八王子の正統派フレンチ。手仕事にこだわる『ビストロ・ヴァガボンド』
ワインを片手に静かにおいしいものを食べたい雨の夜。小説のワンシーンのような隠れ家的なお店、『ビストロ・ヴァガボンド』さんに行ってきました。
おしゃれな三角屋根と丸窓の外観
八王子駅北口から西放射線ユーロードを進み徒歩7分。甲州街道に出る前あたりで後ろを振り向くと、この素敵な建物が見えます。三角の屋根に丸窓……まるで絵本の世界から抜け出たような、おしゃれな建物です。
お店はこちらの2階、入口は白と黒を基調にした看板が目印です。『VAGABOND(ヴァガボンド)』はフランス語で「放浪者、ひとところにとどまらない」という意味です。ホームページにあるシェフのメッセージも見ていたので、お話を聞くのが楽しみでした。期待が高まります。
店内に見えるシェフの思い
店内は期待通り、いや、期待を超えるオシャレな空間です。写真中央にある赤と黄色と青のポスターは『レイモン・サヴィニャック/Raymond Savignac』です。右には1950〜1960年代フランスの商業広告ポスター界で活躍した女性2人組『Lefor-Openo/ルフォール ・オプノ』が飾られております。
フランス料理にこだわり、フランス料理がもっと盛り上がり沢山の人が食べにくる料理にしたいという思いと通じるものがありますね。
お店をここに即決した理由の1つが、この窓だったそうです。取材途中から雨が降ってきたのですが、窓に当たる雨粒もなんだか舞台セットのよう。ゆっくり落ち着いて食べられる空間となっています。
メニュー
『本日のアミューズ』は、お通しのように全員に出されるメニューです。2軒目として来る方は、軽めのお食事としてのご利用も可能となっております。
こちらが取材時の「季節のおすすめ料理」メニューです。
グラスワイン880円から。シェフに予算と好みを相談すると、出してきてくれます。私はハウスワイン白をいただきました。香りもよく、のみやすくておいしかったです。
本日のアミューズ
『本日のアミューズ』(1280円)です。取材日は、『信州サーモンとつるむらさきのマリネ』と『自家製パンとリエット』でした。
サーモンにそえられている幸水梨のブリュノワーズは、食感が斬新で、レモンの爽やかな風味。白ワインによくあいます。つるむらさきのマリネをフレンチで食べるのは初めてでしたが、トロトロツルッとした食感との相性がよくとてもおいしい。
パンは全粒粉のパンとバゲット。自家製リエットともに、これだけでワインがすすみます。
スープ・ド・ポワソン(磯魚のスープ)
こちらは『スープ・ド・ポワソン(磯魚のスープ)』1280円です。濃厚で魚の出汁が味わい深く、磯の香りがする。初めて食べる味でした。
シャルキュトリーの盛り合わせ
『シャルキュトリーの盛り合わせ』2280円もいただきます。こちらはロースハム、パテ・ド・カンパーニュ、豚顔面の煮こごり、鶏白レバーのパテ、もち豚のベーコン、鴨の生ハム、イベリコ豚舌のスモークです。
シェフの手仕込みで作られたものが盛り合わせられています。ぜひお店で味わってみていただきたいです。また、こちらはおひとり様用をいただきましたが、おふたり様用や、お好きなもの二種で注文することも可能です。
トリュフのスクランブルエッグ
『トリュフのスクランブルエッグ』1780円は、一般的なスクランブルエッグの概念が覆える柔らかい口当たり。トリュフの香りが楽しめる贅沢で新しい一品でした。
フランス産ホロホロ鳥のバロティーヌ
『フランス産ホロホロ鳥のバロティーヌ』2780円です。ホロホロ鳥の胸肉がフォアグラで包まれている贅沢な一皿。つけあわせのお野菜は、懇意にしている八王子の農家さんから基本的に仕入れているとのことで、地元八王子の農家さんとともに盛り上がっていくといいですね。
外食業を盛り上げたい
店内では、フレンチ一筋の皆川裕輔さんがお一人で調理されていました。
ホームページにも、シェフみずからメッセージを書いてるように、フレンチに熱い思いが溢れているシェフ。ですが、「フレンチに最初からこだわりがあったのですか?」と伺うと、「最初はそんなことはなかった」そう。
新宿にあったフレンチの名店『Le coupe chou(ル・クープシュー)』(現在は飯田橋に移転)で修行を続けていたシェフがある日、「料理を自分でコントロールしている!」と感じてフレンチの面白さに目覚めたそうです。修業中は気骨のある仲間と切磋琢磨しながら高め合う、素晴らしい環境だったとのこと。
皆川シェフは「コロナ後に人出が少なくなった現在の外食業を、修行時代のような盛り上がりまで戻したい」「世界三大料理のフランス料理が、八王子では知名度が低すぎるのではないか?もっと啓蒙して盛り上げていきたい」と、とても情熱を感じました。
金土日にのみランチも営業されていて、次回はランチにも行ってみたいと思いました。『ヴァガボンド』という店名が意味する「ひとところにとどまらない」……上昇し続けたい、という思い、そして、料理の一品一品も挑戦を続けているような味が多いと感じました。料理は極めていくと、こだわりのある芸術作品に近くなるように思います。そして、我が家の子供にもこういう挑戦し続けているシェフの一品を食べてもらいたいな、と思いました。