<静岡高校サッカー>富士東のジャイアントキリング再び。シード校・清水東を撃破して3回戦突破、増田監督「しびれました」
<全国高校サッカー選手権静岡県大会1次トーナメント3回戦・富士東 1−0 清水東>
県高校総体で40年ぶりに8強入りした富士東が選手権予選でまたしても番狂わせを演じてみせた。第3シードの伝統校、清水東を1−0で撃破。耐えに耐え、ワンチャンスをものにするー。試合前に描いたプランを完璧に遂行した80分間だった。
「しびれました。技術的な差があるのは分かっていたので、ボールを持たれることは想定内でした。虎の子の1点を守りきるプラン通りでした」。イレブンだけでなく、増田裕監督の興奮もしばらく収まらなかった。
1年生花井が決勝点
富士東はこの日、序盤から防戦一方を強いられていた。最初で最後のチャンスが訪れたのは前半28分。
右サイドのスペースに流れたボールをトップ下の坂部加遥(FC Fuji出身)が収め、GKとDFの間にクロスを流し込んだ。反応したのは1年生ながら1トップを務める花井晃太朗(FC Fuji出身)。
「いいところに来たので、自分は合わせるだけでした」。左足で流し込んだ値千金のゴールは鮮やかなカウンターから生まれた。
富士東の「赤い壁」
守り切るには早すぎる時間帯に思われたが、この1点は富士東の“赤い壁”に大きな勇気を与えた。
守備の意識をさらに高め、最終ラインを深めに設定。ディフェンス陣は相手のドリブルに飛び込むことなく時間を稼ぎ、中盤の助けを待った。攻撃陣はひたむきにパスの出どころを追い掛け、フリーでボールを蹴らせなかった。何より全員が肉弾戦から逃げなかった。クロスやシュートに必死に体を投げ出した。
ベンチのスタッフからは「我慢だぞ、我慢だぞ」「もっと周りで励ましあえ」「総力戦だ」と盛んにゲキが飛んだ。相手が捨て身で攻めてきた残り10分間はまさに激闘だった。
2年前のリベンジ
キャプテンマークを巻いた冨永悠太(清水エスパルス富士出身)には2年前の苦い記憶が残っていた。この日と全く同じ選手権予選1次トーナメント3回戦で清水東と対戦し、0−5で完敗。当時、冨永は1年生ながらピッチに立っていた。
「だから、この日に懸けていました。相手は格上なのでリスペクトしつつ戦った。めちゃくちゃ気持ちいいっす」。最初の大きな関門を突破し、試合後の表情は充実感にあふれていた。
「次負けたら意味がないぞ」
富士東は県高校総体後に主力級の3人が引退したが、残った3年生7人を中心にチームは団結。最終ラインを統率する冨永と飯塚元希(吉原一中出身)の2人を中心に、8強入りした県総体の再現を狙っている。
決勝トーナメント進出を懸けた4回戦の相手は同じ富士地区の吉原。増田監督は「僕らは挑戦者。とにかく一戦必勝を貫いて全力で戦いたい」と次戦に向けて力を込め、選手たちの間では「次で負けたら意味がないぞ」の声が飛び交っていた。