プラレール史上類を見ないガレージキットも!?記念列車が製品化「プラレール40周年号」とは?
text & photo:なゆほ
60年以上の歴史があるプラレールの製品・歴史・情報をまとめ、自身のホームページ「プラレール資料館」で公開しているプラレールコレクター なゆほさん の鉄ホビ連載!長い歴史を持つプラレールというおもちゃをコアな目線から語っていただきます!今回は今から26年前、プラレールが誕生40周年を迎えた頃の製品のうち、実際に運行された記念列車である「プラレール40周年号」にまつわるアイテムを紹介します。なんとその中にはプラレール史上類を見ない、珍しい形態の製品もありました。(編集部)
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プラレールが誕生40周年を迎えた1999年、アニバーサリーイヤーということで様々な企画が立てられました。往年の製品の復刻を始め、メモリアルビデオの作成や、ブリキ製プラレール、ファンクラブ限定販売の5編成セットの発売、プラレールをあしらったトラックが全国を巡った「プラレールキャラバン」、向ヶ丘遊園で開催されたイベント「プラレール王国」など、おもちゃの周年を記念する行事とは思えないほどの盛り上がりを見せ、プラレール史に残る1年となりました。
その中でも特に力が入っていたのが、団体臨時列車の運行です。キャンペーンで選ばれた100組200名の親子を対象として、1999年9月25・26日の両日に「プラレール40周年号」が運行されました。お召し指定機として有名なEF58 61がジョイフルトレインの12系「オリエントサルーン」を牽引し、2日間で上野駅と信越線横川駅を往復するといったものでした。車内にはプラレールが飾られ、信越線内ではジョイフルトレイン「やすらぎ」の牽引機に指定され専用の塗装を纏っていたEF60 19とのプッシュプル運転を行い、横川駅ではEF55 1とEF64 1001によるプッシュプル運転の「EF55碓氷号」と並ぶなど、なかなか手の込んだ列車となっています。
この列車の運行を記念した製品も発売されていますが、これがまた少々変わった展開を見せていました。
▲1999年10月14日発売の「プラレール40周年号」と、2000年7月22日発売の「EF60電気機関車プラレール40周年号」
製品の「プラレール40周年号」は鉄道の日もといプラレールの日である10月14日に全国発売されましたが、列車の運行日にも車内販売のグッズとして先行販売が行われています。車内販売されたものは連結器がグレー色に成型され、乗車記念カードが付属した特別仕様でしたが、今回ご紹介するのは通常版です。
EF58は1974年頃から1996年まで生産されたロングセラー品でしたが、プラレール40周年の頃には絶版となっており、「40周年号」の運行に合わせて復刻を果たしました。61号機牽引を再現するため、既存の型の側面に飾り帯モールドが追加されています。
客車は1985年に発売された「ファミリーりょこう サロンカー」で登場した14系「サロンエクスプレス東京」の流用。12系の「オリエントサルーン」とは全く形が異なりますが、展望室の天窓を黒い塗装で表現し、車体の塗装はもちろんロゴマークも再現することでそれらしく仕立ててあります。
また、箱は同年7月に発売された「プラレール40thアニバーサリーセット」と共通の40周年オリジナルデザインとなっています。
このように記念商品として作られた「プラレール40周年号」ですが、客車の流用もさることながらEF58 61にはナンバーの表記もなく、車輪も黄色という、実にプラレールらしいフォルムが今でもファンの間で人気となっています。
この40周年号、EF58は過去に製品があったために金型を改修の上で製品化が可能となりましたが、EF60は一度も製品化されていません。せっかくならば製品化したいという思いがあったのか定かではありませんが、翌2000年に思わぬ形で発売されることとなります。
▲ガレージキットとして発売されたEF60 19。プラレール初となる組み立て式の製品だ。
2000年7月22・23日に幕張メッセで開催された「東京キャラクターショー」にて、EF60 19が発売されました。それも、購入者自身が組み立てるガレージキットとしての発売です。
プラレールは主に幼児から児童までをターゲットとしたおもちゃですが、このEF60はガレージキットということで対象年齢を高めの15歳以上に設定してあり、この点でもプラレールとしてはなかなか異質と言えます。また、その製品特性上大量生産は行われず、300個限定での発売となりました。
「ブルートレイン」などで製品化されているEF65の型をベースに、側面の特徴的な四角い窓を設置、それを挟み込むようにルーバーを設け、ヘッドライトは元々一灯だったものを二灯シールドビームに改造した姿を忠実に再現してあります。
組み立て式と言っても、やはりプラレールなので鉄道模型のように細かなパーツ分けはされておらず、車体・台車・パンタグラフ・シールという簡単な構成となっています。車体は「やすらぎ」の地色であるクリーム色に塗装されており、付属のシールを貼ってパンタグラフをはめたら完成です。シールにはプラレール40周年号のヘッドマークも付属しますが、独立して印刷されているのでヘッドマークの有無が選べるようにもなっています。
こうして2両の牽引機が製品化された「プラレール40周年号」は、当時の盛り上がりを今に伝える貴重なアイテムとして知られるようになりました。
その後、EF58 61は更にブラッシュアップをかけて1両単品の「K-04 EF58形61号機」として通常ラインナップに昇格。EF60 19も2010年に発売された「トミカとプラレールのニュータウンセット」にて「やすらぎ色」が新規金型で再登場するなど、40周年が過ぎた後も当時の名残を見せるかのような展開が行われていますが、双方共に既に絶版。四半世紀前のアニバーサリーイヤーイベントも、今ではすっかり歴史の一部となってしまいました。
50周年、60周年を経たプラレールですが、来たる2029年の70周年ではどのようになるのでしょうか。今から楽しみです。