井上尚弥の前座からトリプル世界戦のメインへ 寺地拳四朗が目指すフライ級4団体統一への道
WBA王者ユーリ阿久井政悟と2団体統一戦
プロボクシングのWBCフライ級王者・寺地拳四朗(33=B.M.B)とWBA同級王者・ユーリ阿久井政悟(29=倉敷守安)が3月13日に東京・両国国技館で統一戦を行う。
寺地はアマチュアで58勝(20KO・RSC)16敗の戦績を残し、2014年にプロデビュー。2017年に10戦目でWBCライトフライ級王座を奪うと、安定したアウトボクシングで8度の防衛を重ねた。
2021年9月に矢吹正道(緑)に10回TKO負けしてベルトを失ったが、翌2022年3月のダイレクトリマッチに3回KO勝ちして王座奪回。同年11月、WBA王者だった京口紘人(ワタナベ)と統一戦を行い、激闘の末に7回TKO勝ちして統一王者となった。
当初は線の細さが目立つボクサーだったが、この頃から力強さを増し、2023年4月にはアンソニー・オラスクアガ(アメリカ)との壮絶な打ち合いを制して9回TKO勝ち。その後も防衛を重ねて2024年10月にWBCフライ級王者クリストファー・ロサーレス(ニカラグア)に11回TKO勝ちで2階級制覇を果たした。
通算戦績は24勝(15KO)1敗。矢吹との第2戦以降は、全て世界戦で6戦6勝(5KO)とKO勝ちが増えており、かつての線の細さは完全に消えた。
スピードで上回る寺地が有利
一方のユーリ阿久井政悟は岡山県倉敷市出身で、倉敷守安ジム初の世界王者。2014年にプロデビューし、2024年1月にアルテム・ダラキアン(ウクライナ)に判定勝ちでWBAフライ級王座を奪うと、5月、10月にいずれも判定で防衛に成功しており、21勝(11KO)2敗1分けの戦績を残している。
日本人世界王者同士の統一戦は2012年の井岡一翔vs八重樫東、2022年の寺地拳四朗vs京口紘人に続いて国内3度目。寺地が「4団体統一を目指して、ここでしっかり勝ちたいと思っています」と統一に意欲を示せば、阿久井も「寺地選手は左ジャブもカウンターも強く、相性は正直悪いと思いますが、自分ができることがあると思います。おそらく我慢比べの試合になるでしょうが、KO勝利を目指して頑張ります」と展開を予想した。
身長は寺地が164.5センチ、阿久井が163センチとほとんど変わらないが、スピードと実績で上回る寺地が有利だろう。序盤でペースをつかめば、中盤以降にストップ勝ちする可能性が高いと見る。
いずれも寺地にKO負けしたオラスクアガと京口紘人がWBO王座戦
今回はアンソニー・オラスクアガ(アメリカ)に京口紘人(ワタナベ)が挑むWBOフライ級タイトルマッチ、岩田翔吉(帝拳)がレネ・サンティアゴ(プエルトリコ)の挑戦を受けるWBOライトフライ級タイトルマッチを含むトリプル世界戦。寺地vs阿久井は豪華興行のメインイベントとして行われる。
寺地は「このような大きい舞台でメインでできることをありがたく思います」とコメントしているが、今のように動画配信が主流となる前は、迫力不足だった寺地の試合はテレビで生中継されず、井上尚弥や村田諒太らの前座として行われた世界戦のハイライト映像がごく短時間、放送されるだけだった。
しかし、今ではトリプル世界戦のメインイベント。今回もU-NEXTでライブ配信される。逞しくなった寺地の試合はファンの熱視線を集めるのだ。
セミファイナルで戦うオラスクアガと京口は、いずれも寺地にKO負けした過去がある。寺地が阿久井を下して2団体統一王者となれば、帝拳とプロモート契約を結ぶオラスクアガとワタナベジムに所属する京口のどちらがWBO王者となっても、3団体統一戦に向かうだろう。
残るIBFは18戦全勝(8KO)のアンヘル・アヤラ(メキシコ)が2024年8月に王座に就いたばかり。寺地が目指すフライ級4団体統一への道はそう遠くないかもしれない。
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記事:SPAIA編集部