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すべて『自分の力』で解決してしまう!? 強くて格好いい女性主人公を描く! 十夜先生、クレハ先生、中村颯希先生の作家鼎談インタビュー!!

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

7月2日に一迅社ノベルスから刊行された『わたしの創った千年王国1 天才魔導師の自由気ままな転生無双譚』、『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?2』の発売を記念した今回限りのスペシャル企画!

2作品を手掛けるクレハ先生と十夜先生、そしてTVアニメ化も決定している『ふつつかな悪女ではございますが ~雛宮蝶鼠とりかえ伝~(※以下『ふつつかな悪女』)』シリーズの著者、中村颯希先生を加えた御三方に、キャラクターの魅力や作品のこだわり、創作論をお聞きしました!

※本インタビューはネタバレを含みます。

 

【写真】十夜、クレハ、中村颯希の作家鼎談インタビュー!!

「私はこういうタイプが好きなんです!」って押し通して書いたんです

──本日は、一迅社ノベルスレーベルで強くて格好良い女性主人公を描くお三方に集まっていただきました。皆さま、よろしくお願いします。

クレハ:はじめましてよろしくお願いします。『わたしの創った千年王国』を書いているクレハです。

中村颯希:中村颯希です、よろしくお願いします。『ふつつかな悪女』シリーズを書いています。

十夜:はじめまして十夜です。『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?』を書いています。

──それぞれご活躍の皆さんですが、こうして顔を合わせてお話しされるのは今日が初めてなんですね。

クレハ:はい、おそらく住んでいる場所が違うので、お会いする機会ってなかなかないんですよね。

中村颯希:たしかにそうですよね。ただクレハ先生とは、SNSですこしやり取りしたことがありますね。

十夜:私はおふたりとお話しするのは、完全に初めてですね。

中村颯希:ただ担当の編集者さんが3人とも同じなので、インタビューが始まる前に「締め切りが厳しい!」って話でひと盛り上がりしました。(笑)。

──そうだったんですね(笑)。それでは改めて、皆さんが小説を書き始めるようになったキッカケからうかがいたいと思います。この中で執筆歴が一番長いのはクレハさんで、2013年から投稿を始められたそうですね。

クレハ:私が一番長いんですね。びっくりしました。そうですね、昔からライトノベルは好きだったんですが『小説家になろう』さんのような投稿サイトが出始めたとき、他の方々が投稿しているのを見て、私も書いてみようかなと思ったのがきっかけです。

それで最初に『リーフェの祝福 ~無属性魔法しか使えない落ちこぼれとしてほっといてください~』(アリアンローズ刊)というファンタジーものを書いて、その次に書いた『復讐を誓った白猫は竜王の膝の上で惰眠をむさぼる』(アリアンローズ刊)で商業デビューしました。そのあと処女作のリーフェも書籍化してもらいましたが、やっぱりファンタジーって空想の世界に行ける、現実で味わえない世界を体験できるところが魅力だなって思っています。

 

 
十夜:クレハさんはベストセラー作家さんでいらっしゃるので、本屋さんに行ったらどこにでもクレハさんの本が積んである状態ですよね。

中村颯希:わかります! 配信サイトさんの受賞式でお見かけしたときもクレハ御大の背中が輝いていました。クレハさんの作品って、すごく読者のツボをついてくるんですよね。私は『鬼の花嫁』シリーズ(スターツ出版文庫刊)がすごく好きなんですけど、本当に王道のド真ん中をついてくるというか。薄幸ヒロインが「ここで愛されてほしい」とか「ここで活躍してほしい」っていう読者の欲求ド真ん中を、正確に撃ち抜いてくれるんです。それが気持ちよくて、本当に素晴らしいんですよ。

