日向野祥がパワーアップに手応え! スーツ×日本刀で魅せる舞台『新宿羅生門 ~薩長エージェンシー編〜』開幕【ゲネプロレポート】
舞台『新宿羅生門 ~薩長エージェンシー編〜』が、2025年1月18日(土)に東京・こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて開幕。
舞台シリーズ2作目となる本作。原作ゲームは2024年にアイディアファクトリーのブランド「ALTERGEAR(オルタギア)」より発売された幕末転生奇譚。舞台初演は2023年、原作ゲーム発売に先駆ける形で上演され、好評を博した。魅力的な組織が多数登場するが、今作ではそのうちの一つ、薩長エージェンシーにスポットを当てている。現代に続く戊辰の戦いをオリジナルキャラクターを交え描いた、本作のゲネプロの様子をお届けする。
新キャラクターが加わり加速する物語
150年前から続く怨念は、今度はどんなドラマを生み出したのだろうか。
物語は前作の主人公・沖田 洸(中島 健)の卒業式から始まる。洸は前作で「血伝継承」に覚醒。「血伝継承」と呼ばれる“血に宿る前世の記憶”に目覚めた彼は、150年前に江戸守護職「新徴組」組頭を務め、沖田総司の義理の兄であった沖田林太郎の意識を持つようになる。そのことをきっかけに、洸は新宿の各勢力から注視されるようになっていた。そんな中、薩長エージェンシーの桂 紫苑(塚本凌生)は、半ば強引な手段で洸を自組織に招き入れ――。
今作もスーツ×日本刀が織りなす殺伐とした色気がステージ上に漂い、前世の怨念を継承した男たちの生き様がド派手な殺陣で描かれていった。対立組織同士のバチバチの戦闘に、ひょんなことからの共闘と、今回も目が足りないほどに殺陣を浴びられる作品に仕上がっている。
前作では、薩長エージェンシーの桂と西郷拓馬(日向野 祥)のコミカルなシーンも見られた。今作では一転して、ストーリーの中心としてシリアスな立ち回りが続き、その信念や覚悟が色濃く浮かび上がる。
部下を駒としてしか見ない桂の冷徹っぷりを塚本がスマートに表現し、そのボディーガードを務める西郷のダンディな魅力を日向野が余韻たっぷりに演じる。ここに今作から登場する高杉深夜(阿部快征)や、薩長の非正規部隊「薩摩御用盗」を率いる別府仁義(友常勇気)が加わることで、冷酷に見える桂の人間臭さや、西郷と桂の絆といった見ごたえのある人間ドラマが折り重なっていった。
繊細さと真っ直ぐさを陰キャなオーラで包み込む阿部の高杉や、熱血に西郷を慕う友常の別府、そして薩長エージェンシーと行動をともにすることになった主人公然とした真っ直ぐな中島の洸。新たな要素が加わったことで起きる薩長エージェンシー内での化学反応をお楽しみに。
今作では舞台オリジナルキャラクターとして斎藤 一(小澤雄太)と山口二郎(一之瀬 優)が登場。彼らが覚醒した経緯や、西郷への過去の遺恨が、物語を大きく動かしていくことになる。その存在自体が物語の核心に触れるため、ここでは彼らについて多くは語ることができないが、彼らははたしてどんな業を背負っているのか。ぜひ序盤から、彼らの動向に注目しながら観劇してもらえたらと思う。
新徴組、戒援隊、神誠プロダクションといった他組織のメンバーは、前作から引き続き出演しているキャストが多く安定感抜群。神誠プロダクションの土方玲雄役として新たに出演する沖野晃司は、原作ゲームで同役を演じているとあって、原作ファンはより楽しめるのではないだろうか。
過去の怨念が大きなテーマとなっている本作。過去は変えることができないが、その過去を受け取った今を生きる彼らは、その怨みに何を思い、何を成していくのか。それぞれが今作で歩んだ一歩を劇場で見届けてほしい。
薩長エージェンシーの3人が意気込み語る
カーテンコールではキャストを代表して薩長エージェンシーの3人がコメント。塚本は「前作はちょこちょこ出てきては椅子で遊んでいましたが(笑)。そんな薩長エージェンシーのイメージをいい意味で裏切ることができるような作品になっているんじゃないかなと。僕たちのチーム力を見せられる作品になっていると心から思います」と自信を覗かせた。
続く阿部は、前作は客席で観ていたという。「前作のときはまだ出演が決まっていなかったのですが、決まってみたら薩長エージェンシーの一員になれるということで。最初に思ったのは、椅子とどう絡んでいこうかということで……。ですが今回、椅子との絡みが一切なかったんです(笑)。この先、シリーズとしてどんどん大きな作品にしていって、いつか僕も椅子と絡みたいと思います!」と笑いを誘う。
最後に日向野が「前作の勢いを保ちつつ、新キャストも迎えてよりパワーアップしました。続編の1発目が薩長エージェンシー編ということで、前作から一緒の塚本凌生と一緒にたくさん話し合いながら挑んでいます。明日から初日ですが、最後まで全力でこの熱い作品を届けてまいります」と意気込みを語ってカーテンコールを締めくくった。
カーテンコール後はマルチエピローグとなっており、上演回毎に登場する組織が異なっている。全部で4種類のエピローグが描かれるので、こちらもお見逃しなく。舞台『新宿羅生門 ~薩長エージェンシー編〜』は、2025年1月18日(土)~1月26日(日)、東京・こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロにて上演。
取材・文・撮影=双海しお