『水野仁輔 システムカレー学』刊行記念 思い通りにカレーは作れる~水野仁輔さん実食付きトークイベントレポート
カレーの総合力を25年にわたって磨き続ける水野仁輔さんが、味・香り・色・形・テクスチャ―を自在にコントロールし、思い通りのカレーを作る術をまとめた最新刊『水野仁輔 システムカレー学』。この刊行を記念した実食付きのトークイベントが、大垣書店麻布台ヒルズ店にて開催されました。イベントレポートでは、当日の模様や水野さんから参加された方へのメッセージをご紹介します。
水野さん本人がつくったカレーが実食できる貴重なトークイベント!
材料を持ち込み、調理開始
水野さんはカレーのイベントを行ったり講演をしたりはしているものの、実店舗を出していないため、水野さんご自身がつくったカレーを食べる機会は大変貴重です。今回はイベント開始1時間半前に大垣書店麻布台ヒルズ店に併設されたカフェの厨房に入り、1時間ほどかけて新刊の表紙を飾ったオレンジチキンカレーとレッドチキンカレーを調理しました。
レッドチキンカレー
ゴールイメージ:赤褐色のソースは濃厚だがさらりとして、具以外は溶けている。
材料のデザイン:香味と深み重視のスパイス、酸味、甘味、コクを加える素材たち。
作り方のデザイン:炒めるときも煮るときもふたを利用して加圧し、素材を潰す。
オレンジチキンカレー
ゴールイメージ:コクとうま味、甘味、酸味、香りが融合する明るい色のカレー。
材料のデザイン:乳製品たっぷりでコクを生む。クセのある香りと酸味をぶつける。
作り方のデザイン:マリネして焼くという鍋の外で風味の核を決める設計。
カレーのおいしさを決定づける、「ゴールデンルール」を基に講演
イベントでは、水野さんが提案した、カレーの仕組みが分かる「ゴールデンルール」を基に、新刊のポイントやレシピがなくても理想のカレーをつくれる「システムカレー学」を1時間以上にわたり講演しました。以下最後の大切なメッセージを抜粋してお届けします。
料理上達のコツは「なぜ?」と「本当に?」を繰り返すこと
皆さんにおすすめしたいのは、とにかく「なぜなのか」っていうことを、常に頭の片隅に持っておいてもらうことです。「なぜか」を持って調理に臨むと、調理プロセスのあいだ、ずっと考えるので。
考えて調理すると、玉ねぎを炒めているとか、スパイスを入れて混ぜ合わせるみたいなことが「作業」にならない。「なんでここでスパイスを入れるんだろう」っていう、「なぜ」ということと向き合うことになる。考えながらつくっていくとどんどん上達すると思います。
何かしらのレシピを見ながらレシピのとおりに手を動かすというのは「作業」なので、そうするとなかなか上達は見込めないけれども、鍋中を見て「なんでこうなるんだろう」「次になんでこれをやるんだろう」と全部「なぜ」「なぜ」っていうのを考えながらやるととってもいいかなと。
それでも「なぜ」の答えが分からなかったときは、分かっていそうな人に聞いてください。こういう(『水野仁輔 システムカレー学』のような)本を読むのも良いし、自分よりも知っていそうだな、経験していそうだなという人に聞いてみてください。
聞いてみると、答えが返ってきますよね。答えが返ってきたときも大事ですよ。答えが返ってきたときに「あ~、なるほど~。分かりました!」というのはだめですよ。
答えが返ってきたら、「本当ですか?」って。言っちゃダメですよ!ケンカになるから(笑)。でも頭の中で「本当かな、それ」って絶対にまず、疑う。疑って、そうしたら今度その言われたことをやってみる、自分で。やってみると「本当だった!」っていう場合もあるし、「ピンとこないなぁ」みたいなこともあるわけですよ。それをずっと繰り返していくと、どんどんどんどん自分がつくっていることの意味が理解できるようになってくるので。
だから『システムカレー学』も多分ちょいちょいウソが入っていると思いますよ。水野が偉そうに「こうである」とか言っているけれど、「本当ですか?」と思ったほうがいいです。皆さんよりほんの少しはカレーのことを分かっているとは思うけれども。もっと詳しい人がいて、その人の言うことの方が正しい可能性もある。
だから「なぜ」を常に持って、料理に向かって、分からないことは聞いたり調べたりして、「なぜ?」と「本当に?」を繰り返すことをおすすめします。
お待ちかねの実食タイム!
皆さん口々に「おいしい」「おいしい」と声を上げ、2種類のカレーを全員完食。おかわりする方も!
女性にはコクのあるオレンジチキンカレーが人気、赤ワインの風味が効いたレッドカレーは男性に好評でした。
水野さん、おいしいカレーと熱い講演をありがとうございました!
水野仁輔(みずの・じんすけ)
カレーの人。AIRSPICE 代表取締役。1974年、静岡県生まれ。5歳の時に地元・静岡県浜松市にあったインドカレー専門店『ボンベイ』の味に出会う。以来、高校卒業まで通いつめた。大学進学で上京してカレー魂に火が付き、インド料理店で経験を積む。基本的なテクニックを習得して以降は、独学でカレーを研究し続ける。http://www.airspice.jp/