クレハ:ありがとうございます。そうですね、私は薄幸だけれど強い主人公、守られるだけじゃない主人公が好きなんです。

十夜:それに、クレハさんは文章がもう本当にお上手ですよね。お話も整理されているので、読んでいても迷うことなく、気持ちよく読めるんですよね。人間を書くのがお上手で、どの作品も特にヒーローがメチャクチャかっこいい! なので、まず私はヒーローにハマッちゃいます(笑)。

クレハ:ありがとうございます。恐れ多いですが嬉しいです。ヒーローのキャラは主人公を軸に設定することが多いですね。例えば、か弱い主人公の相手となる人だったら俺様感が強いほうが合うのかなぁとか、逆に強い主人公なら対等にいられるキャラのほうが会話のときテンポよくやり取りさせれるんじゃないかなぁとか。

 

 

──主人公との相性やバランスを、しっかり考えられているんですね。中村先生も商業デビューは2016年とのことですが、小説の投稿を始められたキッカケは何だったんでしょう?

中村颯希:私はもともと文章を書くのは好きで、中学校のときの連絡ノートにエッセイみたいなものをよく書いていたんです。ショートストーリーだったり、新聞のコラムみたいな感じで、面白かった出来事や、深く考えたことを書いてみたり。そしたら担任の先生が「これは読みごたえがあるよ!」ってクラス中で回し読みをして盛り上がったこともあって。

文章を書くのが好きという気持ちはずっとあったんですが、大学時代に初めてミステリー小説を書いてコンテストに応募してみたら、結構いいところまで行けたんです。受賞には至らなかったんですけど「意外と小説書けるのかも」っていう気持ちが生まれて。そのあと社会人になって少し時間ができたときに、現実投避がてらWEB小説を読むことにのめり込んで、もしかして今だったら私にもWEB小説が書けるかも?と思って挑戦してみたという経緯です。

──その処女作が『無欲の聖女は金にときめく』で、これもファンタジーですね。

中村颯希:そうですね。ただ私の中ではWEB小説のファンタジーと、自分が読んできたヤングアダルトのファンタジーは別物なんです。後者は『ハリーポッター』のような重厚に世界観が作り込まれていて、児童にも大人にも読まれるもの。前者は主人公たちを活躍させるために用意されたファンタジー世界……という認識なので、私自身あんまりファンタジーを書こうと思って書いていないかもしれないですね。主人公を活躍させるための舞台設定を用意しようとすると、自然とファンタジー寄りになっていくという感じです。

クレハ:中村さんの作品は、まず主人公が面白いんですよね。どの作品もヒロインがすごく光っているので、見ていてすごく爽快で楽しいんです。

中村颯希:嬉しい! 実はミステリー小説を応募したとき、選考に関わった方から「君の小説はキャラクターが薄いね」って言われたことが、すごく自分の中に残っていたんです。

十夜:え、本当に!?

中村颯希:そうなんです。だからWEB小説を書くときは、とにかくキャラを濃くしよう!ということを意識しているので、何かが好きすぎてちょっと変みたいな主人公を書くことが多いんです。今までもお金が好きすぎる主人公とか、BLが好きすぎる主人公とかを書いてきましたけど、好きなものがハッキリしていると、シチュエーションも思い浮かびやすいし、書いていても楽しいし、キャラを暴走させやすいんですよ。

なので『ふつつかな悪女』の玲琳は、好きすぎるものが見えにくいので、私の中では個性の乏しいヒロインだったんです。だけど読者さんから「めっちゃキャラ濃いです!」と言われて「本当に? こんな真っ当な主人公で、ちょっと狂気足りてなくない?」って心配になりました(笑)。

 

▲病弱だけど周囲から愛される玲琳(左)と、嫌われ者で卑屈な慧月(右)との入れ替わり物語(ふつつかな悪女)

 
十夜:全然そんなことないですよ! 中村さんの作品は、どの作品も視点と感性が独特で、もう絶対に真似できない。他の方には絶対に書けないお話を読むことができて、スピード感があって、とにかくキャラが男前ですね。特にヒロインは、誰が読んでも好きになるキャラクターだと思います。

中村颯希:嬉しいです。こんなに褒めていただいて!

