堂本光一・井上芳雄、殺陣もダンスもあるコンサートに意気込み充分 『ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVE製作発表会見レポート
シェイクスピア最後の作品として知られる『二人の貴公子』(共作・ジョン・フレッチャー)を原作に、脚本・演出を世界的演出家のジョン・ケアード、主演を堂本光一と井上芳雄が務め、2018年に世界初演を行ったミュージカル『ナイツ・テイル-騎士物語-』。
2020年にコンサート版、2021年に再演を行った本作が、2025年8月に『ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVEとして再び公演を行う。堂本光一、井上芳雄、音月桂、上白石萌音、大澄賢也、島田歌穂らお馴染みの豪華キャストに宮川浩が加わるほか、演奏は東京フィルハーモニー交響楽団のフルオーケストラに太鼓奏者、篠笛・能管、尺八、津軽三味線奏者が参加。コンサートの域を超えたライブを前に、メインキャストと脚本・演出のジョン・ケアード、日本語脚本・歌詞の今井麻緒子による制作発表会見が行われた。
上演するたびに発見と進化があるカンパニー
ジョンは「少し時代遅れな部分もある原作を、現代でも上演できるものに書き直しました。大きなテーマは、戦争が悪だということ、環境保護、社会における女性の地位向上の3つ。今の時期にこの作品を上演できること、大好きな役者たちとまた一緒に仕事できることを嬉しく思っています」と挨拶。今井は「外国でできたものを翻訳するのではなくいちからミュージカルを作るのは、私にとってこの作品が初めてでした。思い入れが強い作品なので、またできるのが嬉しいです」と語る。
堂本は「ジョンを筆頭に、このメンバーでできるのを嬉しく思っています。帝劇がいったん閉じた中でこの作品を繋いでいくという意味もあるでしょうし、やればやるほど発見がある作品。6000人規模の会場で上演した時にどうなるか僕らもまだわかっていませんが、ジョンについていけるのを嬉しく思います」と笑顔で語り、井上は「本編を最後にやった時、セットや衣装を処分すると聞いて、一度お別れした気持ちでいました。でもコンサートで再会でき、今回はアリーナ公演。形を変えて再会が続くのが幸せですし、それだけの力を持った作品だと思います。あと、初演の記者会見はたしか萌音ちゃんがパネルだったので、今日は立体の萌音ちゃんがいて嬉しいです(笑)」と笑わせた。
音月は「初演の時にジョンや麻緒子さんが家族のようなカンパニーを作ってくださいました。今日は羽田で制作発表と聞いて、この作品がいずれ世界に羽ばたくんじゃないかという期待も抱いています」と話し、上白石は「初演は成人したての頃で、右も左も分からない中で偉大な先輩たちの背中を追ってきました。再演やコンサートのたびに初心にかえっています。初演では芳雄さんと親子みたいだと言われましたが、恋人に見えるように頑張ります!」と意気込んだ。
島田は「ジョンさんとは3回ご一緒していますが、いつもお稽古でたくさんの感動と発見をいただいています。この作品の初演は毎日が新鮮で楽しくて宝物でしたし、再び素晴らしい皆様とご一緒できることが嬉しいです。今までにないスケールで、どんなジョンマジックが起きるか楽しみにしています」と期待を寄せる。 宮川の「新キャストというより代打みたいな気持ち(笑)。一生懸命台本を読んで勉強中です。今は不安しかありませんが、皆さんを頼ります。よろしくお願いします!」という挨拶にはカンパニーの面々も笑顔で応えていた。
大澄は「この作品でジョンと出会い、7年で大きく成長させていただきました。自分ごとですが今年は年男。芸能の世界で、厄年はいい役がつくと言われています。このコンサートが僕にとってまた新たなスタートになるんじゃないかとワクワクしています。今回は振付アシスタントとしてもジョンをサポートしようと思っています」と語る。
