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定額減税は住宅ローン控除にどう影響する?具体例やQ&Aで解説

リブタイムズ

定額減税は住宅ローン控除にどう影響する?具体例やQ&Aで解説

「定額減税によって住宅ローン控除にどんな影響があるのか」
「住宅ローン控除で所得税が全額控除になった場合、定額減税はどうなる?」

住宅ローンを組んでいる人は、このような疑問をお持ちではないでしょうか。

結論を先取りすると、定額減税と住宅ローン控除の併用によって納税者が損をすることはありません。この記事では、定額減税が住宅ローン控除に与える影響について解説し、定額減税適用前と適用後では控除額がどう変わるかを具体例を挙げてシミュレーションします。

定額減税と住宅ローン控除に関するよくある疑問もQ&A形式で解説していますので、ぜひ最後までチェックしてみてください。

定額減税が住宅ローン控除に与える影響は?

まず、定額減税の概要や住宅ローン控除の仕組みを押さえたうえで、定額減税によってどんな影響があるかを見てみましょう。

定額減税の概要

定額減税とは、政府が昨今のデフレ脱却のための経済政策として「令和6年度税制改正法」に盛り込んだ制度です。2024年(令和6年)6月から1年の期間限定で実施され、所得税と住民税所得割から一定額が控除されます。

定額減税の概要は以下の通りです。

対象者:納税者本人と同一生計配偶者および扶養家族
減税対象:2024年の所得に対する所得税と、2023年分の所得額から算出される住民税
減税額:対象者1人当たり、所得税(国税)が3万円、住民税(地方税)が1万円

定額減税では納税者本人だけでなく、給与収入が103万円以下の配偶者と扶養親族も減税の対象者となります。たとえば、条件に該当する夫婦と子ども2人の4人家族の場合、納税者本人(夫)から控除される金額は所得税が12万円と住民税が4万円で計16万円となります。

なお、定額減税には所得制限が設けられています。所得税にかかる合計所得金額が1,805万円を超える納税者(給与所得のみの場合は2,000万円を超える人)は減税対象外です。

住宅ローン控除の仕組み

住宅ローン控除とは、個人が住宅ローンを利用して一定の条件を満たす場合に、所得税の控除を受けられる制度です。

住宅ローン控除の制度の仕組みは以下の通りです。
年末のローン残高の0.7%が所得税から最大13年間控除される
所得税から控除しきれなかった場合には、翌年の住民税から控除

適用年数や控除額などは条件によって規定が細かく定められているため、詳しくは下記のページからご確認ください。
参考:住宅ローン減税(所得税・個人住民税)|国土交通省

併用により定額減税は住宅ローン控除にどう影響する?

定額減税によって、住宅ローン控除の控除額が減ることはありません。

順序として、所得税額から住宅ローン控除額を差し引いた後、定額減税の控除が行われます。そのため、定額減税の影響で住宅ローン減税の控除枠が無駄になることはありません。

住宅ローン控除を受けたうえで、規定の定額減税額を満たさない場合は、残金は1万円単位で切り上げられ、調整給付(不足額給付)として給付されます。

【定額減税適用前・適用後】控除額の具体例をシミュレーションで解説

ここまでで解説した通り、定額減税が適用されることで住宅ローンの控除額が減るといったことはありません。

では、住宅ローン控除を受ける人の定額減税の控除額について、モデルケースで具体的に見てみましょう。

定額減税適用前の控除額

モデルケースは下記の通りです。

【家族構成】4人家族(本人+扶養家族の妻・小学生の子ども2人)【年末の住宅ローン残高】3,000万円(省エネ基準適合住宅)【年収】700万円【所得税】年間約30万6,500円

省エネ基準適合住宅の場合、借入限度額は4,000万円となっているため、年末の住宅ローン残高すべてが住宅ローン減税の計算対象となります。住宅ローン減税の計算式と金額は以下の通りです。

 3,000万円 × 控除率0.7%=21万円

■定額減税適用前の控除額
上記のモデルケースにおける、定額減税適用前の控除額をシミュレーションしてみましょう。

所得税30万6,500円 – 住宅ローン減税21万円 = 住宅ローン控除適用後の所得税9万6,500円

給与所得者の場合、住宅ローン減税の21万円は年末調整で還付されます。

定額減税適用後の控除額

次に、モデルケースで定額減税が適用された場合の控除額をシミュレーションしてみましょう。

まず、モデルケースの場合の定額減税額は以下の通りです。

所得税の定額減税額:3万円 × 4人 = 12万円住民税の定額減税額:1万円 × 4人 = 4万円

定額減税は住宅ローン減税適用後の所得税額から控除するため、定額減税適用後の所得税は下記のように計算できます。

9万6,500円 – 12万円 = ▲2万3,500円

以上より、定額減税による控除が2万3,500円足りません。この場合、控除しきれなかった2万3,500円が調整給付として支給される見込みです。

なお、調整給付の手続きは自治体が主体となって実施されます。給付時期などの詳細はお住まいの自治体のWebページなどで確認しましょう。

定額減税と住宅ローン控除に関するよくある質問

定額減税と住宅ローン控除に関する3つのよくある質問について、Q&A形式で解説します。

Q1:定額減税と住宅ローン控除の併用によって損が発生するケースはある?

A:併用によって納税者が不利になるようなことは基本的にありません。

住宅ローン控除で所得税や住民税を全額控除してしまった場合でも、定額減税分は調整給付金として受け取り可能なため、併用によって損が生じるということはないと考えてよいでしょう。

Q2:ふるさと納税がある場合、住宅ローン控除と定額減税はどうなる?

A:住宅ローン控除もふるさと納税も、定額減税による影響はありません。

定額減税により、ふるさと納税の控除上限額が減ってしまうのではないかと考える人もいるでしょう。しかし、「2024年度税制改正大綱」では、定額減税におけるふるさと納税について以下のように記載されています。

(6)以下の額の算定の基礎となる令和6年度分の所得割の額は、特別控除の額を控除する前の所得割の額とする。
① 都道府県又は市区町村に対する寄附金税額控除(ふるさと納税)の特例控除額の控除上限額

引用:令和5年12月22日 閣議決定「令和6年度税制改正の大綱」

つまり、ふるさと納税の控除上限額は定額減税の控除を行う前の所得割で算定されるため、定額減税によってふるさと納税の控除上限額が減ることはありません。

Q3:住宅ローン控除と定額減税の恩恵が二重取りになるケースはある?

A:住宅ローン控除と定額減税の恩恵が二重取りになるケースはないでしょう。

住宅ローン控除も定額減税も、基本的に支払った所得税や住民税から控除を受けます。定額減税は住宅ローン控除を受けた金額から控除されるため、二重取りになることはありません。

まとめ:定額減税と住宅ローン控除の併用によって納税者が不利になることはありません

定額減税は2024年6月から1年間の期間限定で導入された政府の経済政策で、デフレ下における国民の経済的負担の軽減が期待されています。

定額減税は、住宅ローンの控除後の金額に適用されるため、住宅ローン利用者が損をすることはありません。また、ふるさと納税の控除額上限にも影響はなく、全体的に納税者が不利になることはないといってよいでしょう。

定額減税適用前と適用後の控除額については、モデルケースのシミュレーションも参考にしてみてください。

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