GDP年率速報から上方修正も、注目すべきは“最終需要”
6月11日の「おはよう寺ちゃん」(文化放送)では、火曜コメンテーターで上武大学教授の田中秀臣氏と番組パーソナリティーの寺島尚正アナウンサーが、GDP年率の上方修正について意見を交わした。
今回のGDPの改定値を良いものとしてマスコミが報道するのは違う
2024年1〜3月期の国内総生産(GDP)改定値は実質の伸び率が年率換算でマイナス1.8%と、5月発表の速報値(年率マイナス2.0%)から若干上方修正された。
直近の経済指標を反映した結果、設備投資が上振れした。
内閣府の担当者によると、品質不正問題による自動車の生産・出荷停止で消費や設備投資が落ち込む構図に変化はなかった。
寺島アナ「実質GDPが上方修正されたものの、2期ぶりのマイナス成長は変わらなかったわけですが、改めて田中さん、この結果どう受け止めてらっしゃいますか?」
田中氏「マスコミの報道を見ると“設備投資が上振れした結果、改定値が上方修正したので明るさが見えてきた”みたいなニュアンスの記事が圧倒的なんですけど、僕なんかはそうは見なくて。例えば“最終需要”という在庫投資を抜かしたGDPに注目すると、景気が悪くても売れないから在庫が増えるし、逆に物がいっぱい売れて在庫を積み増さないと対応できなくても増えるんです。そういった意味で非常に微妙なので、在庫投資を抜かした方が景気実感に近いんです。それを最終需要という項目で見ると、前月比はほとんど同じですが、前年比で見るとマイナスに転落しているんです。全体状況は悪くなっているはずなんですが、そういったことはあまり報道されてないです」
さらに田中氏は、消費の数字が回復していないことを指摘。
田中氏「日本経済が良くなるには賃金と物価の好循環、それを支えるためには消費が良くならないといけないんですが、消費は相変わらず同じ数字のまま。これ思うより中身は悪いですよね? 昨日、街角景気って呼ばれている内閣の景気ウォッチャー調査が発表されたんですが、中身を見ると悪いままなんです。どん底に悪いわけじゃないですが、不安定を抱えたまま今やっている骨太の方針でも“プライマリーバランスの黒字化を来年度目指しましょう”と、つまり“これからは緊縮です”というシグナルを飛ばしたり、日銀決定会合で国債買い入れの減額をやって、“将来的には利上げするよ”みたいなことを言ったりしているわけです」
田中氏は対外的な要因による経済状況の悪化を危惧する。
田中氏「経済状況がイマイチになっているところは今後、大きく炎上する可能性も秘めていますよね? 何か対外的な要因、国際状況が悪くなるとか戦争とか、自然災害とか天変地異とか。天候問題だって食料不作が世界的に起こって食料価格が上昇するとか、現に起こっていますから。悪化してしまうと経済がさらに弱くなってしまいます。そう考えると今回のGDPの改定値を、そんなに良いものとしてマスコミが報道するのはどうかな?と思います」
GDPの半分以上を占める個人消費の伸び率マイナス0.7%で速報値と変わらず、4期連続のマイナス。1~3月期は物価高が続き耐久財などの販売が振るわなかった。
寺島アナ「物価の上昇が続くなか、賃上げや定額減税などによって消費を上向かせることができるか? これが焦点となっているわけですが、内需の柱である個人消費が4期連続でマイナスですね」
田中氏「春闘なんかは、連合傘下の組合がある企業の報告をまとめただけですから。それ以外の中小企業の賃上げ状況を見てみると、賃上げをする余力が今年はもうなくなっています。人手確保のためにやむを得ず賃上げをすると、他のところに影響が出ますよね。先ほど上がったと言われた設備投資が無くなると、経済の新陳代謝を大きく阻害すると思います」
寺島アナ「たしかに人件費に割いてしまって、本来は設備投資に使おうと思っていた分を出している可能性がありますよね」
田中氏「それで設備投資をやろうとしたら、人件費にしわ寄せがきて人材確保できずに、最悪は人手不足倒産みたいになる、と。倒産の数も10年ぶりに増えていて、これは“コロナ渦明けて、倒産が増えるのでは?”と予想されていましたが、でも思う以上に増え始めている気がしますね」
〈出典〉
GDP年率1.8%減、1〜3月改定値 設備投資が上振れ | 日本経済新聞 (https://www.nikkei.com/)