【川崎市中原区】宮内自治会 地域の昔話、紙芝居で伝え AI活用、ビデオで上映
地域に伝わる昔話を残していきたい――。中原区の宮内自治会が、宮内こども文化センターと宮内歴史ガイド委員会の協力を得て紙芝居を共同制作。物語に合わせた絵は、子どもたちが描いた。2作品が完成し、9月6、7日には等々力緑地でAIによる音声とスクリーンに映し出した映像によるガーデンシアターを開催した。
「紙芝居のはじまり、はじまりー」。拍子木のカチンカチンという音が鳴り響くと、子どもや家族連れが集まりだした。横2・6m、縦1・5mの手作りスクリーンに紙芝居の絵が映し出され、AIが読み上げる昔話に多くの人が聞き入った。
上映した昔話は宮内地区に伝わる『雨乞いの竜』と『金井観音とお魚屋さん』の2つ。子どもでも飽きずに見ていられるように1作品は約15分、物語を12枚程度の絵にまとめた。
きっかけは宮内自治会が進めてきた地域の歴史を保護する活動。同自治会の歴史ガイド委員会が史跡や旧地名などを伝承していく目的で、案内板を設置する計画を2019年から進め、22年に完了した。多摩川の氾濫や洪水を防ぐために築堤された「横土手」、鎌倉幕府の御家人が戦勝祈願で黄金の太刀を埋めたと言われる「黄金塚」など、石碑の案内板の数は16カ所。「歴史散歩」と題したイベントを子どもたちを集めて実施した際、地域の昔話を紹介すると宮内こども文化センターの職員が「紙芝居にしてみたらどうか」と提案した。
世界に一つの作品
同センターに通う児童ら3〜5人が絵を担当し、1年がかりで制作。『雨乞いの竜』は昨年、その後を継いだ児童らが今年の3月に『金井観音とお魚屋さん』を完成させ、世界に一つの紙芝居が出来上がった。現在制作中の3つ目の作品は、年内の完成を目指しているという。同自治会会長で歴史ガイド委員長を務める田村二三夫さん(77)は「自分たちが暮らす宮内に残されている歴史的財産を守り、伝えていくことで地域の活性化につなげていきたい」と思いを込める。
父親と見に来た女児(5)は「映画みたいでおもしろかった」と手をたたいた。宮内地区に住む神子喜代子さん(80)は「子どものころに見た紙芝居を思い出し懐かしく感じ、心が温かくなった。地域の物語を語り継いでいく素晴らしい活動だと思う」と話した。
次回は、10月12日(日)に行われる春日神社の奉納演芸で上演される。午後6時30分から予定。