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「親が」子どものサッカーでイライラしてしまうのは「求める水準」が高すぎるせい!?  親子ともに幸せになる「怒り」のコントロール法

サカイク

子どものサッカーで、やる気が見えないとかお金を払っているのに上手くならない、など最近は苛立ちを抱える保護者もいます。

そんな親御さんたちの気持ちを軽くするために、前編では、怒りの性質やアンガーマネジメントやその手法について学びました。

後編では、子どものサッカーに関わる場面などで、なぜ怒りをコントロールする必要があるのか、引き続き日本アンガーマネジメント協会の松島徹理事にうかがいます。
(取材・文 木村芽久美)

 

 

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■他の子と比較して、ついイライラ...。そんな時は自分の価値観を見直すきっかけとして捉えてみる

子どものサッカーを見ていると、最初は本人が楽しんでいることが嬉しかったはずなのに、いつの間にか、ついつい自分の子とよその子を比較して、イライラしてしまう保護者が多いようです。

「前よりここが成長した」などのポジティブな情報を得るための比較などは良いのですが、「○○はできているのに、どうしてうちの子はできないの?」と、ネガティブになってしまうと、我が子のサッカーへの関わりや応援が苦痛になってしまうかもしれません。

サッカー経験者で、現在サッカーチームで指導している松島さんは「同じ学年であったとしても、身体能力も違えば、成長の速度も体の大きさも違うので、他と比較しても意味がないことに、まず気づいた方が良いかなとは思います」といいます。

またサッカーに関する情報もインターネットなどで簡単に収集することができる中、高いレベルの情報に価値観を置いてしまい、我が子に求めるレベルが高すぎる傾向にある可能性もあります。

前編では怒りが周りへも悪影響を与えてしまうことや自己診断する方法を学びましたが、思考をコントロールして、自分の価値観を広げるための手法も学んでみましょう。

 

■自分の価値観に固執しすぎないようにする、三重丸テクニック

アンガーマネジメントの中では、自分の価値観を広げるための三重丸テクニックというものがあります。


 (三重丸テクニック「思考のコントロール」 提供:日本アンガーマネジメント協会)

 

「生きていく中で、自分の価値観100点満点の状態というはなかなかありません。アンガーマネジメントに取り組む上で実は大切なのが、2の「まぁ許せるゾーン」を作ること、怒る・怒らないの判断ができるようになっていくことです」と松島さんはいいます。

思考のコントロール(三重丸)の図を見ると、「まぁ許せるゾーン」とありますが、この許せるゾーンを広げていくことも大切なのだそうです。

また自分の価値観以外のものをどこまでだったら許容できるのか、そこを考えることもすごく有効なのだといいます。

実は松島さん自身も「こうあるべき」と思ってしまう傾向が強いタイプだったのだそうです。

思考のコントロールに取り組んでいったことで、「まあこういう状況もあるよね」と相手の状況も見極めて、自分の価値観以外のものも受け入れられるようになったのだといいます。

もちろん何でも許容するのが正しいわけではなく、許容できない部分があっても良いそうです。

3の「許せないゾーン」に入った場合には怒る判断をします。その場合には、相手への伝え方を意識することが大切なのだと教えてくれました。

 

■NGワードである「程度言葉」は使わず、伝える時は具体的な言葉で

 

実は怒る時にいわない方がいいNGワードに、「ちゃんとやりなさい」とか「しっかり守って」などの「程度言葉」を使うことは、あまり良くないのだそうです。

子どもの立場からすれば、ちゃんとやっているし、守っているのだから、そこを前提により効果的な伝え方を考えた方が良いのです。

指導する時には、例えば、足が速い相手の選手に裏を取られないようにするために「守備位置を13メートル下げた方がいいよ」など、具体的なリクエストをした方がいいといいます。

また保護者が応援する際は、ネガティブな声かけをしない方が良いのだそうです。

例えば「なんで走らないの!?」「どうしてそんなところで止まっているの!?」など、「なんで?」「どうして?」というような言葉は、何回も繰り返してしまうと責めているように聞こえてしまいます。

