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【ネタバレあり】日本ドラマ史上、最も“異質”?主人公っぽくない主人公たちが織りなす不思議な“深み” #ミカキン感想レポ 「三笠のキング」完結

Sitakke

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WEBマガジン『Sitakke』では2回目の執筆になります、"かんそう"と申します。
北海道に生まれ育ち、今もなお札幌に住みながら、ドラマや音楽についての感想を発信するブログ『kansou』やXの運営、そして少女漫画に出てくる主人公の恋のライバルとして登場し主人公に嫌がらせをするも敗れたのち最終的に親友となるツインテール美少女を応援する活動をしています。

kansouのXでは、2015年頃からドラマや音楽についての感想を発信している

前回の記事に引き続き、HBC制作のドラマ『三笠のキングと、あと数人』(通称・ミカキン)の感想レビューをお届けします。

⇒前回の記事:【考察】北海道発ドラマ#ミカキン は大人になっても”普通”になれない「変人」同士の話?最終回予想も!HBC制作『三笠のキングと、あと数人』かんそうレポ

『三笠のキングと、あと数人』は“不思議”としか言いようがないドラマだった

ドラマのワンシーン

5月30日(金)に全6回の最終回を迎えたドラマ、『三笠のキングと、あと数人』。
(6月からはBS-TBSでも放送が決定している。)

このドラマは一体なんだったのか、ずっと考えてる。「不思議」としか言いようがないドラマだった。

そもそも、特定の地域を題材にしたドラマというのは、面白くするのが非常に難しい。その地域の魅力を全面に押し出そうとすればするほど、単なる「PRドラマ」にしかならず、肝心の内容が疎かになるケースが非常に多いからだ。

今回も、仮に三笠市のPRとして全振りするのであれば、もっと三笠の魅力である広大な自然や、四季の移り変わり、豊かな食などを全面に押し出していただろう。

しかし、このドラマ『三笠のキングと、あと数人』はそんな目先のPRとは完全に「真逆」のドラマだったように思える。

三笠のわかりやすい特色はそこそこに、ともすれば視聴者から「三笠って閉鎖的な田舎なんだ」と思われかねない人生に迷う住民たちの「リアル」を逃げることなく真正面から描いていた。

かなり異質…日本ドラマ史上、最も「主人公ぽくない」主人公たち

W主演 高杉真宙演じる「健太」と、柄本時生演じる「先輩」

その最たるものが主人公の二人だ。常に心の隅にモヤモヤとしたものを抱えながら地元で鬱屈とした日々を過ごす先輩と、雲をつかむような夢を追いかけ上京し、粉々に敗れ去った健太。

まず、柄本時生演じる主人公「先輩」は、かなり異質なキャラクターだった。

健太に対しては傲慢に振る舞うが、それ以外の人間とは目を見て話すことすらできないほど根暗な性格で、本作のヒロイン・由紀子(森田想)との色恋のスタートラインに立つこともできない。それどころか、最後まで本名すら明かされない。そんな日本ドラマ史上、最も主人公っぽくない主人公だった。

高杉真宙演じる「健太」

そして先輩以上に異質なのが、もう一人の主人公・高杉真宙演じる「健太」だ。

地下メンズアイドル時代のエピソードを思い出しても分かるように、誰よりも自分の信じた夢に真っ直ぐ突き進む無鉄砲さと空気の読めなさを併せ持つ。由紀子に対しても、1ミリも付き合ってないのに「結婚しようと思ってます」と暴走するなど先輩以上に異常な面が見え隠れしていた。