 

 

──そして十夜先生は、最初の小説投稿が2019年。処女作の『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』(アース・スター エンターテイメント刊)は、すぐに書籍化されたんですよね。

十夜:そうですね。小説を書いたのは初めてだったんですけど、WEBサイトにアップして4、5日ぐらいで書籍化のお声がかかりました。ただ、投稿したのも特に大きなキッカケがあったわけではなく、私、定期的に何か好きなものができるタイプなんですよ。

以前はオンラインゲームに何年もハマったりしていたので、それと同じようなノリで「少しまとまった時間ができたから、ちょっと書いてみようかな」と。もともと本はジャンルレスでずっと読んでいましたし、投稿サイトはファンタジー作品が多いのでファンタジーを投稿しました。

クレハ:十夜さんの作品はヒロインだけじゃなく、その周りのキャラまで個性がそれぞれ際立っている印象がありますよね。イケメン男子がそれぞれの良さを持っているから、読者が「私はこのキャラを推す!」ってなれる。私は(『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』の)カーティスが好きです。

十夜:ありがとうございます。読んでいただけて、すごく嬉しいです。

中村颯希:私も『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』がすごく好きなんですけど、やっぱり天然愛され主人公を、こんなにチャーミングに書けるのが素晴らしいですよね。フィーア本人はすごく真面目に、過去の自分のやらかしを自分の仕業じゃないと思い込んでいて「え、そんなことしたんですか ? 信じられないですね!」みたいにすっとぼけているのが面白いし可愛い。厭味なく天然ヒロインを書くのって、作家目線でみてもすごく難しいのに、それができてしまう十夜さんはすごい。私は編集さんに、しょっちゅう「これはあざとすぎるかも……」って指摘されていますから(笑)。

十夜:えええ、そうなんですね。

中村颯希:しかも、天然っぽく見えるんだけれど、読み進めていくと翳りだったり過去のトラウマが明かされて、急にシリアスになったりするギャップにもグッと心臓を摑まれるんですよね。

十夜:いや、本当に自分が好きなキャラを書いているだけなんです。だから『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?』(スクウェア・エニックス刊)で一番人気があるキャラも、私はすごく好きで書いていたのに、最初、編集さんにはすごく不評だったんですよ。「このキャラはあんまり……」って言われたんですけど、でも「私はこういうタイプが好きなんです!」って押し通して書いたんです。

 

 

──自分が好きだと思ったものは誰に何と言われようとも書く、という自信と強さが人気キャラクターを生む秘訣なのかもしれないですね。好きという気持ちがあれば、誰よりも魅力的に書けるはずですから。

十夜:そうですね。自信があるわけではないですけど、やっぱり自分の好きなものしか書けないので。

 

 

塔に囚われるだけじゃなくて、その塔を自ら爆破するくらいのことをしてほしい

──最初にクレハ先生もおっしゃってましたが、御三方とも自立した主人公、守られるだけでない主人公を書かれているのが共通点だと思うんです。そこは皆さんやはりポリシーを持ってこだわっていらっしゃるところなんでしょうか?

クレハ:私は特にポリシーというわけではないんですけど、塔に囚われたお姫様を王子様が助けに行くよりは、王子様が戦っている間にお姫様が自力で塔から脱出するような話のほうが好きなんです、昔から。お姫様が剣を取って、最後にラスボスと戦うぐらいがいいなって思うんですよ。

ディズニープリンセスも、だんだん自分が戦うプリンセスも増えてきているように感じていて、やっぱり戦う女性ってかっこいいなと思うんですよね。

中村颯希:クレハさんの言うこと、すごくわかります。私も塔に囚われるだけじゃなくて、その塔を自ら爆破するくらいのことをしてほしいんですよね。

クレハ・十夜:爆破(苦笑)

