マダイ狙いひとつテンヤ釣り入門 【リール・ロッド・仕掛け・基本動作を徹底解説】
ロッドとリールにテンヤだけ。シンプルな装備にもかかわらず、テンヤにエビをつけて海底まで落とせば、マダイをはじめいろいろな魚が食ってくる「ひとつテンヤ」釣り。ベテランアングラーはもちろんだが、ビギナーでも思わぬ獲物を手にできる釣りだ。
ひとつテンヤ釣りのリール
ひとつテンヤで使用するリールは主に小型スピニングリールを使うことが多いが、一方、磯釣りで多用されるレバーブレーキや、ベイトリールを好むアングラーもいる。
ひとつテンヤに適したスピニングリールを選ぶ際にはリールのサイズが#2500~#3000ならロッドとのバランスが取れて使いやすい。一日中、サオをシャクる動作が必須となるこの釣りでは、リールの軽さはとても重要。そういう意味では#2500クラスが無難な選択となる。
ただ、深い水深や大型マダイが期待できるエリアでは、マダイの重量に加えて水圧もプラスされることから、#3000クラスのリールのトルクは強力な武器だ。また、ハンドル1回転あたりの巻き上げ長さも増える(同じギヤ比であっても)ことも見逃せない。これはレバーブレーキも同じことがいえる。ベイトリールに関してはPEライン1号が200m巻けるサイズがよい。
そして同時に大切なのはドラグ性能だ。一般的に使用するラインはミチイトがPEライン0.6~1号、リーダーは1.7~3号をセットするのに対し、マダイの重量感ある強烈な走りや時折掛かる青物の勢いにしっかりと追随してくれるドラグの役割は大きい。
ギヤ比
リールのギヤ比であるが、頻繁にエサを取られる状況や深場では手返しを重視しハイギヤタイプをお勧めするが、私は大型マダイに対して巻き上げトルクを重視してノーマルギヤを使用している。
一方、レバーブレーキリールの特徴は、レバーをオフ状態にすることでラインを出すことができる(ベイトリールのクラッチと同効果)ことから、フォールの釣り(テンヤを上から少しずつ落としながら誘う釣り)に有効だ。ボトムを釣っている時でも、ラインを少しだけ出すことで狙いのゾーンを簡単にキープできるメリットがあり、お勧めのアイテムだ。
ベイトリールはレバーブレーキ同様の誘い下げはもちろん、安定した誘い上げと、巻き上げ時の力強さにある。
それぞれのリールのメリット
スピニング=重量◎、仕掛け落下速度◎、誘い動作〇、トルク〇
レバーブレーキ=重量〇、仕掛け落下速度◎、誘い動作◎、トルク〇
ベイトリール=重量〇、仕掛け落下速度〇、誘い動作◎、トルク◎
ひとつテンヤ釣りのロッド
ロッドはひとつテンヤ専用のロッドがお勧めだが、7~8ftクラスのエギングロッドやシーバスロッドでも代用はできるので、手軽に入門できる。
さまざまなメーカーから専用ロッドが発売されているが必須項目としては、マダイの繊細なアタリを捉えるサオ先部分、水中のテンヤを思い通りにコントロールできる胴部分。さらには重量感あるマダイをしっかり寄せやすい胴からバットにかけての適度な曲がりと反発力、一日中シャクりやすい細身のロッドというところだと思う。
中でもサオ先部分はとても大切で、さまざまな特徴を持ったサオ先を採用したロッドが発売されており、購入の際はよく吟味してほしい。
それぞれのサオ先のメリット
メタル(金属)トップ=目感度(曲がり)◎、手感度(手に反響)◎、持ち重り〇
カーボンソリッド=目感度(曲がり)◎、手感度(手に反響)〇、持ち重り〇
カーボンチューブラー=目感度(曲がり)△、手感度(手に反響)〇、持ち重り◎
グラスソリッド=目感度(曲がり)〇、手感度(手に反響)△、持ち重り△
ライン
ミチイトはPEラインの0.6~1号(0.8号が一般的)に、リーダーはフロロカーボンラインの1.7~3号を接続する(システムはFGノット、PRノット、ノーネームノットなど)が、実際に乗る船に問い合わせることが賢明。というのは、思わぬ大物(例えばアラ、ヒラマサ)が釣れるエリア、根掛かりが多いエリア、根ズレが少ないエリアなど、それぞれのエリアでラインの組み合わせを変える方が無難だからだ。
PEラインに関しては「8ブレイド(8本ヨリ)」がコスパにも優れていてお勧めだが、財布に余裕があれば「真円」に近いとされる「12ブレイド(12本ヨリ)」を使ってみたい。8ブレイド以上に表面のザラツキがなく、しなやかなことが起因する感度の良さが、水面下数10mからの情報をつぶさに伝達してくれるだろう。
リーダー(3~5m)はフロロカーボンラインを使いたい。マダイの硬い口周りにしっかりとハリ掛かりをさせるには、伸びの少ないフロロカーボンラインに軍配が上がる。よほどクッション性を重視してナイロンラインを使用する場合は、良型を釣った後には交換をしよう。そうでないと伸びきったラインではクッション性どころか強度が落ちている恐れがあるからだ。
テンヤ
通称テンヤと呼ばれるものには台形(円錐状)の形をした「テンヤ」と、丸み(球状)を帯びた「カブラ」がある。
テンヤは底面が平らなので水の抵抗を受けながら、水中をゆらゆらと落下しマダイにアピールできる。
一方でカブラは速い速度で落下することから、無駄なラインを最小限にとどめ、海底に到達してから誘いを始めるまでの時間を短縮できる。私はポイントの水深によって使い分けることが多いが、以下の状況を使い分けのポイントとしている。
