
小泉:あとは、全国に広まってもいいことだよねって思ってるんです。
大石:お子さん、どうでしたか?
小泉:私は、最近まで(下北沢で)やっていた「私を探さないで」で3日間で2人ずつお会いして。「普段テレビも観ない」っていう子もいたし、最後に来てくれたのは中学生と高校生の女の子だったんだけど、高校生の子は演劇部に入っていて、中学生の子も演劇をやっている子だったりとか。会社のメールに参加してくれた男の子のお母様からメールが来てまして。「子どもが帰ってきてからその日のことを話してくれて、すごく嬉しくて。大事な時期に何かを経験させることができたんだと思いました」って書いてあって。
大石:うん。
小泉:もしかしたら、この体験がその子の未来を変えるかもしれないじゃない。100人の中の1人でも変えられたら、すごくいい活動なんじゃないかなって。
上村:「世田谷演劇カルチベート・プロジェクト」プロジェクトは始まっていて、目標は 100 人ですが、すでに、20 人ほどの中高生が「演劇」を観ています。
「応援したい」と思ったら全国どこからでも、「ふるさと納税」の仕組みで寄附できます。寄附は税額控除の対象となります。世田谷区の「ふるさと納税」を活用したクラウドファンディング「せたチャレ!」での寄付、11 月 26 日までです。
小泉:ぜひ、お願いします。
大石:カニとか肉もいいけど、子どもの未来をね。
小泉:みんなの力でできたら、大人にとっても気持ちのいい行動なんじゃないかなって。
上村:斉藤さんのお話の中で出てきた「ゴールデンチケット」、まさにそれだなと思いました。
小泉:そうですね。大石さんとも、ライブの時に山形でやったし、来年のツアーでもやろうと思っているんですよね。若いみなさんをご招待してリハーサルも見てもらって。
大石:みんな目がキラキラしてね。
小泉:こっちが幸せになるような感じなので、自分たちのためにもやりたいですよね。勇気が出ますよね。
大石:こっちが勇気をもらう。
小泉:そうなんです。
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)