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未来を良くするためのパン作り【STONES BAKERY ストーンズベーカリー】(和歌山県・橋本市)

パンめぐ

石窯焼きならではの深く香ばしい香りのトップ、爽やかなライ麦の草原を思わせる香りのボトム

「リジェネラティブ・ベーカリー」シリーズ

北海道産のライ麦を使ってお店がパンを焼き、そのパンを私たち消費者が食べることが、世界的に注目されている「環境再生型農業」の普及につながるということから、ライ麦“ハンコック”を使っているお店をシリーズでご紹介しています。

第7弾は「STONES BAKERY(ストーンズベーカリー)」の山口勉シェフにお話を聞きました。
5年半に亘る東大阪市東石切町での営業を終えられ、2023年11月4日、和歌山県橋本市に移転オープンされました。
東大阪市の店舗の時から『国産小麦使用、自家培養の発酵種、石窯焼き』をベースにされています。

若い頃に一時期飲食店に勤め、いずれ飲食業界に戻ろうと思ったけれど「ものづくり」が好きで建築業へ。
その間にご縁があって農機具メーカーのサラリーマンをやったことも。
全国の農家さんを回ったり、農協や大手の農機具メーカーとも仕事をし、日本の農業の実態みたいなものが見えてきたそう。

その中で『休耕田を何とかしたい』という想いから色々調べていくうちに、
・日本人はお米より小麦にお金を払っている
・その小麦のほとんどを輸入に頼っている
・田んぼが休耕田や耕作放棄地になっているところがものすごく多い
ということに気づき、「それならそこで小麦を作ればいいのでは?日本で作った小麦でパンを作って売りたい!」という想いに辿り着かれました。

パン屋を開くにあたり、農機具メーカー時代に知り合った農家さん達に「小麦を作ってほしい」と依頼をしたら、作るのはいいけれど製粉してくれるところがなくて無理なんだよと言われ、それならまずは国産の材料に限定して問屋さんから仕入れてパン作りをしよう、とスタート。

ライ麦応援に参加することになったきっかけは?

パン屋をやろうと思ったのは、現代人の食の乱れに対して危機感を持ったから。
パン作りの根底にあるのは、美味しいものを作りたいという気持ちはもちろんあるけれど、一番に掲げるのは『未来を良くする方向に向かっていきたい!」という想い。
北海道の「アグリシステム」さんのライ麦はハンコックに変わる以前から使用していて、
・次世代に健全な土と安全な食を未来に繋いでいく「環境再生型農業」の取り組み
・育てる人、作る人、食べる人が繋がり「食卓の安心を守る」取り組み
等、活動や考え方に共感したからです。

今までに使ったライ麦との違いは?

クセがなく非常に食べやすいです。
ライ麦を敬遠する人もいるので、多くの人にライ麦に親しんでもらうためには食べやすいことが一番。
ハンコックならライ麦100%でもイケる!と思いました。
ハンコックに切り替えた時にSNSでちゃんと情報発信をしたら、お客様にもその想いが伝わり店頭でも通販でも売れ行きがアップしました。

どんな商品に北海道産ライ麦を使っている?

スターターにライ麦100%のサワー種を使っているのですべての商品に使われていることになります。
ライ麦パンとしては以下の2商品。
・十勝ライブレッド100(ライ麦全粒粉100%)
・十勝ライ100シード(ライ100の生地にヒマワリ、かぼちゃの種、オートミール、アマニ、小麦ふすまを入れたもの)
時々、ミッシュというライ麦1/2、小麦1/2配合のパンも焼きます。

お菓子にもライ麦を使います。
ライ麦はグルテンの含有量が少ないのでグルテンが邪魔をするお菓子作りには向いているのです。
ヴィーガンクッキーはライ麦とオートミール、粗糖などで作っています。

ハンコックを使った商品を実食

◆十勝ライブレッド100
十勝産ライ麦ハンコック100%、サワー種、塩のみ。
袋に鼻を突っ込んでくんくん嗅ぐと、甘い焼き芋に似た香り(私とパン職人の友人の中では美味しいライ麦パンはこの香りがする!と一致しています)。
トップは石窯焼きならではの深く濃い焼きの香ばしい香り、ボトムは爽やかなライ麦の草原を思わせる香り。
クラムはナイフに生地がくっつくほどねっとりとして水分が閉じ込められていて、日が経つごとに全体が馴染んできます。

酸味がしっかりあるので、バターやチーズなどの乳製品の油脂と相性抜群なのでチーズトーストやオープンサンドなどもいいですし、家にあったふき味噌を塗ったらこれまた最高に美味!

