【介護のプロが教える】介護施設の見つけ方。「ここしかない」と思い込まないで!
ご自身やご家族の介護について、不安を感じることはありませんか? もしそうなら、この一冊があなたの心強い味方になるかもしれません。予約が取れないと話題の介護施設「くろまめさん」を運営する稲葉耕太さんの著書(KADOKAWA)。この本では、介護の中で直面する予期せぬ「大ピンチ」に、どのように向き合い、乗り越えていくかのヒントが具体的に紹介されています。稲葉さんのユニークな「めっちゃ笑える介護!」という視点を取り入れることで、日々の介護が、きっと今よりもっと心穏やかで、笑顔の多い時間へと変わっていくはずです。
※本記事は稲葉耕太(くろまめさん) 著の書籍『介護の大ピンチ解決します』から一部抜粋・編集しました。
デイサービスが合わなかった
最初からぴったり合う施設に出会うことのほうが珍しいかも?いろいろ見に行ってみたらいいんです
介護サービスは「ここがぴったり!」と思っても、合わないこともあるんですよね。その一例を紹介します。
脳梗塞の影響で目が見えにくくなった嵩たかしさん(81歳)は、最近は一日中、家で横になっています。動かないから足腰も弱ってきて、お風呂場で転びそうになりました。心配した妻のユミさんの勧めで、デイサービスに通いはじめたのですが、どこの施設にもなじめません。
そこで最後の駆け込み場所(?)として、くろまめさんにやってきました。
いろいろなデイサービスになじめなかったと聞いていたので、どんな気難しい人かと思いきや、嵩さんはおっとりとして、かわいらしいおじいさんでした。かなり大柄で体重もあったので、小柄なユミさんがお風呂を手伝うのは大変だったことでしょう。
「必ずお風呂に入れてやってください」と頼まれました。
嵩さんが来た初日、さっそくうちの自慢のヒバの木のお風呂に入ってもらいました。山のように大きな背中を僕が流していると、
「ああ~、やっぱり普通の風呂はいいなあ~」
しみじみした口調で嵩さんは呟きます。どうやらほかの施設でのお風呂は機械による入浴(通称、機械浴)だったらしく、それがどうにもつらかったのだと言います。それと、いろんなレクリエーションをやらされるのも嫌だったと。
「僕ぁね、ただ、家にいるみたいに、のんびりしたいだけなんです」
「わかります」
僕はうなずき、こう続けました。
「ここではご自宅みたいに過ごしてくださいね」
家にいるのと同じようにくつろげる場所をつくること。まさにそれが僕の目指す介護施設だったので、嵩さんの言葉に励まされた気持ちになりました。
ピンチを分解
嵩さんの場合「機械浴ではなく普通のお風呂に入りたい」「自宅と同じ過ごし方をしたい」、この2点をデイサービスに求めていたことがわかりました。
人によってデイサービスに求めるものはさまざまです。病院のように機能的なつくりの施設を望む人もいれば、くろまめさんのように普通の家みたいなところがいいという人も。通いはじめたら「なんか違う」と思うこともあるでしょう。それでいいんです。最初から100%合う施設を見つけられることのほうが珍しいんです。一度決めたからといって「ここしかない」と思わずに、合わなければまた見学に行ってみることをおすすめします。
※本記事に掲載されている情報は2025年4月時点のものです。掲載の内容には細心の注意を払っておりますが、万が一本記事の内容で不測の事故等が起こった場合、著者、出版社はその責を負いかねますことをご了承ください。