それぞれのメリット
テンヤ=浅めのポイント◎、潮が緩い時◎、フリーフォール◎、テンションフォール△、巻き上げ誘い◎、ステイ◎
カブラ=深めのポイント◎、潮が速い時◎、テンションフォール〇、前方キャスト◎、巻き上げ誘い〇、ステイ〇
エサ(活きエビ)のつけ方
活きエビのつけ方は、エビは尾扇を節部分からハサミでカットする。腹部(もしくは頭部)に孫バリを刺したら、尾扇をカットした部分から親バリを刺して、エビが真っすぐになるように腹部を通して胸脚部分からハリ先を抜く。
基本動作
まずはリールのドラグをセットし、目安として強めにシャクった時にドラグ音が鳴るか鳴らないかくらいにする。
(1)テンヤを海底に着底させたらゼロテンション(ラインを張らず緩めず)の状態を保ったまま、ロッドを1~1.5mほどシャクリ上げて元の状態に戻し、しばらく(例=5~10秒間)アタリを待つ。アタリがなければ再び(1)を行う、という繰り返し。
(2)アタリは「コツコツ」と感じられたら、ワンテンポ遅らせてから強めにアワせることで、エビの頭だけが取られることを防ぎ、親バリにハリ掛かりさせることができる。
(3)マダイを掛けてからは一定のリズムでリールを巻き続ける。もし、大型にラインを出された時はリールには触れず、ラインが止まるまで待つ。また、巻き上げ時にポンピングをする際はロッドのテンションが抜けないようにロッドを操作する。
(4)釣り上げた後、次に仕掛けを入れる前には、リーダーの傷チェックを必ず行う。
対象魚はマダイをはじめ多種多様。高級魚から大型魚まで土産は盛りだくさんだ。
四季丸で実釣
4月28日、角島沖の「ひとつテンヤマダイ空中戦」に大里港(北九州市門司区)・四季丸さんから出陣。先週まで四季丸さんでは好調な釣況だった沖ノ島周辺へも向かっていたのだが、いよいよ定番ポイントでの空中戦の始まりだ。前日は全体の釣果は多くなかったものの、魚探にはそれらしい痕跡が見え隠れし全体的に大型が食ってきたという。
水深90m弱のポイントに到着すると、船長からはその都度、魚の反応が出た水深をアナウンスしてくれる。そのため、1投目は確実にボトムまで落として、ラインのカラーを確認するアクションが必要になり、以降はラインのカラーと角度を考慮しながら狙いのタナを探っていくという流れだ。
開始まもなく4.7kg本命ヒット
開始して1時間もたたないうち、ボトム近くまで落としたテンヤを巻き上げ始めた途端に、サオ先に違和感が……ひと呼吸置いてアワセを入れてみると、一瞬、ロッドが曲がったまま微動だにせず。直後、一気に手元まで曲がり込むと同時にドラグがうなりを上げ始めた。大型マダイ独特の走りだ。
リール(トーナメントISO3000LBD・SLPワークスISOスプール)のドラグは粘り気がある(ATDドラグ)ことから、必要以上にラインが出されることがなく、走られた時はひたすら止まるまで待っていればよい。自分は魚の引きの強弱に合わせてロッドをコントロールするだけで、それ以外の心配は必要ないのだ。
1尾目とあって慎重にやり取りをしていくと久しぶりに見る良型のオスマダイの姿が現われた。重さは4.7kg。食べる魚のお土産は別に考えていたので、丁寧にエアを抜いてリリースした。
6.1kgのナイスサイズ追加
早い時間にホッとできたので、これでようやく海底で口を開けているレンコダイの層の少し上2~3mまで攻めていける。どうしてもレンコダイを避けようとすると、ボトム近くの層までは攻めきれないのだ。
1時間ほどアタリが遠のいたが、ちょうどボトムから15m(タナ75m)ほど上で探っている時に、サオ先(メタルトップ)がモゾモゾと……。これもひと呼吸置いてアワせると、ロッド(紅牙テンヤゲームEXH-235)が曲がったまま、ドラグ音が響きだした。同時に、船長から「75m!」とのアナウンスが。偶然ではあるが、指示ダナにアジャストできていたようだ。
この魚は1尾目よりもサイズアップしていたのだが、掛けた直後に20m近くラインを出された後は、しばらくボトムからなかなか離れてくれなかった。それでも細イトのスリルを味わいながら、6.1kgのオスマダイの引きを楽しむことができた。
ラストも良型をキャッチ
そして3尾目は5.2kgのきれいなメスのマダイがヒット。巻きとステイを繰り返したところでアタリがでたのだが、愛用しているメタルトップのロッドは抜群の手感度・目感度に加え、カーボンソリッドのようにサオ先部分が大きく曲がり込まないので、大ダイ特有のモゾモゾというアタリを明確に伝達してくれるのが特徴だ。3尾目も無事に取り込み、2尾目に続いてリリースした。
結局この日のヒットパターンは明確には分からなかった。魚も単発だったことから、上下幅広く探り、多少「巻き」を意識した釣り方が良かったのかもしれない。もう少し魚が溜まってくると、フォールでも積極的に食ってくるタイミングが訪れると思う。
この時期の大型の乗っ込みマダイは1個体あたりの繁殖数も多いので、今後もできる時にはリリースをしていきたいと思う。自分が食べる分は脂がたっぷりと乗っているレンコダイを持ち帰り、おいしくいただいた。
<週刊つりニュース西部版 高原稔/TSURINEWS編>
この記事は『週刊つりニュース西部版』2024年5月31日号に掲載された記事を再編集したものになります。