勉強の「質」ばかり求めるのは間違い。効率ばかり気にしてはいけない理由
東京大学理科三類に合格し、日本三大難関資格である医師国家試験、司法試験、公認会計士試験を突破した河野玄斗さん。今回は河野玄斗さんの勉強法に迫ります。前編では「質の高い勉強法」について教えていただきました。
高2の時点で東大は目前にあった
――河野さんは、日本の数ある大学の中からなぜ東大、なぜ理科三類を選んだのでしょうか?
入れたからです。正直なところ、医者になるつもりも特になかったです。東大は理科三類に入った後、はじめは教養学部に所属し、大学3年生に上がるタイミングで初めて学部を決めます。この制度を進学振り分け制度といいます。理科三類に入った後に、どこの学区部に行くかを決めようと思っていました。
東大理科三類は、日本の大学の頂点といわれていますし、入ってみようという気持ちで入学しました。
――入れるというのは、学力的に合格判定などが出ていたということでしょうか?
そうです。高校2年生のときに同日模擬試験というものを受けました。同日模擬試験というのは、ひとつ上の高校3年生の方たちが試験を受ける同日に同じ問題を解いて、どれくらい取れるかにチャレンジできる模擬試験です。
つまり、受験まであと1年であとどれくらいの点数が取れれば合格できるのかということがわかる試験です。僕は高校2年生の時点で、東京大学理科三類の合格点+30~40点が取れていたので、今年受けても受かっていたのかなという状況でした。
勉強の質を求めるのは量をこなしてから
――東京大学理科三類に合格するために、いつから、どのように勉強を進めてこられましたか?
僕が東京大学理科三類に合格したのは、先取り学習のおかげだといっても過言ではないです。例えば、算数・数学に関しては小さいころからどんどん進めていって、小学校3年生ごろには、高校の数学の課程まで完了していました。
大学受験で重要な英単語については、高校2年生から取り組むというのが一般的なようですが、僕は高校1年生の夏から大学受験に必要な2,000単語を全部覚えるようにしていました。
また、理科は高校3年生が完成させるという方が多いですが、僕は早いに越したことはないと思い、高校1年生から勉強に取り組んで高校2年生の夏には、東大の問題で合格点を取れるレベルに仕上げました。
このように先取りして学習した結果、余裕のある合格を手にすることができました。
――大学受験にあたって、そもそも東大を目指そうと思っていたのでしょうか?
東大を強く意識していたわけではありませんが、入れるなら入りたいと思っていました。
――先取り学習について、具体的にどのような勉強を行っていましたか?
とにかく量をこなすということです。勉強法について、「どうやったら効率よく勉強ができますか?」「勉強の質を上げるにはどうしたらいいですか?」というようなことをよく聞かれます。効率の良い勉強、質の高い勉強というのは、結局「量」だと僕は考えています。
例えば、自転車に乗れるように練習する場合、どんなに自転車の乗り方のマニュアルなどを見たところで乗れるようにはならないですよね。イメージトレーニングだけでは自転車に乗ることは難しく、実際に自転車を漕いでみて「こういうときにバランスを崩しやすいんだ」ということを実感して、初めて乗れるようになるわけです。これは勉強と全く一緒で、効率の良い、質の高い勉強とは?ということを、いくらイメージトレーニングしても実現することは難しいです。
勉強の量をこなしていく中で、「こういうふうにやらないと頭に入らない」「この方法では点数が取れるようにならない」ということを確認していくことによって、初めて質が高まっていくというように僕は感じています。
「正しい勉強」ができているか、常に自問自答していた
――河野さんは勉強の量をこなしていく中で、勉強の質を高めるために必要なこととはどのようなことだと考えていますか?
それは、やはり常に目的を意識するということが大切だと考えています。例えば、英単語は結局頭の中に入れることが重要です。だかた、漫然と単語帳を見ていても意味がないわけですよね。ちゃんと自分でアウトプットして、自分で思い出せるかということを試さないと勉強したということにはなりません。
例えば、数学では、問題の答えを覚えることには何の意味もありません。この答えを導き出すための考え方を学んで、他の問題に応用できるようにするということが数学においては重要です。果たして似たような問題が出たときに、この考え方を使って答えが導き出せるのだろうかということを自問自答して、正しい勉強ができているかを常に考えています。
――河野さんのような考え方に行き着くためには、やはり勉強の量を増やさなければ気づかないものなのでしょうか?