このような声かけが続いてしまうと、子どもはサッカーをすることが苦しくなってしまうこともあります。

追い詰めてしまうような声かけは避け、見守ってあげた方が良いのだそうです。

 

■サッカーに対するSNSでのネガティブ投稿には注意が必要 

最近の傾向として、SNSなどへのサッカー保護者の書き込みが増えているようです。SNSで言葉を呟くという行為自体は問題ないのですが、「SNSにネガティブな言葉を書き込むことについては、あまり肯定はしていない」と松島さんはいいます。

ネガティブな発信をすることによって、そこに対して批判の声を受けるということもあるので、余計イライラすることになってしまったり、中には炎上してしまい、逆にメンタル的に弱ってしまうことにも繋がりかねないと案じています。

また、SNSは同じ価値観を持つ人が集まりやすいという傾向もあります。

すごく尖った自分のコメントを書いた時に、それに対して「いいね」がつくと、その尖った考え方が正しいという風に、自分を正当化させてしまう可能性があり、間違った正義感を強めてしまう危険があるのです。

「実際は考え方が違う人はたくさんいるのに、自分の意見だけが正しいという誤解にも繋がりかねないので注意が必要です」

 

■パワハラは指導者だけの問題じゃない。子どもたちが安全安心にスポーツを楽しむために、全ての大人が意識したいこととは? 

最近、スポーツハラスメント(スポハラ)についての相談窓口が増え、報告件数が上がったことやJリーグでの指導の中でも問題視されていますが、「スポハラ」とは指導者と選手間だけの問題ではないと松島さんはいいます。

スポハラとは、「安全安心にスポーツを楽しむことを害する行為」のことであって、その対象は指導者だけじゃなく、それ以外の関係者全員、保護者や選手自身も対象になるのだそうです。

選手の安全面を確保するため、またチームの規律を破るような行為、選手の姿勢・態度面で明らかに手を抜いているようであれば、言い方を意識しながら「選手を怒る・指導した方がいい」とチームの指導者には伝えているそうですが、子どもたちやチームが楽しくサッカーができているかどうか、保護者においても自身の発言や行動に自覚を持つことが大切なのです。

 

■小学生時代がピークではない、親子ともに幸せになれるアンガーマネジメントとは? 

楽しくサッカー活動をするためには「怒りを連鎖させないっていうことがすごく大切」だと松島さんはいいます。

前編でも「怒りは伝染しやすい・連鎖しやすい」という性質を学びましたが、怒りが他の人にも広がってしまうと、そのチーム内の心理的安全性も低くなってしまうといいます。

保護者や指導者が強い言葉で声を荒げてしまうと、子どもが萎縮してしまい、楽しくプレーする機会を奪ってしまったり、「選手自身が声を上げにくい」「選手間のコミュニケーションが減ってしまう」というような状況にもなりかねません。

また、自分自身がその怒りの感情に責任を持つことが大切なのだといっています。

声かけをするのであれば、ポジティブな声かけを発信すること、見守ることを心がけるようにするといいでしょう。

サッカー経験者である松島さんは、高校・大学と進むうちに、それまでできなかったテクニックが急にできるようになったといいます。子どもの上達度合いについては個人差がありますので、長期的に成長を見てあげられると良いのではと話してくれました。

またサッカーだけに固執しすぎず、サカイク10か条の「9 サッカー以外のことも大切にしよう」という意識も大切だといいます。

価値観をアップデートし、前向きな感情を発信できるよう、まずは気軽な気持ちでアンガーマネジメントに取り組んでみてはいかがでしょうか。

 

松島 徹(まつしま とおる)
一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会 理事
上場企業複数社にて人事マネージャーとして勤務。
現在も企業人事として勤務しながらアンガーマネジメントを伝える活動中。マネジメント層向け研修や1on1など様々な階層別研修に登壇経験あり。これまでに教育委員会、社労士会、航空会社、スポーツチーム等複数の企業へアンガーマネジメント研修実施。

【主な役職・資格】
・一般社団法人日本アンガーマネジメント協会 理事
・アンガーマネジメントコンサルタント
・アンガーマネジメント経営賞プロジェクトリーダー
・本部主催講座登壇講師
・JSPO更新研修担当講師

日本アンガーマネジメント協会HP>>

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