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長田光平舞台初単独主演、赤井英和がクマのプーを演じるOFFICE SHIKA CHILDHOOD『クマのプーとアクマのゾゾ』が開幕~ゲネプロレポート

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OFFICE SHIKA CHILDHOOD『クマのプーとアクマのゾゾ』

OFFICE SHIKA CHILDHOOD『クマのプーとアクマのゾゾ』が2025年4月10日(木)に東京の座・高円寺 1で開幕した。タイトルからもわかる通り、A・A・ミルンの名作児童文学『Winnie the Pooh』を参考文献としている本作は「親子で楽しめる」というコンセプトのもと、劇団鹿殺し主宰の丸尾丸一郎が脚本・演出を務める新作舞台。出演は、本作が舞台初単独主演となる長田光平(魯瓶ろびん役)、赤井英和(クマのプー役)、みのすけ(伊予いよ/ロバのイーヨー役)、丸尾丸一郎(実瑠みるん/カンガルーのカンガ役)他、総勢11名。

ここでは、初日舞台に先立って行われたゲネプロ(総通し稽古)の様子をレポートする。

(写真:和田咲子)

白やグレーの絵の具がまばらに塗られたダンボール状のオブジェが取り囲む舞台の中央に配置されたパネルには「doing nothing often leads to the best of something」との文字。「何もしないことが、最高の何かにつながることがよくある」という意味で、本作同様『Winnie the Pooh』を下敷きにした映画『プーと大人になった僕』にも登場するセリフだ。

客入れ中に流れていた宇多田ヒカルの『ぼくはくま』(クマつながり?)が止まって、舞台上に三匹のウサギが登場。ラビット(川平花)、バニー(加藤夕夏)、ヘア(仲谷明香)が元気いっぱいににんじんをかじってポーズを決め、前説と上演中の注意事項を楽しく明るく案内、パネルに書かれたプーさんの名言を読み上げたあとに登場するのは、長田光平演じるクリストファー・ロビンならぬ栗栖魯敏(くりす・ろびん)。

(写真:和田咲子)

ランドセルを背負った小学一年生の魯敏が「ここは東京都世田谷区給田」と説明を始めると、スズメたちが邪魔をして勝手に歌い始めたと思ったらカラスたちも合流してラップを披露。いかにも大団円かのように客席に拍手を求めるがもちろんそこで終わることはなく、魯敏が語りを再開する。このあともミュージカルさながら、5分に一度は歌と踊りで魅せる演出が挟み込まれ、「親子で楽しめる」の宣言通り大人も子どもも楽しませようという意気込みが伝わってくる。

(写真:和田咲子)

目覚まし時計のオウル(橘輝)の登場によって舞台は栗栖家の朝へと変わり、ゆうたろう演じる魯敏の弟・日暮がまだ5歳とは思えない流暢さで今日のスケジュールを読み上げる。ピンク色のカーディガンを羽織り、ピンク色のチェックのパンツを履いて、ピンク色のユニコーンのぬいぐるみを抱え、つまりピンクが大好きな男の子だ。

(写真:和田咲子)

そんな魯敏と日暮の母・実瑠を演じるのは、本作の脚本・演出担当でもある丸尾丸一郎。180cmを超える大柄な男性にもかかわらず、茶髪のロングヘアと茶系統のシャツとスカートが似合っていて母親姿がしっくりくるから不思議だ。そしてグレーのスーツに身を包む父・伊予役にはみのすけ。伊予は劇作家の夢をあきらめて公務員になったが、現在は仕事に誇りを持っている。

(写真:和田咲子)

そんな家族に囲まれた魯敏は、入学したばかりの学校に行くのを渋っている様子だ。理由は、担任の竹虎先生(辻凌志朗)が魯敏は妄想癖のある発達障害のグレーゾーン(発達障害の特性があるが、診断基準には満たない状態を指す言葉)だと母に話しているのを聞いてしまったかららしい。

(写真:和田咲子)

魯敏は学校のことを考えて落ち込み、友だちである木彫りのクマに話しかける。家族旅行で行った北海道で、珍しく父にねだって買ってもらった置き物だ。その後魯敏は給田にある「宮殿の森」に迷い込み、木彫りのクマのように鮭をくわえて動くクマのプーに出会う。赤井英和演じるクマのプーは、普段の赤井のイメージ通りの関西弁となんとも言えない無骨さで笑いを誘う。

(写真:和田咲子)

(写真:和田咲子)

物語はグレーと言われて悩む魯敏が、現実と「宮殿の森」というパラレルワールドを行ったり来たりしながら進んでゆく。猫ミーム、HIKAKINとヒカルを足して2で割ったようなYouTuberなどネットの流行や人気者を随所に散りばめて若い世代の笑いを引き出し、一方で赤井のボクサー時代の活躍や某ダイエット特化ジムのCMを喚起させる演出を盛り込み、親世代やさらにその上の世代を楽しませる。

(写真:和田咲子)

(写真:和田咲子)

さらには客席を大いに巻き込むスリリングかつ愉快な展開を挟みながら、物語の後半は日本の省庁で起きた公文書改ざん事件にも切り込む。現実の理不尽さを魯敏はどう受け止めるのか。

「クマのプー」がシビアな現実を生きる私たちに伝えてくれることとは。そして「アクマのゾゾ」とは一体何なのか。幅広い世代に向けて投げかけられたメッセージを、ぜひ劇場で受け取ってほしい。公演は4月20日(日)まで。高校生以下は1000円で鑑賞できる。また、4月19日(土)昼&夜・20日(日)昼は、Streaming+による配信もおこなわれる(下記公演情報欄を参照)。

(写真:和田咲子)

取材・文=碇雪恵

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