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【漫画家塚田ゆうたさん(静岡県出身)の「FUKUSEI-GENGA展」】「RIOT」第3集発売記念の展覧会。緻密な“設計図”に感嘆

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区鷹匠の第一ふじのビルの1階にある書店「ひばりBOOKS」と3階の雑貨店「PILOTIS」で10月29日から開催中の漫画家塚田ゆうたさん(静岡県出身)「FUKUSEI-GENGA展」を題材に。展覧会は塚田さんの作品「RIOT」(小学館)の第3集発売記念として企画された。

「月刊!スピリッツ」2024年7月号から始まった塚田さんの連載「RIOT」は、静岡県松崎町によく似た田舎町に住む男子高校生「シャンハイ」と「アイジ」が、自分たちの美意識を詰め込んだ「ZINE(ジン)」をつくる話。

スマホ世代の彼らがフィジカルな紙媒体に引かれ、あろうことか自分たちでそれを生み出そうとする。40代以上の読者は、「うんうん」とうなずき、彼らの頭をなでたくもなるだろう。だが、この作品はノスタルジーに彩られたおとぎ話ではない。昨今のZINEの隆盛をみると、特に20代以下にとって「自分だけの紙媒体」はもはや特別な存在ではなくなっている。

ZINEをつくりたいという衝動だけで、シャンハイとアイジはそれを形にしてしまう。とにかく手を動かすのだ。効率重視の世の中だが、手を動かさないと何も始まらない。どれだけ手間を省けるか、とは正反対の考えだ。「RIOT」が愛されるのは、そんな「真っ当さ」が紙面からにじみ出ているからだろう。

「複製原画」展にも、それはよく表れている。学校の階段の手すりの一つ一つ、家具の表面のざらざらを、とにかくひたすら手を動かして描いている。それがよく分かる。カラー口絵用の絵では、水彩絵の具のにじみが美しく浮き上がっている。

ズーム、パンの切り替えを効果的に使っていることにも気付く。塚田さんの鉛筆書きのネームは、映画の絵コンテのようだ。「RIOT」はこれほどに緻密な設計図に基づいて描かれているのか。

緻密といえば、ノートに言葉で記された人物設定や場面設定の細かさにも驚かされた。彼らが生きる田舎町(五十海町、と名付けたようだ)の、美しい俯瞰図も見逃せない。

のんきで能天気な高校生2人組の生きる世界が、これだけ綿密な準備に基づいて生み出されていたものだったとは。作品に漂うどこかのんびりした雰囲気の全く逆の、漫画家のせわしない頭の中をのぞいた気になった。

(は)

<DATA>
■塚田ゆうた RIOT 単行本第3集発売記念「FUKUSEI-GENGA展」
会場、開催時間:
ひばりBOOKS(静岡市葵区鷹匠 3丁目-5-15 第一ふじのビル1階)※午前11時~午後8時
PILOTIS(静岡市葵区鷹匠 3丁目-5-15 第一ふじのビル3階)※正午~午後6時
観覧料金:無料  
会期:11月9日(日)まで

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