姉妹都市提携30周年 ディーニュ・レ・バン市代表団 9月来釜 市民らが歓迎の巨大アート制作
釜石市とフランスのディーニュ・レ・バン市は、姉妹都市提携から今年で30周年を迎えた。記念事業で9月に釜石市を訪問するディーニュ市代表団を歓迎しようと、釜石市民らが両市の絆を表す巨大アート作品(絵)を制作した。市では「ぜひ、多くの皆さんで代表団を歓迎していただければ」と呼び掛ける。
巨大アートは縦3.6メートル、横5.4メートル。防炎シートをキャンバスに描いた。ディーニュ市を象徴するモチーフとしてラベンダーとアンモナイト、釜石市は市の花・ハマユリとラグビーボールを配した。真ん中にはフランス南部にある世界遺産「アヴィニョン橋」とフランス、日本の両国旗が描かれた。
10日は大町の市民ホールTETTO前広場で、色塗り作業が行われた。市広報などで一般市民に参加を呼び掛けたところ、午前と午後合わせて約50人が協力。テント用の水性塗料を使って、絵や文字の色塗りに精を出した。
甲子中2年の白石恋菜さんは昨年、市の中学生海外体験事業でフランスを訪問。ディーニュ市でホームステイし、現地の同年代の子どもらと交流したほか、姉妹都市提携のきっかけとなったジオパーク資産・アンモナイト化石群も見学してきた。今回はディーニュ市の人たちを“お迎え”する番ということで、「協力できることをうれしく思う。この絵をきっかけに多くの人がディーニュ市に興味を持ってくれたら」と期待。代表団には「震災から立ち上がり市全体で復興に向かったことで、ラグビーワールドカップ(W杯)ができるまでになったこと、世界遺産(橋野鉄鉱山)もある鉄のまちであることなど、釜石の魅力をたくさん知ってほしい」と願う。
東京都から帰省した同市出身の女性(43)は、中学生の時にディーニュ市に送る版画作品を制作し、感謝状をもらった経験を持つ。「フランスは遠いイメージだが、姉妹都市交流が続くことで、ちょっとだけ近く感じる」。マスキングテープはがしを手伝う長女(3)を温かく見守り、「大きな絵の制作はなかなかできない体験」と喜んだ。
釜石市は1992年に同市で開かれた三陸・海の博覧会で、ディーニュ市の「アンモナイトの壁」のレプリカ(剥離標本)を展示。その後、鉄の歴史館での保存が決まったのを機に、94年に姉妹都市提携を結んだ。2011年の東日本大震災後は、ディーニュ市から義援金や応援メッセージが届いた。その後、官民での相互訪問を重ね、交流が深まっている。昨年、ディーニュ市を中心に初開催されたアマチュアラグビーの世界大会は、同市訪問団が19年に釜石で目にしたラグビーW杯がきっかけで実現したという。
ディーニュ市からの訪問は震災後、今回で3回目。パトリシア・グラネ市長ら代表団8人が9月21~24日の日程で釜石市を訪れる。期間中、記念式典への出席やジオサイト見学、釜石鵜住居復興スタジアムで開催予定の「釜石絆の日」イベントの視察、市民との交流などを予定する。これに先立ち、9月15~18日にTETTOで姉妹都市提携30周年記念パネル展を開催。制作した巨大アートは同パネル展や記念式典会場などに展示される予定。
歓迎アートの制作には、釜石高の放課後フリースペース「774(ナナシ)プロジェクト」で活動する生徒6人が協力した。美術部員の森美惠さん(2年)がメンバーから入れ込みたいモチーフを聞いて、原画のデザインを担当。“30周年の絆”をイメージし、両市の中学生が過去に交流事業でセッションしたという「アヴィニョン橋」を盛り込んだ。「市民の方々が一緒に作ってくれることで、釜石全体のつながりも感じられる。この絵でディーニュ市の皆さんを明るくお迎えしたい。言葉の壁を越えて、何か通じるものがあれば」と期待を込める。