会見に合わせて、森の中にいるような舞台美術のイメージ図も公開された。ジョンから「見る方が没入感を得られるよう、自然をたくさん取り入れてほしいとオーダーをした」という説明に続いて語られた「役者にはずっと舞台の上に立ち続けてもらおうと思っています」という構想に、キャスト陣と会見に集まったオーディエンスからざわめきが起きる。堂本は「数年前のコンサートはコロナ禍で制約もあった。今回はみんなでずっとステージ上にいて、一緒に楽しめるのかもしれない」と話し、井上は「思った以上に世界観がわかるセットだと思いました。結果本編全部やるってことにはならないですよね? チケット代とか変わってくると思いますよ」と笑わせる。
さらにジョンが「コンサートならではの伝え方も面白かったので、またやってもいいなと。劇場ではできない大音量で、音楽と振付は欠かすことなく全部やります。殺陣もやります」と明かすと、オーディエンスから期待を込めた拍手が起きていた。
見どころたっぷりな作品を凝縮し、スペシャルなコンサートに
続いて行われた質疑応答では、作品を立ち上げた時の思い出について聞かれたジョンが「(音楽を担当する)ポールとの仕事で楽しいのは、私の脚本に彼が音楽的にどんな答えを出してくれるのかを見ること。この作品は光一さん・芳雄さんが一緒にやりたいというところからスタートしました。二人の男性が主役の物語は少なくて、ようやく『二人の貴公子』を見つけたものの、性差別的な要素があまりに強かった。そこでシェイクスピアのためにも書き直しました(笑)。アイデアをポールに送ったら音楽で息を吹き込んでくれた。楽曲のいくつかは彼の生涯でもベストの出来だと思っています」と振り返る。また、今回の上演時間は休憩なしの2時間30分程度を想定していることも明かした。
改めて本作の魅力、好きなシーンについて聞かれると、堂本が「男たちが名誉にこだわる様子が滑稽に見えてくるバランスが絶妙。お客さんが笑っているのを見て新たに気付くこともあって面白い」と話し、井上も「真剣にやればやるほど面白い。本当の意味でコメディの楽しさがあります。音楽だけでも成立するくらい力がある楽曲も魅力」と挙げる。
音月が「セット転換も好き。今回、盆はないようですが、音楽とキャストの個性が輝く舞台になることを期待しています」と話すと、上白石が「桂さんと全く同じことを言おうとしていました。私も好き!」と賛同し、「キャラクターが愛情を注いで作られていて、いろいろな身分・境遇の人たちの縁が絡み合っていくところに物語の妙を感じます」と魅力を語る。島田も「皆さんが全部言ってくださいました(笑)。あとは和楽器を取り入れた演奏、光一さんと芳雄さんの素敵なコンビネーションです」と付け加え、大澄は「僕は光一くんと踊れること。ステップの中に包容力を感じさせる踊り手なので今回も楽しみです」と笑顔を見せた。
6000人規模の会場でのコンサートということで、アーティストとして大きな会場で公演をしたことがある堂本・井上・上白石に対する質問も。
堂本は「前回のコンサートは声が響くオーケストラホールで、はっきり言葉を伝えるのに苦労しました。今回の会場がどうなるかは立ってみないとわからないけど、自分たち(KinKi Kids)のライブと比べられるものではないですね。『ナイツ・テイル』のコンサートで皆さんに手を振ったりはしないし……」と笑わせる。井上は「ミュージカルに関することをこの規模でやるのは珍しいでしょうし、貴重な経験になると思います。たくさんの人に見ていただけるのは嬉しいので、僕は手を振ってしまうかもしれませんが、その時は振りかえしていただけると嬉しいです」と、堂本と逆のコメントで笑いを誘った。上白石は「ジョンとは様々な劇場に行っていますが、いつも言われるのは、観客として一番見辛くて遠い席の方にしっかり届ける気持ちでやりなさいということ。どなたも置いていくことがないように、隅々まで意識して届けたいです」と、丁寧に観客に向き合う姿勢を示した。
最後に井上が「今日の会見でもわかるように、僕らもまだわからないことだらけ。でも、今までに見たことがないものになるだろうことが明らかになってきました。新しい体験を楽しみに来ていただけたら嬉しいです」、堂本が「企画を聞いてからずっとワクワクしていました。今日みんなの顔を見て、ワクワクがさらに増幅したような気がします。作品の世界をまた皆さんにお届けできるのを楽しみにしています」と締め括った。
『ナイツ・テイル -騎士物語-』ARENA LIVEは8月2日(土)~10日(日)まで東京ガーデンシアターで行われる。
取材・文・撮影=吉田沙奈