僕はそう思っています。たくさん勉強をしていく中で「これ前やったはずなのに、どうしてできないんだろう」「こんなに勉強したのに、どうして点数が伸びないんだろう」という経験を通じて、初めてどこをどうすればいいのかという課題が浮き彫りになるものだと考えています。自分自身の課題を浮き彫りにするには、「勉強の量」「目的を意識して勉強する」この2つが重要です。
空き時間こそが差をつける
――大学受験において、過去問が重要視される風潮についてはどのようにお考えですか?
過去問には目的があると思っています。過去問の一番重要なポイントというのは、ゴールがわかるということです。つまり、過去問を使うことで、どれくらいの難易度の問題が出るのか、その難易度の問題においてどれくらいの点数が取れればいいのかということがわかります。
ほかにも、この大学のテストでは教科書の知識がそのまま出るのか、あるいは教科書の知識を応用した問題が出るのかということも分析することができます。このように出題される問題を知ることで、どのように教科書を読んでいけばよいのかがわかります。
一方、教科書には全く載っていないところが出題されている場合は、教科書に載っている知識をおさえるだけではなくて、「なぜこのような現象が起こるのか」などというその背景まで理解をする必要があります。
過去問は、日頃どのように勉強を進めていくかという学習指針のようなものを示してくれるので、僕は過去問になるべく早く取り掛かった方がいいと考えています。
――過去問の効果的な取り組み方はありますか?
参考書を見ながら過去問を解くことが合理的ですね。まだあまり勉強ができていないうちに過去問を解いても、「できない」で終わってしまうことがあるでしょう。
参考書を見ながら解いてみると、それでも解けない問題が出てくると思います。つまり、そのような問題は参考書に載っている知識をただなぞるだけでは解けない、知識を応用する力が求められているということです。
一方、参考書を見ればどんどん解ける問題もあります。このような問題は、参考書をしっかり読み込むということを実践すれば、合格に近づけるということです。
参考書を見ながら過去問を解くことで、自分が合格するために必要なことが見えてきます。必要なことが見えた状態で、参考書を勉強するとモチベーションも上がり、さらに合格に近づけるのではないでしょうか。
――受験勉強のとき、河野さんは空き時間をどのように活用していましたか?
僕はすべての空き時間を英単語に費やしていました。例えば、お風呂に入る前に英単語を3つ覚えます。シャワーの時間は何もしないので、その時間を英単語の反芻に使ったりしていました。
また、家を出る前に英単語を5つぐらい覚えて、自転車を漕ぎながらその英単語を反芻しながら覚えるということもしていました。ゲームのロード時間も空き時間だと思って、同じように英単語を覚える、反芻するということをしていましたね。
1日の中で、このような空き時間というのは無数にあります。1日にしたらたいした時間ではないかもしれませんが、1カ月、3カ月…と集めていくと、英単語2,000語はすぐに終わらせることができます。
――勉強を頑張ろうと思っていても、上手くモチベーションを保てないという人もいると思います。河野さんの勉強に対する意欲やモチベーションはどこからきているのでしょうか?
色々ありますが、知らないことを知ることができるので、僕にとって勉強は謎解きパズルのようなもので単純に楽しいです。例えば、数学の問題は自分が持っている公式や頭の使い方を組み合わせて、難しい問題を要素分解して解いていきます。解けるとすっきりして、謎解きパズルと一緒なんです。
受験勉強は、自分がやってきたことを全国対戦型で競うようなもので、規模の大きいゲームのオンライン対戦のようだと思っています。この順位をどこまで上げられるのかという競争も含めて、ゲーム性があるように感じます。やはり楽しいと感じていましたね。
――受験勉強をしていた当時の模擬試験の判定はいかがだったのでしょうか?
東大理三の判定偏差値プラス10ぐらいだったと思います。