マリンレジャーに欠かせない日焼け止めが<サンゴの白化>の原因に? 環境に配慮したクラゲ対策クリーム発売
近年、「サンゴの白化現象」が世界中で発生し、危機的な状況になっています。研究者ら有識者からは「早く手を打たないと非常に危険だ」という意見も聞かれます(WWFジャパン、日本のサンゴ礁生態系とその保全)。
サンゴが白化する原因については様々なことが言われていますが、白化の原因のひとつに日焼け止めなどに含まれる「紫外線吸収剤」も挙がっています。
そんな「紫外線吸収剤」を使用せず、しかもクラゲ対策にもなるクリームがあることを知っていますか?
これからの季節、海に出かける機会も多くなると思います。ぜひこの機会に、海洋汚染や環境保全について考えてみませんか。
サンゴの白化はなぜ起きるのか?
サンゴ白化のいちばんの要因は、海水温の上昇です。海水温が30℃を越えると、サンゴと共生する褐虫藻が死滅することで、サンゴも弱り、いずれは死滅してしまいます。
大気中の二酸化炭素量の上昇により、海水中への二酸化炭素の溶存量が増加し、海水が酸性化することも大きな要因と言われています。
また、水害や台風などによって、陸から大量の土砂が流れ込み土砂がサンゴにたまってしまうと、褐虫藻が光合成できなくなったりサンゴが呼吸できなくなったりして、サンゴが死んでしまいます。
海水の富栄養化により大量増殖したオニヒトデが、サンゴを食いつくすことも原因のひとつです。
環境変化だけでなく、人為的な要因も
加えて、人為的な要因もあります。
化粧品や日焼け止めに含まれる一部の紫外線吸収剤やナノ粒子(非常に細かい粒子のこと)がサンゴの成長を抑制し、死滅させるという報告がされています。
海に行く際、多くの人が当たり前のように使う日焼け止めに入っている紫外線吸収剤が、サンゴ白化の原因のひとつと考えられるのです。
サンゴの白化を引き超す紫外線吸収剤とは?
紫外線吸収剤とは、紫外線を吸収する物質です。自ら紫外線と反応して別の化合物となり、紫外線の影響を防ぐ役割を担っています。
一方、紫外線反射剤とは紫外線を反射(乱反射)する物質のことで、主に鉱物を細かくして粒子化したものです。紫外線を反射し、皮膚に紫外線が届くのを防ぐため有益です。
サンゴ白化の原因とされる化学物質として、紫外線吸収剤ではオキシベンゾンやオクチノキサートなどが、防腐剤ではパラベン類などが挙げられます。どれもベンゼン環を持つ物質です。
このうち、オキシベンゾンは日焼け止めに1~10パーセント程度が含まれ、サンゴのDNAにダメージを与え、環境ホルモンとしても作用するという研究結果が得られています。
サンゴの白化は何を引き起こすのか?
サンゴが白化すると、いずれサンゴは死滅します。サンゴが死滅すると、サンゴ(褐虫藻含む)を餌とする魚の住処が失われます。
そして、サンゴを餌や住処とする魚が少なくなると、それを餌にする魚が獲れなくなります。
このように生態系が破壊され、豊かな海が失われることに繋がります。
また、美しいサンゴ礁が消えるということは、サンゴ礁がある地域の観光資源を失うことにもなります。
世界の海で禁止されつつある紫外線吸収剤入り化粧品
サンゴ礁がある国々では、既に日焼け止めに対する規制がかかっている地域もあります。
ハワイやキーウエスト、バージン諸島、アルバ島、パラオ、ボネール島、メキシコ自然保護区域、タイなどでは、既にオキシベンゾンやオクチノキサートなどを含む日焼け止めは使用や販売、持ち込みを禁止したり、使用を控えるよう呼びかけたりしているそうです。
日焼け止めクリームには、紫外線を吸収して皮膚を守るものと、紫外線を反射して皮膚を守るもの(ノンケミカルタイプとも呼ばれる)の2種類があります。
環境汚染を防ぐため、海で日焼け止めクリームを使用するのであれば、紫外線を反射して皮膚を守るノンケミカルタイプを選ぶと良いでしょう。
紫外線反射剤を含む日焼け止め(ノンケミカル)を使用することで、サンゴの白化や海洋生物への環境ホルモン様物質の汚染を避けられます。
高校生が開発した紫外線吸収剤を含まないクラゲ対策クリーム
2015年、愛媛県立長浜高校水族館部のメンバーで構成された「チーム・ニモ」の研究により、イソギンチャクやクラゲが人や外敵を刺すメカニズムが明らかになりました。
その理論をもとに、株式会社エイビイエスが開発したクラゲ対策クリームが「JELLYS GUARD(ジェリーズガード)」です。
ダイビングやシュノーケリング、遊泳を楽しむ際に注意しないといけないクラゲ。
気が付かないうちに刺されてしまうのがクラゲの怖いところ。そして、クラゲに何度も刺されると、クラゲの触手に含まれるポリグルタミン酸に対するアレルギーを発症することがあります。
ポリグルタミン酸は化粧品や食品などに添加されていることが多く、また、納豆にも含まれるため、このような化粧品の使用や食品の摂取はアレルギーを誘発します。ひどいときには呼吸困難になる場合もあるので、注意が必要です。
ジェリーズガードは3種類
ジェリーズガードには紫外線吸収剤は含まれていないため、サンゴの白化や海洋汚染の恐れがありません。
これまで<フェイス&ボディクリーム>と<サンスクリーン>の2種類が販売されていましたが、今年5月には紫外線反射剤をより細かい粒子に改良した<サンスクリーンプラス>が発売されました。
サンスクリーンプラスは紫外線反射剤のサイズが細かく、白浮きが少ないのが特徴。ウォータープルーフ設計なので比較的長持ちするうえ、ほのかな香り付きなので、香りが消えたら再度塗り直す目安になるそう。
海洋汚染について考えよう
何の気なしに使用している紫外線吸収剤入りの日焼け止めクリームやローションには、サンゴの白化や海洋汚染につながる化学物質が含まれている場合があります。
そのため、紫外線反射剤入りの日焼け止めクリームを選択するか、海洋汚染の原因にならない紫外線吸収剤入りの日焼け止めクリームを選択するようにしましょう。
大切な自然や美しいサンゴ礁の海を守るために、日焼け止めクリームを使わずに過ごす方法はないか──日焼け止めクリームを購入する場合に何を選択するのが良いか──ぜひ考えてみてください。
(サカナトライター:額田善之)
参考文献
環境毒物学専門誌『Archives of Environmental Contamination and Toxicology』, Volume 70, p.265?288, 2016
オキシベンゾンー花王
ハワイの海の美しさを守ろう~「リーフセーフ」な日焼け止め~-Malama Hawaii
Sustainability-Aruba
Key West To Ban Popular Sunscreen Ingredients To Protect Coral Reef-npr
U.S. Virgin Islands bans coral-damaging sunscreens-MONGABAY
Another Tropical Paradise Enacts a Sunscreen Ban-LIVESCIENCE