中村颯希:自立とか強さ云々っていうよりも、とにかく活躍してほしくって。それこそディズニープリンセスのなかでも、私は『ムーラン』が一番好きだったんです。男社会の中で最初は馬鹿にされながら、次第にのし上がっていく成り上がりの様を見ていると、子どもながらに胸がドキドキしたんですよね。

助けられて愛されるのも大好きなんですけど、やっぱり主人公自身が状況を打破していくのはスカッとするので、その気持ちよさを追求しているうちに……気がつけばヒーローから圧が消えて、主人公が自立しちゃった感じです。

 

▲様々な危機に立ち向かう主人公・黄 玲琳(ふつつかな悪女)

 
十夜:たしかに、結局は自分の生活というか生き方が反映されるんですよね。私は学校を卒業したら就職して、自分でお金を稼いで食べていくのが当たり前だと思っていたので、書く話も当たり前にそうなるんじゃないかなと思います。それこそ作品内に出てくるセリフとか、私自身がよく言ってる言葉だったりするときもありますから。そういう意味では、もはや創作ではないですね。

 

▲魔法の力が強力で自らトラブルを解決していく主人公カティア(敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?)。

 

──やはり自分の生活や人生観は、書く作品にも大きく関わってきますよね。

クレハ:主人公に自分を投映したり、成長していく主人公に自分の願望を込めるところは、確かにあるかもしれませんね。

中村颯希:言われてみれば本当にそうですね。思えば私、すごく年の離れた兄姉がいる中の末っ子として生まれたので、みんな大人なのに私だけ赤ちゃんみたいな状態がずっと続いて「あなたは可愛いわね」とか「あなたはそんなことしなくていいのよ」と、何でもお世話してもらう生活だったんです。

ありがたい状況ではあるんですけど、いや、私だってできる、私を1人の人間としてちゃんと見てほしい!という反発心が、ずっとありました。なので、私にもできることを証明したいという気持ちを、もしかしたら主人公に乗せているのかもしれない。自分自身が活躍して、賞賛してほしかったのかな……って、今、お話を聞きながら思いました。

十夜:中村さん……そんなに可愛がられているのに甘えず、自分でもやろうとするのが、逆にすごいですね。

──ヒロインの成長物語でもあるのが、御三方の作品の大きな魅力ですよね。ただ、それでいてラブストーリーとしても成立させなければいけないのは難しいところでは?

クレハ:確かに、私が書くのって恋愛ファンタジー作品が多くて、最初からヒーローが決まっていたりするから、ヒロインを活躍させるあまり「もうちょっと恋愛出しましょう」って編集さんに言われることもありますね。「読者の方は、もうちょっとイチャイチャしてるところが見たいので」と。

中村颯希:私の読者さんはお気づきだと思うんですが、私、あんまり恋愛要素が得意ではなくて(笑)。私自身は主人公をイチャイチャさせたい、恋愛要素を入れたいと思って頑張っているのに、上手くいかないんですよね…。

むしろ、読者さんとか編集さんのほうから「そんなに無理しなくていいですよ。ヒロインの成長物語のほうで、のびのびやってください」と言われちゃって、こっちが「苦手だけど頑張らせてください!」って感じです。やっぱりクレハさんみたいな恋愛ファンタジーを読むと、やっぱりいいなぁ、憧れるなぁと思うので、挑戦はしたいんですよね。

十夜:逆に私は、いろんな小説ジャンルのなかで、恋愛小説が一番得意なんじゃないかって勝手に思い込んでるんですよ。だけど、今やっている長期シリーズが2作あって『転生した大聖女は、聖女であることをひた隠す』は11巻、『悪役令嬢は溺愛ルートに入りました!?』は8巻まで出てるのに、どちらも相手役が決まっていなくてキスひとつしてないんですよ。まだ全然恋愛パートに行っていないのがおかしいなぁ……と、今すごく思っているところです。まぁ、今後を見ていてくださいとだけ言っておきます(笑)。

──楽しみにしています! そして、皆さん物語の舞台となるファンタジー世界の設定も、かなり壮大かつ詳細に作り込まれていますが、どのへんから着想を得ているんでしょう?

