大宮駅の隣のJR東北本線「土呂駅」には何がある?【住みたい街の隣も住みよい街だ】
埼玉で最も大きいターミナル駅、大宮駅。駅周辺には商業施設が充実していて買い物や飲食に困らない。さらに、サッカースタジアムや「よしもと劇場」、多目的アリーナなどの施設も近くに点在し、新幹線・在来線の停車駅として東京はもちろん、東北・北陸方面へもアクセスしやすく人気の駅である。じゃあその隣の駅はどうだろう?ということで、【住みたい街の隣も住みよい街だ】第9回は大宮駅の隣駅・JR東北本線(宇都宮線)「土呂駅」周辺を散策します!
小学校で盆栽の授業!? 盆栽を飾る家が多い街
大宮駅の隣駅のひとつ、JR・土呂(とろ)駅にやってきた。
東口を出るとさっそくこの街の象徴的なものを見ることができる。
アカマツが3本。その下が器のようになっていて、まるで盆栽のようだ。そう、ここは盆栽で有名な街なのだ。
駅前は住宅地のような雰囲気でとても静か。
たびたび敷かれている盆栽の絵柄をたどり、まずは『さいたま市大宮盆栽美術館』に行って地元の情報を得ることにした。
盆栽美術館では、まずは館内で盆栽の楽しみ方を簡単に学んでから、樹齢500年を超す盆栽も並ぶ庭園へ。樹齢500年て、室町時代じゃないか。小さいのに大先輩すぎてつい拝んでしまう。
盆栽はひとつひとつ種類や形が違う。しかも正面の顔・背中・下からなどジックリ眺めていたらあっという間に時間が過ぎ去ってしまう。
四季折々の盆栽が見られるのだから近所にあるとうれしい美術館だ。
『大宮盆栽美術館』のスタッフさんに地元の方がいたので、この辺りの特徴や住みやすさを聞いた。
・緑が多い地域。大きい公園など自然も豊かで虫をつかまえたりできて子供たちが喜ぶ。
・盆栽に親しみがあり、愛好家が多いため軒先に盆栽を飾る家が多い。
・小学校5~6年生で盆栽をつくる授業がある。盆栽の小売り・維持販売する盆栽園のプロの方が中心になって教えてくれる。
・盆栽を学べる盆栽教室もある。
・大宮駅が隣にあって便利だし、東武鉄道の大宮公園駅も近い。
・駅の反対側(西口)方面に大きいショッピングモールがありみんなそこへよく行く。
・大宮盆栽村には6つの盆栽園があって自由に入れる。ちなみに木を休ませるという意味で、大宮盆栽美術館も盆栽園も木曜日が定休日。
なるほど、土呂を散策するなら木曜日以外が良さそうだ。
住みやすさを聞いていると、話はついつい盆栽の話になってしまう。
盆栽や緑とは切り離せない街なのだ。
開村してちょうど100周年! 大宮盆栽村
確かに辺りを少し歩くだけで、盆栽を飾る家が多いのがわかる。
そしてこの盆栽村と名づけられた一帯が独特でとてもおもしろい。
盆栽村をつくった中心の人たちは、かつて東京の千駄木周辺にいた盆栽職人たちだそうだ。
大正12年(1923)の関東大震災で大きな被害を受けた盆栽業者が壊滅した東京から離れて、盆栽づくりに適した土壌を求めてこの地へ移り住んだのだ。
そして大正14年(1925)には大宮盆栽村が生まれ、最盛期には約30の盆栽園があったそう。
また、盆栽村では業者と愛好家のための街づくりを趣旨として、移住者に対して以下のような住民協約が結ばれたという。
1.ここに居住する人は、盆栽を10鉢以上をもつこと
2.門戸を開放し、いつでも、誰でも見られるようにしておくこと
3.他人を見下ろし、日陰を作るような二階建ては作らないこと
4.ブロック塀を作らず、家の囲いはすべて生け垣にすること
いまでもこの辺り一帯は風致地区とされているそう。
だから緑を多く感じられる街なのか!
他の来訪者の方と藤樹園の3代目・廣田さんの会話を聞いたところによると、盆栽園の仕事は盆栽の個人販売も行うが、盆栽の管理・維持が多いようだ。
廣田さんは分かりやすくクラシックカーに例えていたのだが、盆栽の所有者が別にいて、プロ(盆栽園)が預かって管理をし、いざ大会などがある時はその所有者名義で出展したりするのだという。
つまり盆栽は資産のひとつなのだ。
あーおもしろい話聞けた!
