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【猛暑とコメ】夏の記録的な高温でコメに“異変”が…流通量が減り5キロの平均価格が2年前から200円アップ…どうなる日本のコメ⁈

アットエス

静岡トピックを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「猛暑とコメ」。先生役は静岡新聞の川内十郎論説委員です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年8月6日放送)

(山田)連日、暑い日が続きます。この猛暑が日本の主食のコメにも大きな影響を与えているんですね。

(川内)そうなんです。品質の低下や品薄を招き、価格も上がっています。ところで山田さんはふだん食べているご飯に、こだわりや好みはありますか?

(山田)僕は白米が大好き。朝もご飯と納豆という感じかな。

(川内)わが家は以前から近所のお米屋さんに届けてもらっていて、お薦めのコメを食べています。さらに最近、晩ご飯を食べる楽しみが一つ増えました。それは専用の1合炊きの土鍋を買って、食卓の上で炊いて食べること。夫婦2人だから、量もちょうどいい。

取っ手が付いたマグカップのような形で、脚の付いた五徳の上に載せて、固形燃料に着火。湯気が上がる様子なども楽しみながら、一杯やっていると、30分ほどで「シメのご飯」が炊き上がるという具合。

(山田)わー最高。素敵ですね。

(川内)さて本題です。2023年産、つまり昨年産のコメは夏の記録的な高温の影響で1等米の比率が、全国平均で過去最低の約60パーセントと、例年より約20ポイントも下がりました。

特に深刻だったのがコメどころの新潟県で、主力のコシヒカリの1等米比率が、例年80%ほどだったのが、わずか5%にとどまり、衝撃が広がりました。コメが成熟する夏の高温は、品質に大きな影響を及ぼします。

(山田)それは大変ですね。

高温障害ってどうなるの?

(川内)この高温障害では、コメ粒が白くにごる「白未熟粒(しろみじゅくりゅう)」や亀裂が入った「胴割れ」などが発生します。高温にさらされると、でんぷんの蓄積が不十分になるからだそうです。

「格付け」は米粒の色や形といった外観の評価で、味は変わらないとされますが、等級が下がれば当然、農家の収入にはね返ります。玄米の表面にある、いわゆる「ぬか」を削り取る「精米」の過程を経て出荷できる歩留まりが減ることから、流通量の減少にもつながります。

(山田)たくさん削らなければならないということなんですね。

(川内)流通量の減少に、インバウンド(訪日客)需要の急増などが重なり、6月末現在の主食用米の民間在庫量(速報値)は前年から約2割減の156万トンで、1999年の統計開始以降で最少でした。

2023年産米をJAグループなどが業者に卸す価格も、6月に約11年ぶりの高値水準になりました。

店頭ではどうなっているのか

(川内)全国のスーパーで6月上旬に販売したコメ5キロの平均価格は2千円に迫り、2年前から200円近く値上がりしたとのことです。静岡県内でも「1家族2袋まで」など、購入制限をするスーパーが出てきました。使うご飯を国産のみから外国産とのブレンドに切り替えた大手牛丼チェーンもあります。

(山田)今、リスナーの方からリアルタイムで「スーパーでびっくりするほど高くなっている。10キロ入りは見られない」との声が寄せられました。皆さん、関心は高そうです。

今後の需給や価格の見通しは

(川内)国は「足元の品薄は局地的、一時的で需給に問題ない」とし、「秋に新米が出回れば、価格は落ち着く」との見方もあります。しかし、先日発表があった7月の平均気温は過去最高で、長期予報では今後も猛暑が続きそうなため、今年のコメの出来がどうなるか気になるところです。ただ、買いだめに走るような人が増えれば流通の混乱も起きかねないため、私たち消費者には冷静な対応が求められます。

(山田)予断は許さない状況ですね。

暑さに強いコメの普及が鍵

(川内)地球温暖化も進む中で何が重要と言えば、まずは暑さに強い「高温耐性品種」の普及です。行政やJAの後押しもあって実際、生産は拡大していて、存在感が高まりつつあります。かつては、コメの品種改良といえば寒さに強い冷害対策が中心でしたが、近年、夏の暑さが激しさを増す中で発想の転換が求められています。

(山田)具体的にはどんな動きがあるんですか。

(川内)コメの王様とも言える「コシヒカリ」の主産地で知られる新潟県では今年、高温に強い地元ブランド米の「新之助」の作付面積が昨年より2割増えました。富山県では同じく暑さに強いブランド米の「富富富(ふふふ)」の栽培面積を今後5年間で現在の6倍にする目標を定めました。

静岡県では「にこまる」と「きぬむすめ」といういずれも西日本向けに開発された、暑さに強い品種を、10年以上前に「奨励品種」に登録したことが功を奏しています。先手を打ったと言えるでしょう。静岡県産の「にこまる」と「きぬむすめ」は、日本穀物検定協会という所が実施している2023年産米の食味ランキングで、最上位の「特A」に選ばれました。

実は私も「にこまる」のファンです。大粒で食べ応えがあるおいしさがあり、お米屋さんの薦めもあり、いつも食べています。

(山田)暑さに強いコメへの転換が加速している感じですね。

農作業も暑さへの対応が進んでいる

(川内)猛暑、酷暑の中、農作業中の死亡事故も起きています。コメづくりで高温による品質低下を防ぐために効果的とされるのが、稲穂が出る直前に肥料をまく「穂肥(ほごえ)」です。

しかし、夏の作業で、特に高齢者にとって猛暑の中での作業は容易ではありません。タイミングも難しいとされています。そこで産地では作業の省力化を模索する動きも出ています。

粒状の固形肥料をタンクに入れて背負ってまくのが一般的ですが、それを田んぼの水の取り入れ口から、液体肥料で流し込むようにするなどです。ドローンでの作業を行う会社では、今年は穂肥の受注が増えているそうです。トラクターの後ろに大型の散布機を付けるやり方もあるようです。

(山田)暑さの中、時期の見極めも必要か。少しでも負担が減るといいな。

(川内)コメの高温対策は喫緊の課題であることは間違いありません。同時に全国各地の「暑さに強いコメ」への転換の取り組みや、競い合いは、私たちが多彩なコメを楽しめる契機になるかもしれません。洋食化で進む「コメ離れ」に一石を投じる可能性もあります。猛暑の中で作業する生産者の方々の苦労も思い浮かべながら、コメのうまさとありがたみをかみしめたいと思います。

(山田)いつもおいしいお米を作ってくれる農家の皆さん、ありがとうございます。猛暑がコメにとってマイナス面だけでなく、いい方向に変化するきっかけにもなればいいですね。今日の勉強はこれでおしまい!

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