そう、実は先輩に健太が巻き込まれる構図のように見えて、実は先輩を突き動かしているのは健太なのだ。

この構図が、正直、非常にややこしい。だが、妙な面白さがあった。二人の圧倒的な「主人公ぽくなさ」こそ、『三笠のキングと、あと数人』の最大の魅力なのだ。

単純な物語なのに、記憶に残る不思議なドラマ

ドラマのワンシーン

もっと先輩のキャラクターを北海道の大地のようなパワフルで快活な誰にでも分かる魅力的な人物にし、健太のキャラクターをもっと頭の切れる参謀的な人物にして、本当に「キング」になる。そんなキラキラとした希望にあふれる青春ドラマにすれば、もっと分かりやすく簡単に三笠の魅力を伝えることができるだろう。

しかし、このドラマはそんな安牌を打たない。豪快に見えて誰よりも小心者の先輩と、小心者に見えて誰よりも豪快な健太、そんな多面性を持つ複雑な人物像を描くことで、「三笠の市長になりたい」という単純な物語に「深み」を持たせていく。

そして、だからこそ、胸を打たれてしまう。幽霊ネタはともかく「若者が無謀な夢に向かってもがく」、そんな今も日本のどこかで起きているであろう小さな小さな物語を、あえてこの「北海道・三笠市」という広大な街を使って紡ぐことで、逆説的に街の美しさが際立っていたのだ。

ドラマのワンシーン

なんの誇張もなく、ただありのままの三笠市と、そこで生きる人々の葛藤を描く。記録には残らないかもしれないが、確実に見た者の記憶に残る、不思議なドラマだった。

そんな『三笠のキングと、あと数人』に心からの拍手を送りながら、最後はもちろんこの言葉で終わりにしたい。

ビューティフォー ビューティフォー ビューティフォー ビューティフォー......

HBC制作 Nisshoドラマスペシャル『三笠のキングと、あと数人』(全6話)

放送概要
■番組名:Nisshoドラマスペシャル『三笠のキングと、あと数人』
■放送局 : 北海道放送株式会社(地上波北海道ローカル)
■放送日時: 2025年4月25日(金)午後6:30スタート 毎週(金)全6話 ※放送終了
■再放送日時:2025年4月29日(火)午後11:59スタート 毎週(火)全6話
■主 題 歌 : GLAY/「Beautiful like you」
■番 組 HP : https://www.hbc.co.jp/tv/mikakin/

監督:榊原有佑、門馬直人、針生悠伺
脚本:我人祥太、林青維 原案:田邊馨
出演:高杉真宙、柄本時生 / 森田想、奥野瑛太、黒田大輔、阿部進之介、久保田磨希、柾木玲弥、皇希、しゅはまはるみ、東てる美 / 竹中直人、西岡德馬

朗報!

6月からはBS-TBSでも放送が決定しました。全国の方にも作品を楽しんでいただけるようになり、6月1日、8日、15日の日曜日、11:00~12:00に放送されます。詳しくはBS-TBSの公式HPをご確認ください。

文:「かんそう」
編集:Sitakke編集部 ナベ子

ライター・「かんそう」プロフィール
1989年生まれ。北海道釧路市出身。
2014年から、はてなブログにて個人ブログ「kansou」を運営し記事数は1000超、月間PVは最高240万アクセス、累計PVは5000万アクセス。読者登録数は全はてなブログ内で6位の多さを誇る。その名の通り音楽、ドラマ、映画、ラジオ、漫画、ゲームなどあらゆるカルチャーの「感想」を常軌を逸した表現力で綴っている。

また自身の感情を爆発させた日記も人気で「Mステの知らねぇ高校生がダンスするコーナーどういう気持ちで見りゃいいんだよ」「人生初の飛行機ファーストクラスで天国と地獄を見た」「死ぬほどサウナ入ってるのに一回も整ったことないしむしろ乱れてる」などの記事はX(旧Twitter)で数万リポストされ「Mステ」「ファーストクラス」「サウナ」のワードがトレンド入りを果たすほどの反響があった。
クイック・ジャパン ウェブ、リアルサウンド テックなどの媒体でライター活動を行うほか、TBSラジオで初の冠番組『かんそうの感想フリースタイル』のパーソナリティも務めた。

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