Yahoo! JAPAN

人材不足の解決策になる外国人介護士 受け入れと採用のポイントを解説

「みんなの介護」ニュース

長谷川 昌之

受け入れ実績が年々増加する外国人材の活躍

日本の高齢化に伴う介護人材不足が深刻化する中、外国人介護士への期待が高まっています。2023年5月末時点で、介護分野の特定技能(特定の専門知識や技能を持つ外国人労働者)の在留者数は21152人に上り、EPA(経済連携協定)に基づく介護福祉士・候補者も2887人(うち資格取得者822人)に達しました。在留資格「介護」は6284人、技能実習生は15011人と、いずれも受け入れが拡大しています。実際に外国人介護士を受け入れている割合は、EPAが14.4%、技能実習生が76.5%、特定技能が35.3%となっており、人手不足の解消に大きく貢献しています。

出典:『外国人介護人材に係る人員配置基準上の取扱いについて』(厚生労働省)の資料を基に作成

一方、言葉や文化の違いなど受け入れ側の不安も根強く、円滑な受け入れのために克服すべき課題も残されています。

外国人介護士を受け入れるメリットと課題

外国人介護士の受け入れは、人手不足の解消だけでなく、職場に新たな活力をもたらす効果も期待できます。異文化交流を通じて利用者の生活の質の向上にもつながるでしょう。EPAによる受け入れは、アジア諸国との二国間の経済連携を強化する意義もあります。

課題としては、日本語でのコミュニケーションや日本の生活習慣への適応に時間を要することが挙げられます。また、宗教上の配慮など受け入れ施設側の負担増も懸念材料です。

事前の研修の充実や生活支援など、受け入れ体制の整備が欠かせません。

外国人介護士の受け入れ制度と4つの在留資格

外国人介護士の主な受け入れ制度は、EPA、在留資格「介護」、技能実習、特定技能の4種類です。

EPAは二国間の経済連携協定に基づき、一定の日本語能力と介護福祉士候補者としての資格を持つ人材を最長5年間受け入れる制度です。資格取得を目指しながら介護施設で就労・研修を行います。

在留資格「介護」は、介護福祉士の国家資格を取得した外国人が長期的に働くことを想定した在留資格で、平成29年に新設されました。日本の介護現場で即戦力として期待される人材像と言えます。

技能実習は、日本の介護技術を習得し本国への技能移転を図ることを目的に、最長5年間の実習が可能な制度です。平成29年から介護職種が対象に加わりました。一定の専門性を身につけた人材の育成が期待されます。

特定技能は、深刻な人手不足対策として平成31年に創設された在留資格で、介護分野でも外国人材の受け入れ拡大につながっています。介護福祉士の資格は不要ですが、一定の技能と日本語能力が求められ、在留期間は通算5年までです。

特定技能「介護」の配置基準上の扱いについて

特定技能「介護」の外国人については、就労と同時に介護施設の人員配置基準に算入できる取り扱いとなっています。ただし、一定期間は他の日本人職員とチームを組んでケアに当たるなど、受け入れ施設での適応をサポートし、ケアの質と安全性を確保するための体制づくりが求められている点には留意が必要です。

外国人介護士の活躍を引き出す職場づくり

外国人介護士の定着率の高い事業所に共通しているのは、職場の理解と支援体制の充実です。言葉の壁を乗り越えるためのサポートや、生活面でのきめ細やかなフォローが不可欠と言えます。

外国人スタッフ同士の交流の機会を設けたり、日本人職員への多文化理解の研修を行うなど、相互理解を深める取り組みも効果的です。キャリアアップの仕組みを用意することで、モチベーションの維持にもつながります。

ある施設では、外国人介護士のために日本語学習や介護技術の研修に加え、生活ルールから食事のマナーまで日本の生活文化を学ぶ場を設けています。また、定期的に個人面談を行い、悩みを早期に汲み上げる体制を整えています。外国人のリーダーを育成し、後輩の相談役を担ってもらうことで、定着率の向上につなげています。

全体で見ると、住居の支援や行政の手続きなどをしている事業者が多く、生活基盤を整える基本的な支援をしっかりしていくことも求められます。

出典:『外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック』(厚生労働省)の資料を基に作成

介護現場の人材不足解消に向けて

すでにEPA介護職員を雇用している介護施設では、今後も受け入れる予定が78.9%と積極的な施設が多くなっています。

出典:『外国人介護職員の雇用に関する介護事業者向けガイドブック』(厚生労働省)の資料を基に作成

少子高齢化が加速する中、外国人介護士なくして介護現場の人材不足は解消できません。その一方で、言葉や文化の壁を乗り越え、利用者本位のケアの質を確保するためには、周到な準備と受け入れ体制の整備が欠かせません。

介護の仕事は言葉だけでなく、思いやりの心を通わせることが何より大切です。外国人介護士が、利用者と心を通い合わせながら、いきいきと働き続けられる環境を整備することが、これからの日本の介護を支える鍵を握るでしょう。

【関連記事】

おすすめの記事