福岡の醤油ラーメン新時代の幕開けはココから!?名島に新星登場!
非豚骨、否豚骨、脱豚骨。そんな“豚骨ラーメン以外”のジャンルもにぎわせている福岡のラーメン業界ですが、王道の博多ラーメンをおびやかす筆頭株は、やはり醤油ラーメンでしょう。この醤油の台頭は今に始まったことではありませんが、これまでのイメージ“上品であっさり”ではなく、“ガツンとしたパンチ”があり、具材、麺量とも食べごたえのある肉系清湯の醤油ラーメンが増えてきたのが昨今の特記事項です。今回、訪れたのは今年3月にオープンした「中華そば ひかり」。僕自身「福岡の醤油ラーメン人気を、さらに一段押し上げる実力派」だと確信している店です。
「中華そば ひかり」の場所は東区名島「名島運動公園」の横。近くには同じく新店の「長浜ナンバーワン 名島店」やコアなラーメンファンを魅了する「らーめん屋 たつし」、激シブの名食堂「泰洋軒」、さらに少し行くと「一楽ラーメン 名島本店」も控えているなど、新旧の食文化を一挙に体感できるエリアです。
入ってみると店内はL字カウンターの7席のみの小バコで、厨房にはスタッフ1人。この方が店主である齋藤潤哉さんです。
まず、「中華そば ひかり」の醤油ラーメンの味の入口についてふれておきますと、スープを飲んだ瞬間にきっと、ほんのりとした甘さと共に“キレ”を感じるでしょう。一言に“醤油ラーメン”といっても、福岡県産をはじめ甘めの九州の醤油を使うか、塩気、キレの立つ関東や甲信越地方の醤油を使うか、さらには濃口、薄口、溜まり醤油などのチョイス、ブレンド率でも大きく印象が異なります。同店で使っている醤油はズバリ新潟県の濃口醤油「長生」です。
この醤油の選出には、齋藤さんが幼少期から親しんできた味、ラーメン職人としてのキャリア、そして趣味嗜好も大きく関係しているのです。
齋藤さんは、昭和60年静岡県出身。十代後半にはすでに“ラーメンで勝負する”という明確なビジョンをもっていたといいます。
「高校時代は部活の剣道、趣味のバンド、そしてラーメンの食べ歩きに夢中になっていました。当時は空前のラーメンブームでテレビでも特番が頻繁に放送されていた頃。それを見ながら『ラーメン職人はかっこいい』『音楽と同じく自己表現ができる仕事だ』と思っていたんです」と齋藤さん。そしてラーメンへの思いが弾け、地元静岡のラーメン店に高校3年生の時にアルバイトで入門しました。「ある時剣道の試合で福岡に遠征したことがありました。その時食べた豚骨ラーメンには感銘を受けましたね。当初は故郷の静岡に本場の豚骨文化を持ち込みたいと思っていたんです。それをバイト先の大将に相談したら、それなら博多で腕を磨くのが先決だろうとアドバイスをいただいたんです」と齋藤さんは付け加えます。そして高校卒業後に福岡に移住し「博多一風堂」に入店。その熱意、行動力には舌を巻きます。齋藤さんは2004年から2022年まで「一風堂」で勤め、大名本店、博多駅店、大阪店などで店長を歴任。退社後は「とら食堂」で働き、2024年3月に独立開業する運びとなりました。
ここで一つの疑問、「なぜ醤油ラーメンにしたのか?」
「『一風堂』時代にも醤油ラーメンの経験がありましたし、『とら食堂』でもその魅力を再確認しました。さらに『FUJI ROCK FESTIVAL』に『一風堂』が出店し、僕の音楽好きも相まって現地スタッフに選んでもらった際、会場の新潟県に多彩な醤油文化が根付いていることも覚えていました。人生の半分近くを過ごしている愛すべき福岡で、これまでにない醤油ラーメンを出したい。そこに魅力を感じるようになったんです」と齋藤さん。
「中華そば ひかり」の醤油ラーメンは、前述した新潟県の醤油「長生」主体のカエシを、鶏ガラ&豚骨スープと合わせたもの。醤油のコクとキレ、肉系素材の旨味、そして出汁感が口いっぱいに広がります。
そして具材はみずみずしさを保つよう切り置きはせず、注文後にスライスする豚バラ肉、チャーシューの煮汁で味付けした“極太”メンマ、煮卵、ホウレン草、ナルトなど。福岡の名製麺所「青木食産」謹製の太めの麺もデフォで茹で前170g、大盛りは250gあるなどボリューミーです。そして1杯750円、チャーシュー麺(下写真)でも950円と、現在のラーメン業界の中ではコスパ良。
「ラーメンは日常食であるべき。安くお腹いっぱいになってほしい、という思いからこの値段設定に。これまで大型店の立ち上げや店長は多々経験してきましたから、より地域密着し、お客様の反応を間近に感じられるような小さな店にしたいと思いました。ナルトものせどこか懐かしさを感じるビジュアルと味、いにしえ感漂う雷紋の丼ぶりにしているのもさりげないこだわりです」と齋藤さんが教えてくれました。
せっかくなので、中華そば(醤油ラーメン)と共にメニューの柱となっている「塩中華」(750円)もいただきました。こちらは、より乾物系の味、風味が立った塩ダレを合わせたもの。
口の中で踊るような食感、少し短めで口にズバッと飛び込んでくる麺も中華そばと同じものです。
「中華そば ひかり」のようにガッツリと食べ応えのある醤油ラーメンは他に「らぁめん蔵持」(白金)や「福はこび」(姪の浜)、「駒や 総本店」(宇美町)の「夜の醤油ラーメン」など。
醤油ラーメンにもインパクトを求める方におすすめした店です。
中華そば ひかり
福岡市東区名島3-27-3
11:00〜17:00(土・日曜)〜20:00