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人々を見つめるウルトラマンは何を考えるのか。これはウルトラマン自身の物語――『ウルトラマンオメガ』メイン監督・武居正能さんインタビュー

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年7月5日(土)よりテレ東系6局ネット発、世界同時期放送&配信がスタートするシリーズ最新作『ウルトラマンオメガ』。

ヒーローも怪獣も存在しない地球に、突然「ソラ」から落ちてきた宇宙人「オメガ」。それまでの記憶を失ったオメガは、「ソラト」と名付けられた地球人の姿で、初めて触れ合う生き物「地球人」を理解しようと、興味津々に人々を見つめます。

時を同じくして、地球に次々と出現する巨大生物「怪獣」。ソラトは、赤き宇宙ブーメラン「オメガスラッガー」をシンボルに持つ「ウルトラマンオメガ」に変身し、シャープでパワフルな戦いを繰り広げます。宇宙人と地球人の関係性を通じて、「ウルトラマンがなぜ地球を守るのか?」に迫る意欲作です。

アニメイトタイムズでは、待望の放送開始を記念して、メイン監督・武居正能さんにインタビューを実施! 作品コンセプトやウルトラマンオメガのデザイン、第1話冒頭のフルCGシーンの制作過程など、様々なお話を伺いました。

【写真】『ウルトラマンオメガ』メイン監督・武居正能インタビュー

オメガはこれまでのウルトラマンとは異なる種族

ーー武居監督にとって、ニュージェネレーションシリーズ(ニュージェネ)では3度目のメイン監督作品となる『ウルトラマンオメガ』。制作を始めるうえで意識したことはありますか?

武居正能監督(以下、武居): ウルトラマンというキャラクター像は大切にしつつ、デザインコンセプトとしては、今までにない少し突飛な形にこだわっています。今回は、キャラクターや変身者に一つひとつ驚きがあるというか、今までにはない味わいを出すことを目指して作っていこうと思っています。

ーー発表時にも大きな話題を呼んだ赤いデザインは、どのような経緯で決まったのでしょうか?

武居:完全に僕の独断です。テレビシリーズの基本形態として、赤い顔のウルトラマンがメインで出るというのは、これまでにはなかったと思います。これにはコンセプトとして、「今までのウルトラマンとは違う種族である」というところを打ち出したかったという理由がありました。

カラータイマーと銀色の顔は、イメージしやすいウルトラマンの特徴だと思います。まずそれを変えていこうと。探った訳ではなく、初めから「赤いデザインでいきましょう」という形で進めました。

ーーカラータイマーや瞳も輝いていて、赤いデザインと同じくらい目を引きますね。

武居:そうですね。ポイントとして、目に強さが欲しかったんです。カラータイマーについては、「中に宇宙・銀河が広がっている」というようなイメージで作りたかったんです。この辺りはデザイナーの後藤さんと造形部ともかなりディスカッションを重ねて、一番試行錯誤したところですね。

ーー「オメガスコープ」(手のひらを相手に向けてじっと見つめ観測する仕草)のポーズも印象的です。劇中でもソラトとウルトラマンオメガの同一性を意識したカットがありますよね。

武居:最終的に決まったのは撮影の少し前でした。もともと「ウルトラマンが見ている」を作ろうとは思っていたので、先ほども言った通り、目にポイントを置きたかったんです。

そのうえで、意識的に同じポーズとるなど、ウルトラマンがやっている動きや同じような癖を同一性として演出しています。主人公がウルトラマン自身であるということは、お話の中でも非常に重要なところですから。

ーー「ウルトラマンオメガ」の歩き方にも宇宙人らしさを感じました。

武居:あれも同一性の表現の一つなんです。ソラトが地球に触れて、もっと人間として豊かになっていく。それと同時にウルトラマンも変わっていきます。ある程度、計算して演出している部分なので、楽しみにしていてください。

主人公は“好かれる人”でなければならない

ーー武居さんがメイン監督を務めた『ウルトラマンR/B(ルーブ)』『ウルトラマンデッカー』の主人公は、どちらも視聴者が親しみやすいキャラクター像でした。ソラトのキャラクターを作るにあたっては、どのようなことを大切にされましたか?

武居:それまでの僕が手掛けた作品では、「若い人たちが足掻きながら、成長していく過程を描く」というものが多かったですよね。でも、今回は全然違うんです。

『ウルトラマンオメガ』のシリーズ構成とキャラクターを作る時に考えたのは、「成長」というより「変化」という方向に持っていきたいなと。

武居:加えて、やっぱり主人公は「とっつきやすい、好かれる人じゃないとダメ」という考えがあります。

子供に親しまれる近所のお兄ちゃんと言いますか。そういうキャラクター像を前提に、お話自体も作っていきましたし、そこがやっぱり一番面白い。「ちょっとへんてこだけど、キメる時にはキメる人」って、憧れませんか?

ーーソラトを演じる近藤頌利さんの良さはどこにあると思いますか?