クレハ:私は昔から和風とか洋風とか関係なく、壮大な世界観の作品が好きで読み漁ってましたし、ゲームも好きだったので設定集を買ったりもしていました。そこで見たものの蓄積もありますし、あとは、編集さんと相談しているなかで話が盛り上がって、世界観が固まっていくことも多いです。今回の『わたしの創った千年王国』もそうですね。編集さんに「ここどう思いますか?」と聞いたりするなかで、設定が積み上がっていきました。

十夜:それで言うと私は逆のタイプで、さっきも言った通り本当に自分が好きなものを入れてますね。例えば『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?』に獣人がたくさん出てくるのも、私が動物好きだからですね。獣人という点で担当さんには渋られたんですけど、「私は書きたいんです!」って言ってOKをもらえるまで粘りました(笑)。

 

▲種族や立場の違うキャラクターが多く登場する(わたしの創った千年王国)。

▲個性豊かなキャラクターたち。獣人の種類も設定されている(敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?)。

 

──獣人族の「八聖公家」と呼ばれる面々も含めて、個性豊かなキャラクター付けをされていますよね。

十夜:基本的には真っ白いパソコンを見ながら考えて、何も出てこなかったとしても、とりあえず書き始めれば大抵はイケるんです。『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?』に関して言うと、私、イラストレーターのセレンさんが大好きで! とても素敵なキャラクターデザインをいただいたので、そのワンカットでキャラの設定はどれだけでも出てきます!

 

▲イラストレーター・セレンさんから届いた主人公カティアのキャラクターデザイン。

▲2巻に登場する八聖公家のキャラクターデザイン。

 
中村颯希:すごい。私は世界観設定がすっごく苦手なんですよ。基本的な骨格みたいなもの、例えば『ふつつかな悪女』で言うなら五家があって、木・火・土・金・水の五行をそれぞれ受け持っているみたいなことは、過去に読んだものの蓄積から引っ張り出してくるんです。

だけど、じゃあ、どういった儀式をして、どういう生活を送っているのか?という細かいところになると、途端にフワッとしてしまって……。なので、そのへんを決めずに先に主人公たちの行動のほうを詰めていって、それに都合のいい設定を後から付け足すことが多いですね。彼らがこういう状況に陥るためには、こういう儀式が必要になる。それを中華的世界観にフィットさせるために、じゃあ、天幕を登場させるか……という感じです。

 

▲作中でも重要となる木・火・土・金・水の五行の相関図(ふつつかな悪女)。

 

──なるほど。設定のなかでキャラクターを動かすのではなく、させたい動きに合わせて設定を作っていくんですね。

中村颯希:そうですね。だから「この場に文官とか武官は何人いるんですか?」と言われても、さて、何人いるんでしょう……?ってなってしまう。書き始めたときは100人のつもりが、話を展開させるうちに「ヤバい、これ1万人いないとダメだ!」ってなると、原稿の頭に戻って書き直すこともありますね。だから十夜さんの作品を拝読したときに、軍勢の人数まで細かく書かれているのを見て感動した覚えがあります。

十夜:ありがとうございます。いや、私も基本的に設定はその時々で必要な分だけ決める感じですよ。

 

 

なんとか幸せになるように書いていきます!

──皆さん、コミカライズやTVアニメ化などのメディアミックスも多いですから、特にビジュアル的な設定はなぁなぁでは済ませられないかもしれませんね。ご自身の作品のメディアミックスに関しては、どんなふうに思われていますか?

