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DNAの構造が発見される前に「トウモロコシの色」からわかった大発見とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話】

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DNAの構造が発見される前に「トウモロコシの色」からわかった大発見とは?【眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話】

Q 「動く遺伝子」はトウモロコシの色で発見?

A トウモロコシでノーベル賞を受賞した女性科学者

トウモロコシはイネ科のなかまで、イネ、ムギとともに世界の3大穀物のひとつです。トウモロコシの種類は数多く、実の色も黄や白、赤、紫、濃い紫などさまざまです。ふだん食べているトウモロコシは甘味種(スウィートコーン)という種類で、そのなかまはさまざまあり、その味もさまざまです。

トウモロコシを科学の発展のために研究したのは、アメリカの女性遺伝学者バーバラ・マクリントック(1902年〜1992年)です。20世紀初め、遺伝の研究はおもにショウジョウバエ(世代交代が早いハエのなかま)を使って行われていましたが、マクリントックは、トウモロコシを使っていました。しかも研究所の近くにトウモロコシ畑をつくり、その世話をしながら収穫して、小さな顕微鏡を用い、実に含まれている染色体(遺伝子の集まり)を観察し続けていました。

マクリントックは、トウモロコシの起源や遺伝に関するさまざまな発見をして、1945年には、アメリカの遺伝学会の会長に選ばれています。

その後も地道に研究を続け、1951年に大発見をします。それまで遺伝子は動かないというのが定説でしたが、彼女は「動く遺伝子(トランスポゾン)」もあることをトウモロコシの染色体から発見したのです。発表はしたものの、あまりに先進的過ぎて、ほとんど無視されてしまいます。

1953年に、ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックという若い研究者が遺伝子を作るDNAの構造を突きとめました。ここから遺伝子研究が分子レベルで急速に進み、マクリントックの大発見が1960年代に確認されました。そして1983年、ついにマクリントックはノーベル生理学・医学賞に輝いたのです。

トウモロコシに別の色の実が混ざるのはなぜか

斑入りのトウモロコシ
実の基本的な色に、ほかの色が混ざることを「斑入り」といい、その原因はトランスポゾンが働いた結果。品種改良によってできたグラスジェムコーンは、虹色トウモロコシともいわれ、1本のトウモロコシの実の色が、赤、橙、緑、黄、菫、青、藍、濃い紫、白などの中から数種の色が現れる。ちなみに、トウモロコシの実の1つひとつは種で、トウモロコシの「ひげ」はめしべだ。したがって、ひげの本数と実の個数は一致する。

マクリントックの発見は、DNAの構造が発見される2年前だったので、誰も正しく評価できなかった。トウモロコシの色が世界を変えたのだ。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋

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