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【刑務所の作業製品】受刑者による“塀の中と外”をつなぐ全国の逸品たち。多彩な品ぞろえの「静岡矯正展」は10/26(土)開催

アットエス

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「刑務所の作業製品」。先生役は静岡新聞の川内十郎論説委員です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年9月10日放送)

(山田)きょう着ているのはアロハシャツですね。おしゃれですてき。

(川内)沖縄刑務所で作られた、その名も「南獄アロハ」です。色遣いが気に入っています。

(山田)面白いネーミング。物も良さそうですよ。

(川内)それから、これは直販サイトや刑務所に併設された専門店舗でダントツの人気という固形せっけん「ブルースティック」。体操着や運動靴などの頑固な汚れもすっきり落ちると評判で、包みの「汚れ落としのスーパースター」のうたい文句に自信がうかがえます。どっちも先日、静岡市にある静岡刑務所の展示即売所で購入してきました。

(山田)このせっけん、ほしい。製品は受刑者の方たちが刑務所の中で作っているんですよね。

(川内)静岡新聞の9月8日付「時論」で「『塀の中と外』つなぐ逸品」のタイトルで書かせていただきましたが、以前、商業施設で開かれていた作業製品の即売会で革靴を手にして「おっ、いい仕事しているな。値段も良心的」と感心して以来、気になっていました。静岡刑務所の前を車で通り掛かったら、「刑務所作業製品展示即売所 気軽にお越しください!」の看板が目に止まり、常設店舗があることを初めて知ったんです。

(山田)「時論」、読みました。タイトルの趣旨が良く分かりました。

作業製品は全国で4000品目以上

(川内)刑務所敷地内の店舗に入ってまず目に飛び込んできたのは、豪華な「おみこし」。富山刑務所で作っていて、作業製品は伝統文化も支えているんですね。品ぞろえは多彩で、全国の刑務所で作られた木工品や革製品、衣類、日用雑貨などが並んでいます。

想像以上に、今っぽいというかデザインも洗練されていると感じました。即売所は平日に開いていて、来訪者は一日平均1組ほどですが、年齢層はさまざまで、リピーターもいるとのことです。

(山田)いい物だと知っている人は来る。根強いファンがいるんですね。

(川内)製品は懲役刑の受刑者に課せられた刑務作業の一つとして作られていて、全国で4000品目以上あります。ここに直販サイトのカタログを持ってきましたが、その充実ぶりが分かると思います。各刑務所の作業専門官という専門の技術と資格を持つ職員が製品の企画開発や作業指導をしていて、デザインや機能も進歩しているようです。

ネーミングも工夫されていて、例えば「横浜刑務所で作ったパスタ」はもちもち食感が人気で、「マル獄」のロゴが入った、函館少年刑務所の「マル獄シリーズ」の帆布製品なども知られています。今回、多彩な製品を知って、それまでのイメージがいい意味で覆されました。

(山田)革靴、財布、ベルト…すごい品ぞろえ。僕、「マル獄」を2点持っているんです。かっこいいですよ。

(川内)山田さん、一歩進んでいますね。

(山田)実は、静岡刑務所で製品を展示即売する「静岡矯正展」の司会を4年ほどやらせてもらったことがあって。

(川内)そうなんですね。

ふるさと納税の返礼品にも

(山田)静岡刑務所ではどんな物を作っているんですか。

(川内)オリジナルは県産材を使った木工製品や印刷製品など25品目あります。昨年度の新製品、「クラフト帽子キット」は全国刑務所作業製品審査会で入賞しました。トイレットペーパーストッカーなどは静岡市のふるさと納税の返礼品にも採用されています。

あと、木工作業で出た木くずは静岡大の馬術部に無償提供されていて馬の寝床になっています。利用後は馬のふんと混ぜて堆肥化され、近隣農家に無償で配布するとのことです。

(山田)そんな点でも地域とつながっているんですね。

更生への理解を促す存在

(川内)製品の販売や管理は、公益財団法人の「矯正協会」という組織が担っていて、2022年度の総売り上げは約5億9800万円。売上金の多くは原材料費に充てられていて、一部は犯罪被害者支援団体に寄付されています。

受刑者には作業報奨金というのが支払われますが、これは原則、出所時とのことです。刑務所の再入所者のうち、約7割が無職という実態を見れば、働く習慣やスキルを身につける意味は大きいと思います。

罪を犯した人の更生への社会の理解促進という点を含め、製品は「塀の中と外」をつなぐ存在と言えるでしょう。出所した受刑者の雇用という点では、製品を見て「これは即戦力になる」と、雇用者の関心を高めることにもなっているようです。

(山田)雇用者の理解というのは、本当に大事だと思います。

(川内)製品を購入することが、再犯防止の一助になっているということです。刑務官の方に話をうかがうと、受刑者には「あなたの作った製品が人気だよ」というような声がけもしているそうです。こうしたことが、本人の励みや社会に受け入れてもらっているという気持ち、自己肯定感につながるのではないでしょうか。

「拘禁刑」の導入でどう変わるか

(山田)製品づくりに変化を与えそうな制度改正があるとうかがいましたが。

(川内)懲役刑と禁錮刑という区分を廃止して「拘禁刑」に一本化する改正刑法が2025年6月に施行され、刑務作業は義務ではなくなります。

では製品づくりはどうなるのでしょうか。法改正は立ち直りを重視した柔軟な処遇が目的で、静岡刑務所では施行を見据えて受刑者による製品開発の話し合いなどを昨年度から試行しているとのことです。受刑者が作業だけでなくクリエーティブな部分にも関わることを目指します。

つまり、「懲らしめから立ち直り重視に」という趣旨に沿って、社会に出てから役立つ能力や知識の習得に力を入れ、再び塀の中に戻ってくる可能性を低くしようという狙いです。作業量自体は減りそうですが、より魅力ある逸品が生まれるのではないでしょうか。

(山田)法改正が、新たな展開につながるんですね。近々、皆さんも刑務所作業製品に触れられる機会があるようですね。

(川内)山田さんも司会をやられたという、恒例の「静岡矯正展」が今年は10月26日の午前9時から午後3時まで、静岡刑務所で開かれます。関心を持たれた方は、足を運んでみてはいかがでしょうか。

(山田)皆さん、私の経験では、開始の段階で行列ができます。できるだけ、早めに行ってください。きょうの勉強はこれでおしまい!

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