もっとお話を聞きたいし、他の5つの盆栽園も周りたいところであるが時間が足りない。
再訪を決意し、昼どきなので腹ごしらえに食事処に向かった。
盆栽美術館の前にある『盆栽レストラン大宮』では、店内に盆栽を育てるためのグッズや本がたくさん並んでいるのも特徴的。盆栽美術館のスタッフの方の話によると、こちらのオーナーさんはたまに盆栽ツアーを催したり、海外へ盆栽を輸出したりしているそうだ。
ああどんどん盆栽に興味が湧いちゃう。
でも盆栽以外のいいところも聞いているので、次に向かおう。
子供たちが虫捕りを楽しむ、田んぼのある風景
やってきたのは、広大な緑地空間でユネスコの未来遺産としても認定されている「見沼たんぼ」が見られる、見晴(みはらし)公園。
隣駅の大宮のにぎやかさからは想像つかなかった景色だ。
広い土地、良質な土壌。
田んぼを見て、盆栽業者たちが村をつくるのにこの土地を選んだ理由も納得した。
そしてすぐ近くにはのんびり過ごせる大きな公園があった。
リスが増えた「市民の森・見沼グリーンセンター」
続いて訪れたのは、市民の森・見沼グリーンセンターという公園だ。
公園マップを見ると市民農園・果樹園・体験農場・温室・バラ園・ホタル飼育場、そしてやっぱり盆栽エリアもある、なかなかに大きい公園だ。
大宮駅方面に向かえば大宮公園という広い公園があるのは知っていたが、そこまで行かずとも芝生のある広場でのんびりできる。
本当に緑が豊かなのだというのが分かりうらやましい。
お次は土呂駅に戻り、駅の反対側に向かってみることに。
反対の西口駅前には「東武ストア」やドラッグストアなどがあり、普段のお買い物には便利そうだ。そしてさらに歩いていくと、立派なショッピングモール「ステラタウン」が現れる。
またモールの前にはつい目を引く立派な結婚式場や、『美楽温泉 SPA HERBS(スパ ハーブス)』がある。
ああ! ここ、すごく人気と聞いてむかし車で来たことがあったスパじゃないか。
天然温泉があり、岩盤浴やマンガ読み放題で一日中のんびりとできていいスパだった。
雨の日でも構わず過ごせるし、近所にあるとうれしいスポットだ。
スーパー総選挙上位「ヤオコー」の絶品おはぎ
ラストは、埼玉を拠点としているスーパー『ヤオコー』へ。
ヤオコーは、TBSラジオの番組『ジェーン・スー 生活は踊る』で毎年開催される人気企画「スーパー総選挙」でも常連で上位にいるそうだ(2024年は1位!)。
特に盆栽美術館のスタッフさんたちがイチオシしてくれたおはぎと、店内のパン工房で焼かれているというパンを買うことに。
おススメなだけあって、どちらもすごくおいしかった。
新鮮でおいしくて安いとみんなに愛されているスーパーが近くにあるのうらやましいな。
さて、こんな感じで土呂駅の散策は終了。
盆栽そのものの魅力だけでなく、盆栽村のルーツを知り、楽しすぎて盆栽だけで終わりそうだったけど、田んぼやリスのいる市民公園、ヤオコー名物なども発見できて楽しい散歩だった。
そして盆栽や緑の愛好家が多いエリアだからなのか、今日お話した方たちは皆さん穏やかで親切な方ばかりなのが印象的だった。静かに、どっしりと落ち着いている盆栽マインドが住んでいる人たちにも根付いているのかもしれない。
ああ今回も、“住みたい街”として人気の駅からたったひと駅のところで知られざる世界を見つけられて興奮した!
さて、次はどの駅の「隣」に散歩しにいこうか。
取材・文=小堺丸子 撮影=小堺丸子、村田あやこ
小堺丸子
ライター/ビル毛収集家
東京都葛飾区生まれ。上野・浅草あたりが庭。視点をちょっとずらした企画や、ガイドブックには載らないだろう地元の人ならではのプチ情報を取材するのが好きです。人にすぐ声をかけがちで、偶然出会った人が記事によく出てくるのが特徴です。趣味はビル毛集め(https://san-tatsu.jp/articles/294153/)。お散歩ラジオも始めました(https://podcasters.spotify.com/pod/show/osanporadio)。