山口シェフのオススメの食べ方は、温かいお蕎麦を食べた後に出汁が残って、もう少しお腹に何か入れたいなと思ってライブレッドを浸して食べたら美味しかったんですよ!と。
私も出汁と一緒に食べてみたら想像以上に合う!
出汁に含まれる昆布や鰹節の旨み成分とライブレッドの乳酸菌発酵の旨みの相乗効果とでもいうのでしょうか。
お米をわざわざ炊かなくても、ライブレッドがあればナイフでカットして洋食にも和食にも合う一食が手軽にできてしまう、嬉しい発見でした。
◆十勝ライ100シード
デンマークでいうところのルブロと同じ。
焙煎した胡麻のような香ばしい香りがして、こちらもクラムはナイフに生地がついてくるねっとりとした高加水。
ぷちぷち弾ける小さなシードの油分で全体をまろやかに包み込み、食べやすい仕上がりに。

クリームチーズを塗ったり、アボカドスライスを載せても美味しいです。
いきなりライ麦100は…と思う方はシード入りから試してみるのもオススメです。
◆ライ麦とオートミールのヴィーガンクッキー
ザクザクの食感が心地よく、食べ応えがあります。
粗糖のほんのり優しい甘みが嬉しい。
カカオニブ入りと知り、最初は何か香るなあと思ったものの気づかなかったのですが、一枚まるまる食べたらしっかり存在を感じました(よくあるカカオニブのガリガリとした食感はなく、やわらかいので食べやすいです)。
腹持ちもいいですし、ミネラルなどの栄養素も摂れるので、これを朝食用にまとめ買いする人の気持ちがよくわかりました!
私も通販で大量購入したい!!

和歌山・橋本市に移転したのはなぜ?

冒頭にも述べましたが、もともとは知り合いの農家さんに小麦を作ってもらい、それを製粉した小麦粉を使ってパンを焼きたい!という構想でパン屋を始めました。
製粉をする人がいない⇒それなら自分で製粉所をやりたい!という想いが強くなり、平塚市にある「ミルパワージャパン」のことを知り石臼道場にも参加して製粉について学びました。

その過程で、『近隣府県で採れた小麦をうちで製粉し、それを同じく近隣府県のパン屋、うどん屋、お菓子屋、ラーメン屋、その他飲食店に使ってもらう流れ、仕組みを作ろう』と考えるようになりました。

橋本市には休耕田が多く、製粉所ができそうな倉庫がついた物件に出会えたので即決し、薪を燃料とする石窯焼きのパン屋に辿り着いた、というのが現状です。
東石切町のお店も自分で設計し、煉瓦を積み、屋根を葺き、漆喰を塗って建てた工房でした。
今回は、基礎工事は専門業者さんに依頼し、あとは自分で薪窯を作りました。
フランス人のパン職人、ルイ君にも手伝ってもらい完成したのがこちら。
ここでパンを焼きながら、製粉所を整備し稼働できるようになったら、近隣府県の農家さんに小麦を作ってもらうよう依頼し、製粉事業を軌道に乗せていきたいです。

これからどのようなお店にしていきたい?

パン業界の問題として思うのは、材料が輸入ベースであることや添加物の多い副材を使った総菜パンや菓子パンが一番売れるということ。
その場で作ってその場で売る「リテールベーカリー」が増え、さらに言うならハード系のシンプルな食事パンが美味しいという理解度を高めていきたいです。

人口に対して必要なパン屋の数というのがあると思っていて、多すぎる地域と足りていない地域が均一化されればとも思っています。
慢性的に人手不足で疲弊している職人さんも見てきているし、うまく回るにはどうしたらいいのか悩ましいですね。

消費者のパンに対する意識も変わる必要があるのかなと思っていて、「良い食品」としてのパンを知ってほしいですね。
スーパーやコンビニで手軽に買えるのがパンですが、まずはそこを「近所のパン屋」に置き換えて買うという環境にしていきたいです。
生産者とパン屋と消費者を繋ぐ輪(距離)が今は大きいけれど、それがどんどん小さくなっていくことを思い描きながら仕事をしています。

今のパンブームは嗜好品としてのパンであったり、パンを食べたら太って困る、パンは体に悪い(グルテンフリーがいい)など科学的根拠がないまま、テレビやSNSなどによりイメージがついてしまっている。
本来パンはとても健康的で機能的な食品だと思っています。なので、食べ方も含め広く一般の人に知ってほしいし伝えていかなければとも思っています。

パン食文化研究室が運営している『未来を変えるパン』というサイトがあります。
https://miraipan.jp/
こちらの活動目標である
1.各地に小麦農家さんが増える「自給率向上」
2.地元小麦を使うパン屋さんが増える「地産地消」
3.健康や環境に配慮したパンを選べる「持続可能な食卓」
が、僕の目指している活動でもあります。

これからも「未来を良くするパン作り」をしていきたいです。

1時間以上もの時間を割いて、これからの日本のパン屋の在り方を熱く話してくださった山口シェフ。
パン好きの皆様のために、全国のパン屋さん情報やパンにまつわるイベントなどをお伝えしてきている私ですが、単に美味しいというだけでなく、これからの世代のため、食の未来を考えたパン作りをしているお店についてお伝えしていこうと改めて考えるきっかけをいただきました。

「STONES BAKERY」 さんのパンは、現在、水曜と土曜に和歌山の店舗で販売をしているほか、通販もされています。
気になる方はInstagramをチェックしてみてくださいね。

※リジェネラティブ・ベーカリーについては以下をご参照ください。
https://www.agrisystem.co.jp/regenerativerye2023.html

SHOP INFORMATION
【店名】STONES BAKERY
【住所】和歌山県橋本市隅田町中島881
【電話番号】090-6111-8140
【営業時間】11:00~ ※来店前にSNSでご確認ください
【定休日】月・火・木・金・日 ※来店前にSNSでご確認ください

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