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食とアートが融合する交流の場、「メゾン伊とう」。

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食とアートが融合する交流の場、「メゾン伊とう」。

三条市にある「旧渡辺医院」。大正から昭和初期に建てられたという歴史的建造物が、食と酒・アートを楽しめるお店「メゾン伊とう」として生まれ変わり、オープンしました。店主の伊藤さんは、地域おこし協力隊として2023年に三条市に移住。「旧渡辺医院」との不思議な出会いやお店のこだわりなどを聞いてきました。

メゾン伊とう

伊藤 雄一 Yuichi Ito

1979年山形県新庄市生まれ。19歳で上京し、主に雑誌や書籍の編集者、Webディレクターとして活動。その後、地元の山形でも書籍づくりやマーケティング分野でキャリアを積みながら、ワインバーの立ち上げや運営を経験。まちづくりのNPO法人にも携わる。2023年4月、起業型地域おこし協力隊として三条市に移住。2024年11月に「メゾン伊とう」をオープンした。ハロプロがすきだった。

建物に呼ばれた気がして。

――外観のインパクトがすごいですね!

伊藤さん:いいでしょう、この外観に惹かれて内見したんです。

――物件は不動産屋で見つけたんですか?

伊藤さん:「三条市空き家・空き地バンク」っていうウェブサイトがあって、そこで見つけました。この物件、なんか変だな、すごいなと思って内見に行ったんです。

――何か変だなっていうのはどういう部分に感じたのでしょうか?

伊藤さん:古い病院が空き家バンクに登録されているのが不思議だったんです。さらに、蔦が絡みついた姿がちょっと威圧感があるように感じて、すごく気になったんですよね。

――実際、内見されてどうでしたか?

伊藤さん:ここの院長だった渡辺善二郎さんが絵を描く人だったみたいで、2階に絵がたくさん残っていたんです。自分は飲み屋とか飲食店兼アートギャラリーのような場所を作りたくてお店を探してたから、まさにぴったりだなと。

――運命のような出会いだったわけですね。

伊藤さん:もう、ここでやるしかないなって。物件と善二郎さんに呼ばれた気がしました。

新しい友人たちとつくり上げたお店。

――伊藤さんは山形のご出身ですよね。三条を移住先に選んだ理由を教えてください。

伊藤さん:両親が高齢なので、車ですぐ実家の山形に帰れる場所というのが条件でした。ほかにも候補はありましたが、20代の頃にライブやクラブ音楽でつながった友人たちが新潟に結構いたんです。それが三条に移住を決めたきっかけのひとつですね。

――三条の暮らしはどうですか?

伊藤さん:満喫してます。元々の知り合いだけではなくて、地域おこし協力隊の活動の中で出会った人もいて、三条に知り合いや友人がたくさんできました。協力隊を卒業したのが2024年の3月、そこから約8ヶ月でお店がオープンできたのは周りの手助けがあったおかげです。

――それは、具体的にはどんな面での手助けだったのでしょうか?

伊藤さん:内装やカウンターのDIYを手伝ってくれました。大工さんにお願いした部分もありますが、壁の修繕は友人たちが頑張ってくれました。

――「メゾン伊とう」はご友人たちと一緒に作り上げた空間なんですね。

伊藤さん:そこまで縁の深いまちではなかったのに、自分が今までやってきたことやこれからチャレンジする事業を通して新しい人間関係ができていくのは、とても面白いですね。そんな人たちと一緒につくったお店だからこそ、これからもっと居心地の良い空間にしていきたいです。

――「メゾン伊とう」はどういった営業スタイルなんですか?

伊藤さん:基本的にはお客さんと一緒に過ごすことが多いです。料理の注文が立て込むときは厨房に引っ込みますけど。

――お客さんと一緒に飲むこともありますか?

伊藤さん:早い時間は基本的に飲まないんですけど、お客さんから一杯どうぞって言われることもあるので、そこはありがたくいただきます。一応23時までの営業時間にはしてますが……まあ、お客さんがいたらそれより遅くなることも多々ありますね。

――伊藤さんとの会話を楽しみにいらっしゃる方が多そうですね。ところで、お料理はどこかで習っていたんですか?

伊藤さん:プロの料理人の方に教わったりしたことはありますが、基本的に独学です。自分の料理や勧めたお酒を美味しいって言ってもらえるのがうれしいですね。

――食材のこだわりがあれば教えてください。

伊藤さん:野菜とかはなるべく地元の産地直送の店で買うように心がけています。お魚とかお肉はまだ開拓できていないので、いろんなところを探したり人に紹介してもらったりしてます。

地域の人が気軽にアートと食を楽しめる場に。

――「メゾン伊とう」はアートギャラリーでもあるということで、たくさん個性的な絵が飾られていますよね。これはすべて伊藤さんのコレクションですか?

伊藤さん:自分のコレクションは……そうそう、この掛軸なんかは「玉村方久斗(たまむらほくと)」の作品ですね。最近オークションで買ったばかりです。ほかは自分で描いた絵もありますが、ほとんど作家さんのものが多いかな。

――へぇ〜、いろんな作家さんの作品が多く飾られているんですね。

伊藤さん:自分がずっと出版系の仕事をしてきたのもあって、まわりにイラストレーターや絵描きが多いんです。そういう人が作品を展示できる場所にしています。

――正直、アートって少し難しくてとっつきにくいイメージがあるんですが、どういうふうに楽しむといいでしょうか?

伊藤さん:アートとかって、シラフのときに真面目な頭で選ぶんじゃなくて、ちょっと酔っぱらって買った方が絶対面白いんですよ。シラフのときっていろいろ考えちゃうじゃないですか。欲しいけど飾るかなとか、本当に必要かなとか。

――確かに、悩んだ末に「やっぱりやめとこう」って振り出しに戻りそうです。

伊藤さん:自分の「好き」とか「いいな」の気持ちには忠実になっていいと思います。ほんのり理性のリミッターが外れたときに買ったものって、いくらお金払っても後悔ないですよ。

――アートに気軽に触れる場所があると、購入だけじゃなくて、自分も何かつくってみようとか描いてみようと思うきっかけにもなりますもんね。

伊藤さん:そうですね、だからもっと身近にしていきたいと思ってます。夜の営業だけじゃなくて、何か展示のイベントをするときはお店を開ける昼の時間を増やしてもいいでしょうし。

――それは素敵ですね! オープンしたばかりでこれから変化もしていくと思うのですが、どんなお店にしていきたいですか?

伊藤さん:地元の人がきてくれる場所にしたいですね。きっかけはお酒でも料理でも、アートの側面でもいいんです。飲みながら語り合って、作品を見て感動を得たり、実際に購入したりもできる。そういう面でまわりの人の生活を豊かにできる場所になればいいなと思います。

メゾン伊とう

三条市元町1-17

告知

期間:3月7日(金)- 30日(日)

展示作家名:マジック・コバヤシ

展示企画名:1≦2/2

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