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【浜松市美術館の「躍動するアジア陶磁」展】 東南アジア、中国陶磁器が集合。ウサギ、象、テナガエビ…。動物デザインに託した思いとは

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は浜松市中央区の浜松市美術館で4月12日に開幕した特別展「躍動するアジア陶磁ー町田市立博物館所蔵の名品からー」を題材に。

国内最大級の東南アジア・中国陶磁器コレクションを有する町田市立博物館。2029年のリニューアルオープンに向けて休館している同館の所蔵品が、国内各地の博物館を巡回中だ。4~6月は浜松市美術館の順番。前漢から明までの中国と、中国の勢力の拡大縮小にともなって盛衰した東南アジア各国の焼き物がずらりと並んでいる。

出品約130点とともに、ベトナム、クメール、タイ、ミャンマーの各国がいかに中国の影響を受けたか、あるいはいかに中国に影響を与えたかが語られる。特に、窯業先進国中国の影響下で技術を確立したベトナム、9世紀に建国し独自の陶磁文化を発展させたクメール王国の作品は、このようにまとまった形で見る機会が少ないように思う。

総覧して感じるのは動物を模したデザインの多さである。ともに5世紀ごろに作られた中国「青磁天鶏壺」、ベトナム「青磁龍口水柱」は注ぎ口を鶏や龍の顔にしている。クメールの「灰釉兎形壺」(12~13世紀)のウサギの壺は、短い耳と微笑みをたたえた口元がかわいらしい。ベトナムの「青花象形水柱」(15~16世紀)はふくよかな象が鼻を振り上げる。クメールの「灰・黒褐釉人形水柱」(11~12世紀)は人間そのものを描いている。

宗教的な意味合いはもちろんだろうが、現代のわれわれが「ゆるキャラ」のぬいぐるみをめでるような感覚もあったのではないか。明らかに「表情」を作ろうとしている。

唯一の例外といえるのがベトナムの「白磁蝦耳水柱」(13~14世紀)だ。柔らかな曲面にテナガエビが張り付いている。顔を上げ、見る者を威嚇しているようにも見える。キャプションによるとベトナムでは高級食材らしい。桃色がかったエビは祝宴に集った人々の食欲をかき立てるのに一役買っていたに違いない。

(は)

<DATA>
■浜松市美術館「躍動するアジア陶磁ー町田市立博物館所蔵の名品からー」」
住所:浜松市中央区松城町100-1 
開館:午前9時半~午後5時
休館日:毎週月曜 、5月7日(水)。5月5日(月・祝)は開館
観覧料(当日):一般1300円、高校・大学生、70歳以上700円、中学生以下無料
会期:6月22日(日)まで

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