武居:実はキャストを選ぶ際にも、「目力が強い人を優先的に入れましょう」というオーダーを出していました。彼は引き出しが多いので、色々なパターンを試すんですよ。その中でどれを取るかという方向性で半分くらいは委ねつつ、化学反応というか、面白いものをそのまま取っていくという感じでした。 

これまでの作品はどちらかと言うと、キャリア的にも若い人が多くて。「こういうシチュエーションはこういう風にして〜」みたいなことを事細かに教えていたんです。今回はそのプロセスがほぼないですね。基本的には「そのキャラクターの中で、どういう出し入れをしていくのか」がメインでした。

第1話冒頭、白組制作のフルCGに込めた挑戦

ーー今回はスラッガーが変身アイテムの役割を持っており、メテオカイジュウをアーマーや武器にして戦うという設定になっています。

武居:変身アイテムをスラッガーにしたのは、こちらからの提案ですね。例えば、怪獣をウルトラマンと共闘させるための一つの方法論として、「武器」というところを打ち出したかった。アーマーになったのは、その後いろんなお話を作っていく中で「もう少しビジュアルが変わった方がいいよね」という話になったからです。

また、「オメガスラッガー」は変身アイテムであると同時に、武器でもあるというコンセプトになっています。武器自体は怪獣のものですが、基本的にはスラッガーを経由するので、基本的に使っているものは「オメガスラッガー」なんですよ。

ーー新規怪獣やメテオカイジュウの登場も気になるポイントです。

武居:今回は新規怪獣も多いですが、コンセプトとしては「地球在来種」。地球の中で、元々生息していた違う生物ですね。異なる進化を遂げたものが特殊な能力を持ったという設定になっています。

メテオカイジュウに関しては、地球のものではないんですよ。ウルトラマンと関わりがあるという時点で地球の生物ではない。形は地球の在来種に近いですけど、明らかに違うものです。

ーー第1話冒頭の株式会社白組が制作したフルCGシーンのクオリティにも驚かされました。

武居:一番初めの掴みの部分ですね。あのシーンの「オメガ」はものすごく強いんです。詳しくは言えないのですが、「オメガ」というキャラクターには謎があって、記憶を失っていることにも理由があります。

映像的にも、新しい挑戦をしていかないといけないんです。細かいですけど、毎年色々やっています。

例えば『ウルトラマンアーク』の劇場版では、絵画のシーンをAIの背景で作らせて、最終的に人間の手で仕上げたり、実験的なことをしています。『ウルトラマンデッカー』ではLEDパネルを使った撮影に挑戦、『劇場版ウルトラマンR/B セレクト!絆のクリスタル」はウルトラマンをフルCG化して、「ウルトラマングルーブ」はCGのみで登場しています。

今回の新しい挑戦として、フルCGのシーンをやってみたらどうだろうと。僕が書いた絵コンテをベースに、白組の上西さんと神谷誠監督と三人で意見を出し合って作りました。

2分くらいのシーンなんですけど、結構時間がかかってるんですよ。

構想からですとクランクイン前から 着手しているので、十ヶ月以上はかかっていますね。掴みとしては面白いものになりましたし、なかなか良い出来栄えだと思います。

ウルトラマンですらない「オメガ」。その変化を楽しんでほしい

ーー直近の『ウルトラマンブレーザー』や『ウルトラマンアーク』は、一つの作品の中でウルトラマンを深く掘り下げていく内容でした。それらを踏まえたうえで、『ウルトラマンオメガ』はどのような方向性の作品になるのでしょうか。

武居:基本的にはおっしゃっていただいた方向性だと思ってください。実を言うと「ウルトラマンオメガ」はウルトラマンですらないので、自分で「ウルトラマン」とは名乗ってないんですよ。だから「どういう存在なのか」も、現時点では分からない。僕たちから見てウルトラマンの形をしていても、新しい種族なんです。

世界線としては完全に「怪獣」が初めて出てきた世界なので、「怪獣」という言葉もありません。そういう細かいところにも、こだわっています。

一方で『ブレーザー』や『アーク』に比べると、“匂い”としてはニュージェネらしいと思います。それは最終回まで観れば、分かっていただけるかなと。自分もニュージェネを長くやってきていますので、その締めくくりという気持ちで作っています。

ーー折角なので、「ウルトラマンの仕事に携わっていて良かった」と思うことについても伺いたいです。

武居:一つはウルトラマンの監督をやれたことです。他の作品でも舞台挨拶やSNSなどで視聴者の意見や反響を多少聞くことはできますが、「自分がやった作品のヒーローショーがある」というのはあまりないですよね。

「ウルトラヒーローズEXPO」では、子供たちやファンの反応を生で見られます。結果論ですけど、監督をやったおかげでそういう喜びがある。作ったものが楽しんでもらえていると実感できる機会は少ないので、それはウルトラマンをやっていてよかったと思うことです。

ーー最後に、武居監督から『ウルトラマンオメガ』の見どころを教えてください。

武居:「これはウルトラマンがどう考えるか、ウルトラマン自身のお話である」ということは断言できます。もちろんコウセイやアユムといった仲間たちはいますが、ウルトラマンそのものを描く作品なので、「ソラト」と「ウルトラマンオメガ」の変化を楽しんでいただければと思います。

[インタビュー/田畑勇樹 撮影/MoA 編集/小川いなり]

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