中村颯希:それは、もう「嬉しい」の一言しかないです。『ふつつかな悪女』のTVアニメ化でも、幸運なことに原作をとても尊重してくださっていますし、山﨑みつえさんが監督をしてくださっていること、動画工房さんが制作を担当してくださっていること、全部が嬉しい! 自分1人では届かなかった領域にまで届けてくださっているので、もう「ありがとうございます!」って思いながら見ています。

おっしゃってくださったように、こちらが詰め切れていない設定について質問されて、自分の思い至らなさを炙り出されたりもしますけどね……。「この時はどんな衣装なんですか?」とか聞かれて、本当は「どんな衣装なんでしょうねぇ。お任せします」って言いたいんですけど、あんまり毎回「お任せします」だと私の存在意義が問われてしまうので、10回聞かれたら6回ぐらいは考えてみるようにしています(笑)。

 

 
十夜:わかります。質問されてから「なるほど。どうなんでしょうね」って、初めて考えだすっていう。

中村颯希:そうそうそう!

十夜:どうしてもマンガやアニメのほうが、絵で見せる情報量が多いですからね。自分の中にある感覚を絵にするために、第三者に文章で説明する苦労はありつつ、自分が文字で書いていたものを全然違う手法でメディアミックスしてもらうというのは、もちろん嬉しいです。

私の小説のコミカライズを担当してくださっている皆さんも本当に素晴らしいマンガ家さんで、そういう方たちと一緒にお仕事できるというのはすごく嬉しいし、原稿が1話分上がってくるたびに毎回興奮していて、力をもらってますね。なので、本当に感謝しかないです。

クレハ:自分の頭の中にしかなかったものが、プロの方々の手によってイラストやマンガになっていくというのは、本当に嬉しいですよね。自分の画力が雑魚なんで(笑)。

おふたりと同じように「各キャラの服装はどんなですか?」って言われると「えっと…」ってなりますけど、メディアミックスされるとグッズとかを作ってくださるのも嬉しいんです! そのグッズ類をコレクションみたいに飾って、増えていくのを見るのが楽しいですね。

▲7月28日よりスタートするコミカライズ(わたしの創った千年王国)

 

──ただ、メディアミックスがあれば監修物などの作業も増えるでしょうし、忙しい日々の中で、仕事スイッチをオンにする秘訣とかはあるんですか?

クレハ:スイッチというと、ちょうど昨日のことなんですけど「今日は寝ないぞ!」って決めたときに、机の上に夜食と飲み物と必要なものを全部揃えて、一歩も動かなくてもすべて済むようにしてから執筆を始めました。それでも、やっぱり眠くなりましたけど(笑)。

十夜:ええ! 徹夜って私やらないので、すごい……。

──裏を返すと、十夜先生はそんな追い込まれた状況になる前に、原稿を仕上げているということですよね。

十夜:そういうわけではないですけど、締め切りだけは気合で守りますね。そのためのスイッチとかも、特にはないです。執筆中でも家の中で何か用事があればそっちに行くので、そのたびに集中力は切れますけど、もう、そういうものだと思ってますから。

中村颯希:十夜先生すごいです。私も根が真面目なので締め切りは守るほうですね。締め切りが近くなれば心が急いて自動的に「書かねば」っていうモードになるので、あんまり「間に合わない、どうしよう!」ってことにはならないかも。

ただ、時間があるほうが集中できなくなってしまうタイプで、それこそ会社員と兼業していた時代が一番執筆スピードは速かったんです。「今日は書ける時間が1時間しかない、30分しかない」っていう状況のほうが、逆に集中してワーッ!と書けたりするんですね。なので、あえて友達と遊びに行く予定を入れたりもします。ちょうど今、間に合うか微妙なので、今回もそれで上手くいくはず(笑)。

──ちなみに締め切りをクリアしたあとの、自分へのご褒美的なものはありませんか? もしくは、これをしてリフレッシュするだとか。

クレハ:私は寝る! あとはヌン活ですね。来週はマンゴーのアフタヌーンティーに行くつもりなんで、絶対そこまでに終わらせようと思ってます(笑)。

中村颯希:素晴らしい! 私は仕事自体がすごく楽しくて、始めると結構のめり込んじゃいますから、特にご褒美とかリフレッシュ的なものはいらないですね。ただ、好きだからと際限なくやってしまうと身体が追いつかなくなるので、そういうときは「これ以上仕事しちゃダメだよ、自分」と、お酒を飲んで強制シャットダウンします。

十夜:私は今、ちょうど期間限定でコラボカフェをやってもらっている作品があったり、グッズや大きなフィギュアを作ってもらえたりと、頑張った結果がすぐに目に見える形にしてもらっているので、それで疲れは癒されています。

そもそもどこかに行ったり、個人的に何かをする時間が今、本当にないんですよ。だから、自分の作品の中に楽しみを見出すしかない。ちょっと時間ができると、すぐ編集さんに「販促用のショートストーリーお願いできませんか?」って無理だと言っていたのにねじ込まれますから。そうなると私も「頑張ります」って言っちゃうんです。

中村颯希:十夜さん、お優しい! そういう場合、私は断っちゃいますから。ぶすっとして「前に無理だって言ったじゃないですか!」って(笑)。

十夜:それ、アリなんですね? 私、初めて知りました!

──ちょっと編集さんに怒られそうな話になってきましたが(笑)。さて、クレハさんの最新作『わたしの創った千年王国』が発売れましたが、特設ページのほうでは中村先生と十夜先生もコメントを寄稿されていますよね。

▲『わたしの創った千年王国』に寄せられた作家陣からの推薦コメント。

 
クレハ:中村さん、十夜さん、ありがとうございました。豪華なみなさんからコメントをいただいて恐縮しっぱなしです。

中村颯希:そんな、こちらこそありがとうございます。とても面白かったです! 個人的には今後、主人公のレティシアが最強となるに至った経緯と、彼女が昔の仲間が再会したときに、どんな物語が生まれるんだろう?っていうところを楽しみにしています。

クレハ:はい。昔の仲間とは少しずつ関わっていって、素性がバレていきます。

中村颯希:少しずつ秘密がバレていく感じが、私、めちゃくちゃ好きなんですよね。楽しみ。

十夜:私も読ませていただいたんですが、レティシアは前世で苦労して、今世でも大変なスタートを切ってますから、もう、彼女がやりたいことをやれればいいなと願っています。

あとは個人的な感想として、レティシアは自分1人で幸せになれる子だと思うんですけれど、ヒーローのほうはレティシアに幸せにしてもらわないと幸せになれないような雰囲気があるんですよ。でも、私はデュークがすごく好きなので……できたら幸せにしてあげてほしいです。

 

▲牢に囚われ、生きることに執着しないデュークに、涙を流す主人公のレティシア。

 
クレハ:ありがとうございます。確かに、あのヒーローは主人公がいなきゃ生きていけないかもしれない。

十夜:それがいいんですよね! 本当に、すごくいいです。

クレハ:なんとか幸せになるように書いていきます! まだまだ始まったばかりの作品なんですけれど、これからどんどん世界が広がっていく予定なので、レティシアと、今後のふたりの活躍に期待して読んでいただけたら嬉しいです。

──ありがとうございました。クレハ先生の新作『わたしの創った千年王国1』と、十夜先生の『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?2』の最新2巻は同日発売ということで、どちらも楽しみにしています。

中村颯希:新刊が同日発売って、なんだかご縁がありますね。

クレハ:そうなんです、今回十夜先生の新刊と合同キャンペーンをさせていただいたので、私も楽しみです。

十夜:私も気合を入れてプレゼントのSSを書きました。公開が楽しみです。

 

『わたしの創った千年王国1 天才魔導師の自由気ままな転生無双譚』×『敵国に嫁いで孤立無援ですが、どうやら私は最強種の魔女らしいですよ?』合同キャンペーン
https://www.ichijinsha.co.jp/novels/kinencam/

 
(インタビュー・文:清水素子)

※「小説家になろう」は株式会社ヒナプロジェクトの登録商標です。

 

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